デカネズミ
こうしてトミゾウ、タケアキ、サオリの3名はクジュシン市街地の宿屋で一晩を明かすこととなった。トミゾウとタケアキは同じ部屋で、サオリは一人だった。
部屋に来て、ようやくホッと一息つき鏡をみるとサオリはたまげてしまった。
「え、誰この顔の整った若い女は。まるで、六本木で水商売でもやってそうじゃない」
そう、本来は子ども部屋おばさんとして過ごしていたサオリだったが、スカイワールドに転生してからはどういうわけか若い美女に変貌をとげていたのだった。オークボパーク周辺で下心まるだしの男どもから声をかけられたのも、これで合点がいった。
鏡でしばし自分の美貌に酔っている最中、木製のドアからノックする音が聞こえてきた。
「サオリさん、この街にデカネズミが出たみたいです。非常に危険な状態です!退治にいきますよ」
「デ、カネズミ、、、?わかりました!いきましょう!でも、ちょっとまって」
2分ばかし、鏡をみてサオリは自分の美貌にウットリとしていた。身長は168センチ程度、ハーフのような顔立ちであり、黒髪だった。ねぇ、いくらなんでも可愛すぎるでしょう。
少し遅れて宿の外に出るとすでにトミゾウが待機しており、タケアキとサオリの3名が揃った格好になる。
「サオてゃん、ようやく来たか。これで揃ったようじゃのう。このクジュシンには、夜に潜む魔物、デカネズミがいるのじゃよ。体長は3メートルにもなり、なにより、周囲の飲食店の食材を食い尽くしてしまう上、スタッフも丸呑みにしてしまうのじゃ。デッカイドにいくウォーミングアップ代わりに、退治するぞい!」
「デカネズミかぁ。仲間にしたら戦力になるのかなぁ。でも物理攻撃しかできなそうだし、序盤は活躍の場があるけれでも、終盤では出るまくのないパターンのような気がするのだよなぁ」
タケアキがブツブツと呟いていた。
「でも、どこにいるかわからないわ。どうやってみつけるのよ」
サオリは疑問をポロッと口にだした。
「それはボクにまかせてくださいよ、サオリさん、いまから50匹ほどワームを撒きますので。反応があったところにデカネズミがいるはずですよ。あ、これはボクのモンスターではないですからね。呪文で生成した疑似モンスターです。攻撃呪文は使えないのですが、サポート系はできるのですよ、ボク。もっとも、回復系や、敵の防御力下げたり、味方の攻撃力を上げたりはできませんがねぇ」
独り言かと思いきや、サオリに話しかけているようだった。
「タケアキくんや、それでは、ワームを巻いてくれ」
タケアキが目を閉じる。サオリが弱いオーラのようなものを感じとると、周囲に半透明の、イモムシのようなクリーチャーがポコポコ湧いてきた。
「では、それぞれ、散りなさい!デカネズミを発見するのです!」
タケアキが叫ぶとワームは散り散りに、様々な方向へ這って進んでいった。人間があるくのと同じくらいのスピードだった。
「あのぅ、こんなスピードでは時間がかかるのでは?」
「チギャァ!」
サオリが疑問を投げかけた刹那、宿屋から北側へ直進し50メートル程のところにある例のラーミョン屋付近を這っていたワームが赤く光ると、音を立てて消えてしまった。
すると、大きなネズミがいて、明らかにデカネズミだった。
「え、見つかるの、はや」
「なんなんこれ~、ボクの呪文、意味ないやないですか~。子どものお絵かきみたいなもんよ~~、まるでアホンダラァッ!!!じゃないですか~恥ずかしくて生きていかれへんで~~」
タケアキが中途半端な関西弁を喋りめたが、2人とも無視をしてデカネズミを注視していた。