表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/36

ドアの向こう

 「あのぅ。トミ爺、これはどういう、、、」


 「お主はお世話係なので対象外じゃった。ワシの説明不足じゃよ」


 「???」


 「つまりのう、戦う必要はないし、後方支援も不要なのじゃ。戦闘シーン以外で、ワシの身の回りのお世話をしてくれれば、それでよいのじゃよ」


 「もしかして、トミ爺が単体で魔王を倒しに行くの?私がお世話をして」


 「それだと厳しいかのう。やはり、仲間は必要じゃのう。もっとも、サシならワシ、魔王より強いんじゃがのう。いや、全盛期は強かったというべきか」


 「え、どういうことなの?それは」


 いや、修業したり魔物を倒してレベルアップするのでなく、もう勝てるんかい。本当に大丈夫なのかこの爺さんは、ただのホラ吹きじゃあないのかなぞと、サオリは疑いはじめてしまった。それかあるいは、実はこの世界の魔王は対して強くないのではないか、という予感もしてきた。


 「まぁのちのち分かるて。サオリは棒立ちしていれば良いから、中にはいるぞい。条件は、男女ペアでオークボパーク内に入り、オヂキメラじゃからのう。これで討伐ができれば、クジュシンから、デカイドッへの通行許可証が発行されるぞい」


 「デカイドッ?というかいまさらだけど、勇者候補に会えれば今回はよかったのだけど、、、」


 「トミゾウさん、サオリさん、それでは鍵をあけますので、外に出てくださいね」


 ぞろぞろと3人で外に出て、直ぐ目の前の扉ちかくにたつと、タケアキは憂鬱そうな顔をして扉をみつめていた。2~3秒すると奇妙な唸り声を上げた。


 「ふううぅぅぅぅん。やるか。お二人とも、準備は良いですか。扉が空いたら3秒以内に中に入るのですよ」


 「問題ないぞい」


 「だ、大丈夫よ」


 サオリには元来じぶんの意思があまりなく、その場の雰囲気に流される性格であり、今回もその性格が遺憾なく発揮された。今回は勇者候補に出会うだけで問題なかったのだが、冒険へのパスポートを手にいれるところまでストーリーが進んでしまうらしい。


 突然、この冴えない公園管理の顔がキリッと仕出して禍々しいオーラを感じ取ることがサオリにもできた。


 「ファアアアアァ!!!!ドアアケ!」


 するとすかさず、公園内の扉の鍵穴に鍵をさし、時計回りに回し、そのまま手前に引いた。魔法の意味があったのか疑問に思いながら、タケアキが叫んだ。


 「はやくはいってください!!!」


 トミゾウがサオリの左腕を掴み、そのまま猛ダッシュで中へ入った。2人はオークボパーク内に入園することができたということになる。


 バタン、という音とともに、ドアは閉められた。


 サオリの眼前に広がっていたのは、トミゾウの白髪頭だけではなかった。そこは草原のようなフィールドであり、100メートルほど離れた場所には体長5メートル程度にみえる、異形のクリーチャーが佇んでいた。胴体はヒグマのようだった。そこから頭が3つに分岐しており、真ん中はシャチ、右側はニジマス、左側はブラックバスといった風貌である。おまけに、コウモリのような羽がついていた。おそらくはオヂキメラだった。どうにもそのクリーチャーは、右向きに草をもしゃもしゃと食べているようだった。


 「(あれ、これに勝てるの?無理じゃない?ふざけているのは、名前だけじゃないの)」


 トミゾウがサオリの方を向き、自信に満ちた、安心感を与える笑顔で語りかけた。


 「サオてゃん、これは勝てなそうじゃ。一旦、公園の外に出よう」


 まじか。魔王も倒せるというのはやはりホラを吹いていたのか。このジジイは。最悪だ。大体、サオてゃんとは、なんなのだ、などとサオリは思わざるを得なかった。


 「え、でも、左の頭がこちらに気づいたようだわ」


 「グオオオォォォォン!!!!!」


 その咆哮により、公園全体に風圧がかかり、草は揺れた。タケアキはこんなのをかわいがっているのだなんて、良い趣味をしてはりますなぁ、なぞとサオリは考えながら。二度目のお寺いきを覚悟した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ