仲間の絆と逆襲の光
隼人たちの連携が、アストリスを徐々に追い詰めていた。
リーシャは盾を構え、アストリスの攻撃を真正面から受け止める役割を担っていた。
盾が接触するたび、魔力が炎となって周囲に散り、アストリスの動きをわずかに鈍らせる。
「これ以上は通さないわよ!」
リーシャが声を張り上げ、アストリスの剣を受け止めながら踏み込んだ。
一方、隼人はバックパックの推進力を生かし、素早い横移動を繰り返してブレードとライフルでアストリスを攻撃していた。
ブレードは鋭い軌道を描き、アストリスの守りを削り、ライフルの弾幕がさらにその防御の隙間を狙った。
「くらえ!」
隼人が声を上げ、弾丸を連射する。
アストリスは剣を振り抜き、弾丸の軌道を逸らしながらも、徐々にその動きが制限されていく。
ノアは戦場全体を見渡しながら、適切なタイミングで魔法の矢を放っていた。
アストリスが隼人に攻撃を集中するタイミングを狙い、背後から魔法の矢を正確に射出する。
「ナイスタイミング!」
ノアが自分を鼓舞するように声を上げた。
矢がアストリスの背中をかすめ、わずかに動きを止めさせる。
「ナノも応援してるよ!がんばれ!」
ナノちゃんが後ろで両手を振りながら声援を送る。
その後ろにはマリアが半ばしゃがみ込むように隠れ、頭だけを出して状況をうかがっていた。
「いやいや、なんでこんな危険なところに来ちゃったのよ……」
マリアはぶつぶつ呟きつつ、ナノちゃんの護衛に徹している。
隼人たちの猛攻により、アストリスは徐々に動きを封じられていった。
明らかに追い詰められた状況だが、彼女の口元には不気味な笑みが浮かんでいる。
「やるじゃない。でも……これじゃ物足りないわ!」
アストリスが叫ぶ。
その瞬間、アストリスの剣が黒く輝き始めた。
その攻撃はさらに重さと速さを増し、隼人たちを一気に押し返し始めた。
「うわっ、何だこの力……!」
隼人は剣をブレードで受け止めながら、推進力を使って無理やり後退する。
リーシャも盾を構えて耐えるが、魔力障壁を越えて直接衝撃を受け始め、焦りの声を上げる。
「これ、やばくない!?」
ノアも魔法の矢を放ち続けるが、アストリスの動きが激しくなり、なかなか当てることができない。
「もっともっと!私を楽しませてちょうだい!」
隼人たちが猛攻を繰り出すアストリスに押され始める中、ついに限界が訪れた。
隼人の攻撃が空を切り、わずかな隙が生じた瞬間、アストリスの目が鋭く光った。
「終わりよ!」
アストリスが勢いよく剣を振り抜き、隼人へ一撃を放つ。
「――っ!」
隼人が目を見開いたその瞬間、激しい金属音が響き渡った。
アストリスの剣を受け止めたのは、マリアだった。
「冒険者だけに戦わせて、衛兵の名折れだ!」
マリアが叫びながら、自分の剣でアストリスの攻撃を防ぎきる。
その剣は小刻みに震えているが、彼女の足はしっかりと地面に踏み込んでいた。
アストリスは一瞬何が起きたのか分からない様子で、わずかに動きを止める。
「……誰?」
その隙をついて、マリアは剣を強く握りしめた。
彼女の剣に刻まれた魔法陣が赤く光を放ち始める。
「猛き焔よ、怒りの咆哮と共に燃え広がれ!フレイムバースト!」
マリアが力強く詠唱すると、剣から膨大な炎の波動が放たれた。
熱気が周囲を包み込み、爆発的な炎の奔流が一瞬で戦場を染め上げた。
衝撃波が地面を揺るがし、アストリスの周囲の空間さえ歪むように見えた。
「これは……!」
アストリスは瞬時に判断し、その場を跳躍してなんとか回避する。
しかし、完全には逃れきれず、炎がかすめた部分にわずかなダメージが刻まれた。
「……やるじゃない」
アストリスが嬉しそうに笑いながら、自分の肩を軽く払う。
「ふうっ……やれる!」
マリアは息を切らしながらも剣を構え直す。
その光景を見た隼人は、思わず微笑む。
「いいタイミングだ、助かったよ」
アストリスが立て直す間もなく、マリアは剣を地面に突き刺した。
剣から冷気が広がり、地面に霜が一気に走る。
「冷たき爪痕よ、大地に刻み込み凍結せよ!アイスストリーク!」
詠唱と共に剣を突き刺した地点から、蛇のように冷気が地面を這い進み、アストリスの足元を狙う。
冷気が近づいた瞬間、地面から鋭利な氷柱が突き出し、アストリスに迫った。
「面白い技ね!」
アストリスは笑いながらも、その場を軽やかに跳躍して避けた。
しかし、避けた先にはリーシャが盾を構えて待ち構えていた。
アストリスは避ける方向を封じられ、次の一手を打つ暇もなく、背後からノアの魔力の矢が飛んでくる。
瞬時に剣を振り、魔力の矢を弾くが、その一瞬の隙を隼人が見逃さなかった。
「これで決める!」
隼人のブレードが高速でアストリスに迫る。
「くっ!」
アストリスは剣でブレードの一部を受け止めるが、完全には防ぎきれず、刃先が彼女の肩をかすめた。
鮮やかな一撃が、アストリスの白い服に赤い筋を刻む。
「いいじゃない!」
アストリスは肩の痛みを無視して声を弾ませた。
「あなたたち、最高ね!」
だが、その興奮が一気に別の方向に向かった。
「でもそうね。その剣、とても素敵ね。それ……もらうわ!」
アストリスはマリアの剣を指し、穏やかだが異様な熱意を込めて言った。
突如、アストリスの上空に異様な光景が広がった。空中に不規則に歪んだ穴が開き、時間軸がずれるような音が響き渡る。
その穴から一本の剣がゆっくりと降りてきた。
剣は、マリアが手にしているものと全く同じだった。
「嘘でしょ……!」
マリアが驚きに目を見開く。
アストリスはその剣を優雅に受け取り、軽く振る。
「うん、これでいいわね」
その瞬間、彼女は冷静な声で呟いた。
「詠唱はこうだったかしら。猛き焔よ、怒りの咆哮と共に燃え広がれ。フレイムバースト」
剣が赤く輝き、膨大な炎が一気に解き放たれた。
「なんであなたがそれを!」
マリアは叫びながら後方へ跳び、炎の奔流をギリギリで避ける。
爆発音とともに、炎が地面を焦がし、その衝撃が周囲に波及する。
マリアは息を切らしながら剣を構え直し、信じられないようにその剣を見つめた。
「ちょっと待って、それ、私の剣と同じじゃない!せこい!どういうことよ!」
マリアが声を荒げると、アストリスは軽く笑った。
「だって、気に入ったんだもの。問題ないでしょう?」
アストリスは笑顔を浮かべながら、剣を肩に担ぎ、さらに攻撃の準備を整えようとしていた。
「冷たき爪痕よ、大地に刻み込み凍結せよ。アイスストリーク」
アストリスが低く呟きながら剣を地面に突き刺すと、冷気が一気に広がり、氷の蛇が地を這うように進み始めた。
その冷気は狙いを定めたかのように、隼人、リーシャ、マリア、ノアに向かって迫る。
「くそっ、またか!」
隼人はすぐにジェットパックの推進力を使い、冷気から逃れるように後退した。
リーシャはすぐに盾を構え、氷柱が突き出る瞬間に盾で受け止めた。
氷柱が弾ける音が響き、リーシャは一歩も引かずに構え続ける。
「避けて!」
リーシャが叫ぶと、ノアとマリアもそれぞれ後方へ跳び、冷気の攻撃を何とか回避した。
「いい動きね。でも、次はどうかしら?」
アストリスは余裕の笑みを浮かべると、今度は剣を空高く掲げた。
その剣は輝くように雷光をまとい始めた。
「雷帝の裁きよ、閃光と共に敵を消滅させよ。ヴォルトエクスプロージョン」
剣を振り下ろした瞬間、アストリスの足元から一気に雷のエネルギーが爆発的に広がった。
空間が歪むほどの閃光が走り、爆発の中心から広がる電撃が一帯を覆い尽くした。
「何だこの威力!」
隼人はライフルを防御に構えながら叫んだが、電撃の一部が直撃し、体が大きく吹き飛ばされた。
ノアは咄嗟に魔法の壁を展開して防御を試みたが、電撃の衝撃に耐えきれず、膝をついてしまった。
「ちょっと待って!」
マリアが叫ぶ。
「それ、私もまだ使えないんですけど!」
電撃の余波が消えた後、全員が疲労困憊の様子で立ち上がる。
リーシャの盾は焦げ付き、隼人のブレードは部分的に焼け焦げ、ノアの杖もひび割れていた。
「くっ……この攻撃力、どうやって……」
隼人は荒い息を吐きながらアストリスを睨みつけた。
「それにしても、いいわね!こうやって戦えるのは最高よ!」
アストリスは楽しそうに笑いながら、次の攻撃の準備をしているようだった。
「どうする……」
隼人が僅かな隙を見つけようと目を細めながら呟く。
すると激しい戦闘の最中、アストリスの上空に突如として改めて現れた異様な光景。
空中に不規則に歪んだ穴が開き、時間軸がずれるような音が響き渡る。
「あら、私何も呼んでないわよ?」
アストリスが微かに眉をひそめ、視線を上空へ向ける。
隼人たちも戦闘態勢を解かないまま裂け目を注視していた。
ノアは動揺しながらも杖を握り直し、リーシャは盾を構えて警戒を強めた。
「また何か厄介なのが来るんじゃないでしょうね……」
マリアが唇を噛みしめながら呟く。
裂け目から現れたのは、まるで光そのものをまとった人影だった。
その人影は高速で移動し、驚きで動きを止めていたアストリスに向かって一直線に突進した。
「何ッ!」
アストリスが剣を構える間もなく、鋭いエネルギーの刃が彼女を直撃し、アストリスは不意を突かれて後方に吹き飛ばされた。
地面を滑りながら止まったアストリスが、呆然とした表情で立ち上がる。
「……誰?」
その光が静かに収まり、姿を現したのはフロリアだった。
彼女は傷ついた装甲を修復したばかりのようで、戦闘用の新たなユニットを装着している。
その目は鋭く、しかしどこか冷静な威厳が漂っている。
「お待たせいたしました、ノア様、皆様。」
フロリアは、長剣を片手に優雅に降り立ち、隼人たちに向かって頭を軽く下げた。
「前回は不覚を取りましたが……、助太刀いたします!」
その言葉に、隼人たちの表情が一気に変わる。
「フロリアさん!」
ノアが喜びに満ちた声を上げた。
「間に合ってよかったわ」
フロリアは微笑みながら、アストリスに冷たい視線を向けた。
「さて、前回はあなたに負けたけども、今回は負けないわよ」
「……なるほど。あなたが来たのね」
アストリスは、先ほどの攻撃を受けた箇所に手を当て、うっすらと笑みを浮かべた。
「でもいいわ。これでさらに面白くなりそうね!」
その言葉と共に、アストリスは再び剣を構え、フロリアに向き直った。
「さあ、続けましょう。もっと楽しませてちょうだい!」
緊迫した空気の中、新たな戦いが始まろうとしていた。




