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こども部屋おばさん死す

 アッコは42歳で死亡した。死因は鯉のぼりの中で窒息死したことだった。なにをいっているのかちょっと意味がわからないかもしれないが、事の顛末はこうである。


 彼女の唯一の楽しみは、甥、つまり結婚した5歳年下、妹ユイの息子であり、2人兄弟の長男である未来みらいくん3歳が、自宅の居間で積み木のブロックを組み立てているところを眺めることだった。


 それは平日も休日も関係なく日中のことであり、端的に言えばアッコはニートや、あるいはこども部屋おばさんと呼べそうだった。


 そんなある日のことだった。アッコの実家では、庭で鯉のぼりを吊るすのが毎年恒例であるが、ちょうどその日も、未来くんがアッコの住む実家にあそびにきていた訳だが、一足先にアッコは、木箱に畳まれたシルク製の鯉を未来くんにお披露目するサービスを提供しようという気持ちでいた。


 ニートだからといって、社会に対して何も貢献したくないということでもなく、少なくとも未来くんに対しては、彼を喜ばして、君は社会に受け入れられているのだという気持ちを幼少時代から持たさせてあげたいという思いがあったというわけである。


 すると未来くんは、鯉のぼりの中にもぐりだし、楽しそうに口から尻尾へ出たり、尻尾から口へ入るのを繰り返しつつ、アッコにこう言い放った。


「アッコも入りなよ!これ!面白いよ!!!」


 まんざらでもない雰囲気で、アッコも鯉のぼりの口から中に潜ろうと試みたところ、おしりのところで詰まってしまい、出ることができなくなってしまった。体をひねるなどしていると、途中で酸素濃度が下がったせいか、呼吸が苦しくなり、結局のところ享年42歳でこの世を去ってしまった。


「・・・?どこなのここ」


 死んだ筈のアッコが次に目を冷ますと、そこは、草原の中だった。まるで、某パソコン上で起動するOSにて表示されていた、初期のデスクトップ画面のようだった。


 その景色を観ながら、アッコは茫然自失としてしまった。

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