隼人のシステム:強奪プロセス開始
――「接触を確認。対象物質構成を解析中……高度な防衛システムを検知」――
――「対象装備検出: DSU(Depth Strike Unit)……モジュールの詳細確認開始」――
――「構成要素のエネルギー循環構造を解析中……進捗: 25%」――
――「対象が防衛プロトコルを起動。自己防衛アルゴリズムの抑制を試行……抑制成功」――
――「DSU主要機能確認中……地形適応センサー、近接戦闘補助システム、エネルギー効率化モジュールを検出」――
――「進捗: 50%……防衛プログラムのデータ遮断試行を感知」――
――「データブリッジを確立……対象防衛層に侵入成功」――
――「新規装備の統合準備進行中……モジュール構成の最適化を開始」――
――「DSU統合進捗: 75%……システム同期が進行中」――
――「自己修復プロトコルの試行を感知……抑制完了」――
――「統合進捗: 100%。DSUの完全奪取が完了しました」――
[通知: 新規装備が統合されました]
・DSU(Depth Strike Unit)
地形適応センサー
高出力動力基盤
近接戦闘補助アルゴリズム
――「システム最適化完了……新装備の戦闘モードに対応」――
背中から腕にかけて光のラインが走り、DSUの装備が隼人の体に自動で装着されていく。
軽やかな金属の響きとともに、耐久性と機動性を兼ね備えたアーマーパーツが彼の四肢を覆い、脚部には地形に応じた機動支援のスラスターが形成された。
右腕には強化ブレードが顕現し、左腕にはDSU特有の高精度センサーが組み込まれていく。
装備が完成するたび、隼人の動きが一段と軽快に、そして力強くなるのが感じ取れた。
隼人のシステムがDSUを完全に取り込んだ瞬間、全身に新たな力がみなぎる感覚が走る。
一方、アストリスの体からは淡い光が散るように装備が剥がれていく。
彼女の背中を覆っていたスラスターが消失し、脚部からアーマーの装備が崩壊するように外れていく。
その場に膝をつきかけながら、アストリスは手を伸ばして空を掴もうとするが、奪われた装備は完全に隼人のものとなったことを悟らせるだけだった。
胸に残る致命的な傷も、DSUの修復機能を失った今、露骨に痛みを訴え始めたのだろう。
「……っ、なるほど、こういうこと……」
アストリスは震える声でつぶやき、苦悶の表情を浮かべ、低く呟きながら胸の傷を押さえる。
その傷は塞がることなく、わずかに蒸気を上げながら彼女の身体を蝕んでいた。
フロリアが迅速に間合いを詰め、隼人が新たに装備したDSUを駆使して後方から追撃する。
二人の猛攻をアストリスは避けることも防ぐこともできない。
ブレードの閃光とライフルの銃声が交錯し、アストリスの姿勢が徐々に崩れていく。
「もう無理ね……」
アストリスは口元にかすかな笑みを浮かべた。
「まさかここまで追い詰められるなんて……認めるわ、あなたたちは強い」
彼女は片手を胸に、もう片手を空中に掲げる。
そして、時空を切り裂くような淡い光が周囲に満ちた。
「転送シークエンス開始……」
「待て!」
フロリアが力強い声で叫びながら突進する。
アストリスに向けて剣を振り下ろすが、転送光が彼女の身体を包み込み、その剣は虚空を切っただけだった。
「また会いましょう。次はもっと楽しませてね……」
アストリスの言葉が転送光の中に溶け、彼女の姿は完全に消え去った。
光が完全に消えたその瞬間、戦場に静寂が訪れる。
緊張の糸が切れたように、ノア、リーシャ、マリアはその場に崩れ落ちた。
息を切らしながら、マリアが剣を地面に突き立て呟く。
「やっと……終わった……」
フロリアは拳を強く握りしめ、悔しそうに前を睨む。
「逃がしました……」
その声にはわずかに怒りと無念が滲んでいた。
隼人はDSUを解除し、その場に立ったまま深く息を吐き出す。
「何とか……なったな……」
解除したDSUはバックパックと同じく体に吸収されたかのように見えなくなった。
背中を伝う汗が冷たい風にさらされ、戦いの激しさを改めて実感させた。
ノアが顔を上げ、隼人に向かってかすかに笑みを浮かべる。
「ハヤト、フロリアさん……本当にありがとう……」
「お礼を言うのは後にしよう。まずは、これ以上の被害がないか確認する必要がある」
隼人は疲れた声ながらも冷静に言った。
崩壊した家屋、焦げた大地、散乱した瓦礫の中に立つ彼らの姿。
アストリスが去ったとはいえ、これが本当に終わりなのかはわからない。
それでも、今はわずかな安堵がその場に漂っていた。
フロリアは一歩前に出て、全員に向けて言葉を発する。
「ノア様、皆様……生きてこの瞬間を迎えられたことに感謝します。そして、この戦いを共に乗り越えたことを……」
その言葉に、全員が互いに視線を交わし、わずかに笑みを見せる。
彼らの戦いは終わりを迎えたが、その影には新たな脅威が潜んでいることを、誰もが心の片隅で感じていた。
戦場に戻ってきた静寂の中、遠くから力強い声が響いてきた。
「ハヤト殿、皆さん!無事ですか!」
ライナーの声だった。
彼の背後には、冒険者たちと何人かの衛兵が従い、こちらに向かって歩いてくる。
どうやら救助した村人たちを王都から来た衛兵に引き渡し、増援として戻ってきたらしい。
隼人たちの姿を確認すると、ライナーたちは小走りで駆け寄ってきた。
しかし、隼人たちのそばにいる重武装の女性──フロリアを目にした途端、全員が一斉に戦闘態勢に入った。
「何者だ!」
ライナーは鋭い声で叫び、剣を抜いて構える。
その緊迫した空気に、冒険者たちもすぐさま武器を構えた。
「ち、違います!違います!この人は味方なんです!」
ノアが慌ててフロリアの前に立ち、両手を振りながら必死に弁明する。
フロリアはノアの行動に少し驚いた様子を見せたが、すぐに冷静さを取り戻し、武装を解除して一礼した。
装甲が静かに光を放ちながら体から外れ、通常の姿へ戻っていく。
「ご心配をおかけして申し訳ありません。私はフロリア。ノア様の従者でございます。少々特殊な手段で駆けつけましたが、彼らを支援するために参りました」
丁寧な口調で、ライナーに向かって名乗るフロリア。
ノアの説明もあり、その落ち着いた態度にライナーも疑念を緩めた。
「そうでしたか。失礼しました」
ライナーは剣を収め、軽く頭を下げる。
それを見て、冒険者たちも武装を解除した。
ライナーの目は次にマリアを捉えた。
「マリア、状況を説明してくれ。」
マリアは疲労の色を隠せない表情で頷き、ライナーに詳細を報告した。
「アストリス、と名乗る謎の女性と戦闘になり、最終的には退けましたが、倒すには至りませんでした。彼女は非常に強力で、私の武器を真似されたり、何度もこちらの攻撃を受け流しました。ただ……このフロリアという方が、突然現れて助けてくださったおかげで、大きな被害を防げました」
ライナーはフロリアに感謝の視線を送りながら頷いたが、疲労で消耗しきった隼人たちを見て表情を曇らせた。
「なるほど……。皆さん、ここまでよく戦ってくださいました。状況は我々が引き継ぎます。今は休息を取られてはどうでしょうか」
隼人はライナーの提案に一瞬迷ったが、ノアとリーシャ、そしてマリアの状態を見て頷いた。
「助かる。頼む」
こうして隼人たちは、戦場を一旦離れ、必要な休息を取ることになった。
彼らがその場を去ると、ライナーたちは周囲を見渡し、次の対応に備えて警戒を強めた。




