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救援へのフロリアの決意と転送装置

 フロリアは目を覚まし、指先を動かしながら身体の状態を確認する。

 傷は完全に回復しており、動きに支障はない。彼女は小さく息を吐きながら身支度を整え、通信を開いた。


「ルクシア、今どこにいるの?」

「格納庫にて負傷したフロリアと共に回収した転送装置の解析を進めています。状況をご報告しますので、こちらにお越しください」


 ルクシアの落ち着いた声が返ってきた。

 フロリアは了承し、医療室を後にして格納庫へ向かった。


 格納庫に到着したフロリアの目に入ったのは、転送装置と無数のモニター、ケーブルが繋がれた忙しない光景だった。

 ルクシアが装置の制御パネルに向かい、画面を操作している。


「フロリア、ご無事で何よりです」


 ルクシアは一瞬振り返り、再び画面に視線を戻した。


「現在、回収した転送装置の内部構造を解析中です」

「何かわかった?」


 フロリアは転送装置を注意深く観察しながら尋ねた。


「まだ全貌は解明できておりませんが、非常に高度な技術で構築されていることは確かです。この装置が過去に何らかの転送を行った痕跡も確認されました。ただし、それがいつ、どこに送られたかはまだ不明です」


 フロリアは眉をひそめ、転送装置を見つめた。


「何を運んできたのかしら……」


 突然、転送装置が低く唸りを上げ、周囲にわずかな振動が走る。

 装置の中央が青白い光を放ち始め、エネルギーの波動が強まっていった。


「何……?」


 フロリアが装置を睨む。


「フロリア、これは……!」


 ルクシアが驚きの声を上げる。

 次の瞬間、転送装置から閃光が放たれた。

 装置の中央部が一瞬光り輝き、何かが転送されていったような感覚が格納庫内に残る。


「今のは……まさか!」


 フロリアが駆け寄ると、ルクシアはすでに解析作業を開始していた。


「転送が実行された模様です!」


 ルクシアが画面を指差す。


「解析データによれば、転送先の座標は……王都付近です。そして、その座標付近からノア様のペンダントの信号も確認されました!」


 フロリアの表情が険しくなる。


「もしかすると、ノア様が危険な状況にある可能性が高いわね」

「はい。例のアストリスが、戦闘に使用する何かを転送した可能性があります」


 ルクシアの声には焦りが滲んでいた。


「ノア様を救援に向かうわ」


 フロリアは即断した。


「しかし、フロリア。通常の移動手段では、王都付近に到達するまで数時間を要します。それでは……」


 ルクシアが言いかけたところで、フロリアの視線が転送装置に向けられる。


「これを使えば、すぐに到達できるわよね」


 フロリアが装置の中央に手を置いた。

 ルクシアの表情が曇る。


「まさか……!まだ解析が不完全な装置です!正常に動作する保証はありません!それどころか、転送途中で失敗する可能性すらあります!」

「それでも、ノア様を見捨てるわけにはいかない」


 フロリアの目には決意が宿っていた。

 フロリアの声は迷いのないもので、ルクシアもその決意を汲み取った。


「しかし、フロリア。この装置はまだ解析途中であり、転送が可能かどうかも……」

 

 ルクシアが懸念を述べるが、フロリアは即座に遮る。


「それでも行くわ。ノア様が危険な状況になっている可能性があるのに、見捨てるなんてできない」


 ルクシアは一瞬目を伏せたが、再び端末に向き直る。


「……わかりました。私の全力でサポートします」

「ありがとう……」 

 

 フロリアは敬意を込めて言葉を送った。


「転送装置の操作方法が不明な状態での使用にはリスクが伴いますが、先程の転送により起動コードや制御シーケンスの一部も取得できている可能性があります」


 フロリアが出発の準備を進める中、ルクシアが冷静な口調で状況を報告した。


「しかし、それには少し時間が必要です。解析の間に、フロリアは武器庫で装備を整えていただくのが最善かと」


 フロリアは一瞬考える素振りを見せた後、短く頷いた。

 

「分かりました。その間にできるだけ解析を進めておいてください」

「了解しました。装備が整い次第、転送準備に戻られるようお願いします」

 

 ルクシアが端末の操作に集中する中、フロリアは軽やかな足取りで格納庫を後にした。

 

 武器庫の扉が静かに開くと、内部には数多くの武器と装備が整然と並べられていた。

 フロリアはその中で一際目を引くラックに足を止める。


「クイックストライクユニット……これで行きましょう。」


 ラックには「Quick Strike Unit / QSU」と刻まれた銘板が付いており、軽量化された戦闘用アーマーと機敏な動きを可能にする武装が揃っていた。

 フロリアが装備を選択すると、ラックの光が淡く点灯し、アーマーと武器が自動的に動き出した。


 ラックから取り外された装備が青白い光を纏いながら、フロリアの体に一つずつ装着されていく。

 軽量ながら高強度のアーマーが肩や胸部を覆い、腰のホルスターには双剣「リフレクターブレード」が収められる。

 背部には小型推進システム「ブースターパック」が取り付けられ、全体の装備が整った。


 フロリアはホルスターから片方のリフレクターブレードを取り出し、軽く振るった。

 剣身が淡く光を放ち、空気を切る鋭い音が響く。


「完璧ね。これならどんな相手でも対処できる」


 彼女のHUDヘッドアップディスプレイに装備状況が表示される

 ・リフレクターブレード:エネルギー充填完了

 ・エネルギーライフル:出力安定

 ・ブースターパック:推進力正常

 

「準備完了です」

 

 フロリアは冷静な声で呟き、武器庫を後にした。


 フロリアが装備を整え転送装置の前に戻ると、ルクシアが解析の進捗状況を報告する。

 

「フロリア朗報です。解析の結果、先程の転送で得られたデータにより、起動コードが整備されました。転送装置の安定性が若干向上致します」

「それは朗報ね」

 

 フロリアは満足げに微笑む。


「ですが、それでも未知の要素が残りますので、注意が必要です」

 

 ルクシアは念を押すように付け加えた。


「もちろん覚悟はできています」

 

 フロリアは毅然とした声で答え、転送装置の前に立つ。


「では、転送シークエンスを開始します。ご武運をお祈りします」

 

 ルクシアの操作によって装置が起動し、静かに動き出した。

 スクリーンには、転送装置のエネルギー充填率や転送先の座標、転送の安定性が次々と表示される。


「転送座標の入力を開始……」

 

 ルクシアがスクリーンに表示される座標データを素早く確認し、入力を完了する。


「座標確認完了:王都北部の近郊。ノア様のペンダント信号の座標へ」


 画面に転送座標が大きく表示され、ルクシアがフロリアを振り返る。


「座標入力完了しました」

「エネルギー供給を開始……エネルギー充填率95%、転送に必要な閾値を突破」

 

 転送装置が低く唸りを上げ、中央部のコアが眩い光を放ち始める。


「エネルギー安定化中……フロリア、装置の中央にお立ちください」

 

 ルクシアの指示に従い、フロリアは装置の中央部へと足を進める。


「フロリアをロックします」

 

 端末にフロリアの姿がモニターされ、座標が一致するかの確認が行われる。


「転送ロック完了。目標座標への軌道安定化を確認」

 

 ルクシアは最後のデータを確認し、少し緊張した面持ちでフロリアを見た。


「これが失敗すれば、最悪の場合、時空の狭間に取り残される可能性があります。それでも行かれるのですね?」


 フロリアは微笑み、端末のルクシアに向けて小さく手を振った。


「大丈夫、ルクシア。私を信じて」

「わかりました。転送シークエンス、最終段階に移行。エネルギー供給安定、転送コリドー展開を開始……」

 

 転送装置の中央がさらに輝きを増し、青白い光がフロリアを包み込むように広がる。


「転送開始まで、10秒……」

 

 ルクシアのカウントダウンが始まり、光が装置全体を覆い尽くす。


「……3、2、1……転送開始!」

 

 閃光と共に、フロリアの姿が転送装置の中から消え去る。

 装置の光が徐々に弱まり、再び静寂が格納庫内に訪れた。

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