馬車警察
「ダッダッダッダッダッ!」
ヤリオトコはどんどん近づいてきて、残り50メートルを切ったように見える。
「ほえ~すごいスピードとスタミナですね。彼のスタミナは一体どうなっているのですかねぇ」
「そろそろワイの槍さばきをお披露目するときがくるで!」
「ヒィィィ!!モウムリです!もっと早く走りなさい!!」
「え~結局スピードだすんじゃん!!!」
運転手がヤリオトコへの恐怖により制限速度を超えて馬車を操作したことにより、突然スピードが上がりだし、ヤリオトコが離れていったように見える。つまり、運転手は馬車交通法を違反してしまったのであった。しかし、魔王軍に追いかけられているこの状況で、一体だれが彼を責められるというのだろうか。サオリ一行も同じことを考えたものの、馬車の右側から、大きなトカゲに乗ったテンガロンハットの男が向かってきた。つまり、彼を責める男はいたのだった。
「ピッピー!(ホイッスルを吹く音)馬車警察でーす。そこの4名を乗せた運転手さん。ただちに止まりなさい!あなたはスピード違反をしています!」
「ヒィッ!スミマセン!」
馬車は緩やかに速度を緩めると同時に停止した。ヤリオトコは追いつき、両手に持った槍を構えて一突きし、それをドンズが迎撃した。両者の実力は拮抗しているかのように見えた。その様子を完全に無視して、馬車警察は運転手に違反の説明をしだした。
「あなたねえ!この道路の制限速度は60キロですよ!それがねえ、80キロを超えて走っているじゃありませんか!これは、とんでもないことですよ!自分のやったことを、わかっているんですか!」
「そんなこと言われましても、魔王軍の手先に追われているのですよ、まず、彼をなんとかしてくださいよ!」
「私は役人なのですよ。私の仕事は、馬車がルール通りに走っているかを監視することなのです。デッカイド国の法律に基づいて動いているのです!ここは、法治国家なのです。馬車のスピードを取り締まる法律はあっても、魔王軍についてのものは無いのです!なのであの魔物について私が感知するところではありません。私は真面目に仕事をしているだけなんだ!なにか文句があるか!」
サオリは、とんでもなく融通の効かない監視員だが、もしかしたら手取り収入が少ないのかもしれないと思った。
「ヒ、ヒィィ。。。申し訳ございません。。」
「シュッシュッシュッ!」
「シュッシュッシュッ!ズバ!!!」
一方で、ドンズとヤリオトコが突き合っている中、ドンズの一撃がヤリオトコを襲い、ヤリオトコの胸に槍が突き刺さり、槍先を抜いたと同時にそのまま倒れ込んだ。
「ハァハァハァ。ワイはなぁ。一戦交える場合は相手の手をみるんやがな。立派な戦士の手をしとるで。いままで何人もの勇者候補を葬りさってきた手やわ!!!」
「と、いいますと?」
「彼はまた立ち上がるで」
「首を切られたのに復活するモンスターがこれでやられるとは思えないわね」
その刹那、パッと消えたかと思うと、空間が歪み出し、亜空間とでも言えば良いのか、突如出現した穴の中からヤリオトコが登場した。タケアキはなんとなく察した。
「これ、ヤリオトコを召喚する黒幕がいません?」




