出港
数日後、4名はサイドポート港に到着し、船への搭乗手続きを済ませた。トミゾウは安堵の表情を浮かべていた。
「ふむ。デッカイドまでは問題なくいけそうじゃのう」
この大型汽船には何組か、サオリと同じく魔王を討伐しに向かいますといいたげなグループが見受けられた。マスカラフトからデッカイドに向かうには、魔王討伐検定の3級試験に合格するか(筆記試験と面接がある)、もしくはデッカイド、そしてアキパラパーが存在するシューホンのどこかに住民票がなければ移動できなかった。ただしグループで行く場合、魔王討伐検定3級資格は誰か一人が持っていればよい。タケアキは魔王討伐検定の2級資格を有していたため、4名の条件はクリアしていた。そして船にはかなりの乗客が載っていた。こうしてデッカイドのワッキャナイ・ゼットいきの客船「カラフトマス号」は出港したようだった。船が揺れだした。タケアキが子どものようにワクワクした顔つきではしゃいでいた。
「オッホー、ゆれてますねぇ。動き出したようです。巨大生物に船がぶつからなければいいですがねぇ。もっとも、そうなれば是非仲間にしたいですがね」
「オッホーってなに語?アキパラパー語?ウケるんだけど」
リリィちゃんがタケアキの変な喋りに反応した刹那、船が大きく揺れた。
「ドガアン!!!!!」
「なにがあったのよこれ。地震?」
「ふむ。どうやら巨大海洋生物とぶつかってしまったようじゃのう」
「いやまだ出港したばかりじゃない。この海はどうなっているの?」
まるでタケアキの期待に応えるかのように、デッカイドのワッキャナイ・ゼット港行きの客船は揺れた後、一時停止した。
「えー、乗客の皆さんにご案内がございます。たったいま、巨大海洋生物との衝突がございましたため、マスカラフト号は一時停止いたします。また、お客様の中に勇者討伐組がいらっしゃいましたら、巨大海洋生物の除去にご協力いただけますと幸いです。報酬として船代を払戻させていただきます。運転再開までいましばらくお待ちください。この度はご迷惑をおかけし大変申し訳ございません。運転再開まで、いましばらくお待ち下さい」
「グヘヘ。俺達がいこうぜ、なぁ兄弟」
「おうよ。船代を浮かしたいしなぁ」
薄汚い声をした図太い声の二人が立ち上がり、看板へ向かっていった。一人は長身で、もう一人はずんぐりむっくりとしていた。サオリは3名にきいてみた。
「デッキに向かいったわ。あの2人で倒せるのかしら。でも強そうね」
「あ~あの人達しってるよ~。ジャムゥと、ドンズの戦士コンビ~。この前お金くれたの~」
サオリはビックリして聞き返してしまった。
「え?!リリィちゃん、あのオジサンたちからお金もらったの?変なことされなかった?」
「えー、なにもされてないよー。ご飯食べてお小遣いくれたのー。オークボパークでたまに見かけるよ。サオリちゃんも立ってたらもらえるかもよー」
サオリはあの2人になんとなく嫌悪感をいただき、巨大海洋生物に食べられてしまうことを望んだ。
「おそらく無理じゃの。あの2人では」
「そうですね。オーラから察するにボクのオヂキメラと同等か、それ以上の強さですよ。おそらくこのあたりの海の主キングオクトパスかと。エンカウント率は256分の1と言われているので、運が悪いのか、いいのか」
なぞとトミゾウとタケアキが話している途中で、叫び声が聞こえてきた。
「助けてくれー!!!」
「ダメそうじゃのう。いくぞい。巨大海洋生物対策クルーもいるはずなんじゃがのう」
こうして我々4名は、カラフトマス号の先端デッキへ向かった。