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救援要請と村の危機

 王都の自宅に戻った隼人たちは、無事に一日を終えた安心感を胸に、それぞれの部屋で休息をとった。

 翌朝、隼人たちは冒険者ギルドを訪れ、新たな依頼を探していた。

 掲示板の前で依頼内容を眺めながら、ノアが隼人に尋ねた。

 

「何か面白そうな依頼ある?」


「この辺りだとモンスター退治か簡単な護衛が多いな。昨日の荷物運びみたいな依頼もあるが……」


 隼人が目を細めていると、突然ギルドの入口が騒がしくなった。


「ん?どうしたんだろう」


 リーシャが振り返る。


 入口には門番の衛兵と、その後ろに泥まみれの服を着た村人は息を切らせた状態で立っていた。

 村人は焦りと緊張で顔を赤くし、衛兵が冷静に冒険者ギルドの受付に話しかけている。


 受付の女性が困惑しながら尋ねた。

 

「どうされましたか?」


 衛兵が落ち着いた声で話し始める。

 

「近隣の村が襲われた。村の住人の話によると、現場に残っている者も多いとの事だ。急ぎ救援が必要だが、我々衛兵が出発するまでには時間がかかる。先に冒険者たちに村の状況確認と救援を頼みたい」


 その言葉に、ギルド内の冒険者たちがざわめき始めた。

 衛兵の要請は珍しいことではないが、状況が緊迫しているのが明らかだった。


 受付の女性は即座に対応を開始した。

 

「わかりました。すぐに救援に向かえる冒険者を募ります!」


 ギルド内にいた手練れの冒険者たちが次々と名乗りを上げた。

 

「俺たちが行こう!」

「ここから村まではどのくらいの距離だ?」

「装備を整えたらすぐに出発する!」


 隼人たちも様子を見守っていたが、その時、ノアが何かに気付いたような顔をした。

 しばらく思案していたが、突然「あっ!」と声をあげた。


「どうした?」


 隼人が尋ねると、ノアは村人を指差しながら言った。

 

「あの人、昨日私たちが荷物を届けた村の人だよ!」

「本当?」


 リーシャが驚いて顔を向ける。

 隼人も状況を整理しようとしたが、ノアの言葉には確信があった。

 

「間違いない。あの村の人だよ!」


「じゃあ、昨日行った村が襲われたってことか……」


 隼人が考え込む。


「行こうよ!」


 リーシャが熱を込めて提案する。


「知らない村じゃないんだし、放っておけないでしょ!」

「確かにな……」


 隼人が頷いたその時、ライナーが一歩前に出てきた。


「ハヤト殿、考え直してください」


 ライナーは真面目な表情で隼人を見つめた。


「あなたがたは監視対象です。救援活動は衛兵の任務でもあります。無理に出向く必要はありません」


 隼人はライナーの意見を聞きながらも、冷静に答えた。

 

「それでも、昨日世話になった村を見捨てるのは気が引けない。それに、少しでも戦力が増えればそれだけ対処しやすくなる可能性もある」


 マリアが軽い調子で肩をすくめた。

 

「まあ、確かに村に着くのは冒険者の方が早そうね。それに、私たちも一緒に行くんだし、問題ないんじゃない?」


 ライナーは一瞬言葉に詰まったが、やがて静かに頷いた。

 

「わかりました。ただし、護衛として衛兵を何人か追加して同行します。あなた方だけで送り出すわけにはいきません」


 ライナーはマリアに衛兵を何名か追加ですぐに連れてくるように指示をだした。


「わかった。それで問題無い」


 隼人はライナーの意見を受け入れ、ノアたちに目を向けた。

 

「行こう。昨日の村に救援だ」


 こうして隼人たちは、新たな危機へと向かうことを決断した。


 冒険者ギルド内で救援の準備が進む中、隼人たちは装備を確認しつつ、到着する支援部隊を待っていた。

 周囲では同じく救援に向かう冒険者たちが次々と手続きと準備を済ませ、緊張感の漂う空気が充満している。


 そんな中、ギルドの入り口から数名の衛兵が現れた。

 その中には衛兵の追加の為に王城に向かっていたマリアもいたが、さらに3名の衛兵が新たに加わっていた。

 いずれも精悍な顔つきで、鍛え抜かれた体躯が印象的だった。


「ハヤト殿、救援部隊に新たな衛兵が加わりました。紹介します」


 ライナーが隼人たちに向き直り、新たな衛兵たちを紹介する。

 ライナーがまず一人目を指差した。

 

「こちらはクラウス。近接戦闘を得意とする隊員です」


 クラウスは一歩前に出て、隼人たちに軽く頭を下げた。

 

「よろしくお願いします。力を尽くす所存です」


 その声には重みがあり、経験豊富さを感じさせる。

 次に紹介されたのは、後ろで控えていた弓を携えた衛兵だった。

 

「こちらはイーゴリ。射撃の腕前は部隊でも随一だ」

「よろしくな。遠距離からの支援は任せてくれ」


 イーゴリは自信たっぷりの笑みを浮かべて手を振った。

 最後に紹介されたのは、魔法を操る術士らしい衛兵だった。

 

「そしてこちらはアラン。防御系の魔法を駆使し、部隊を守る盾として活躍している」


 アランは静かに頷き、簡潔に言葉を添えた。

 

「皆の無事を第一に考える。それだけだ」


「頼もしいですね」


 ノアが感心したように微笑むと、ライナーはわずかに誇らしげな表情を浮かべた。

 全員が軽い挨拶を済ませたところで、ギルドの受付が集まった冒険者たちに向けて声を張り上げた。

 

「今回の救援に集まっていただき、感謝します!現場の村では不明な脅威が確認されています。一刻も早い到着が必要です!」


 受付の女性は部下に目配せし、詳細な指示を伝え始める。

 

「冒険者の皆様には、まず現場の保持と、必要であれば脅威の排除をお願いします。衛兵部隊は準備ができ次第出発し、少し遅れて現場に到着するとの事ですので、それまで村の安全を確保してください」


 その指示に、冒険者たちから小さな声で応答が上がる。

 

「了解した!」

「早く行こうぜ!」


「救援隊、出発をお願いします!」


 受付の女性の一声で、15人程度の冒険者たちは一斉にギルドを出て、足早に街道へと向かい始めた。

 隼人たちもその後を追うように歩き出した。

 ノアとリーシャが足並みを揃えながら話している横で、ナノちゃんがその様子に興味津々な様子を見せている。


「みんな、なんだかかっこいいね!」


 ナノちゃんが楽しそうに言う。

 その後ろを、クラウス、イーゴリ、アランの3名の衛兵が固い表情で歩き、ライナーとマリアもその横に並ぶ。

 

「急いで村に到着し、状況を確認する必要があります」


 クラウスが短く言葉を漏らした。


「状況によっては、一戦交える覚悟はしておけよ」


 イーゴリが弓を軽く持ち直しながら呟く。

 こうして救援隊は、王都を後にし、村を目指して街道を駆け抜けていくのだった。


 隼人たちと冒険者たちは足を止めることなく街道を駆け抜け、昨日訪れた村へ急いでいた。

 冒険者たちの間に緊張が漂い、足取りが速まるにつれ、その場にいる全員の覚悟が徐々に固まっていくのがわかる。


 ノアが息を整えながら言った。

 

「昨日より早く着きそうね」


 隼人も頷きながら周囲を確認している。

 

「そうだな。状況が悪化する前に間に合えばいいが……」


 村の入口に差し掛かると、異様な静けさが迎えた。

 そして一歩村に入った瞬間、目の前に広がった光景に隼人たちは息を呑んだ。


 あちこちの建物が無残に切り裂かれ、いくつもの穴が開いていた。

 地面には爆発によると思われる焦げ跡やひび割れがあり、一部の家々はまだくすぶりながら燃え続けている。


「……これは……ひどい……」


 リーシャが顔を覆った。

 村の通りに目を向けると、数名の住民の遺体が転がっていた。

 その中には、村長と思われる人物もいた。


 ノアは悲痛な表情を浮かべながら呟いた。

 

「どうして、こんな……」


 ナノちゃんが隼人の後ろに隠れるようにしながら、怯えた声を漏らす。

 

「ねぇ、これ、すごく怖い……」


 隼人は周囲を見渡しながら警戒を強め、全員に声をかけた。

 

「気を引き締めろ。まだ敵がいる可能性が高い」


 冒険者たちも緊張感を増し、それぞれの武器を構え始めた。

 

「ここまでやられたとなると、相手は相当の手練れか、それとも化け物か……」


 一人の冒険者が低く呟いた。

 突然、遠くの畑の方から女性の悲鳴が響き渡った。

 

「助けて!誰か!」


 その声に反応した冒険者たちは即座に動き始める。

 

「あっちだ!急げ!」


 手練れの冒険者が周囲を確認しながら全員に指示を飛ばした。

 

「散開するな!固まって進むぞ!」


 リーシャが盾を構え、ノアが杖を握りしめて隼人の横に並ぶ。

 ナノちゃんは隼人の後ろに隠れながら、小さな声で言った。

 

「気をつけてね……」


 ライナーが冷静な声で指示を出す。

 

「私たち衛兵も前線に加わります。ハヤト殿、何かあればすぐに知らせてください」

「わかった」


 隼人は短く返事をし、全員で畑の方へと駆け出した。

 悲鳴の方向へ向かう隼人たちと冒険者たち。

 畑の先に何が待ち受けているのかもわからないが、全員が最大限の警戒を保ちながら進んでいった。


 荒れ果てた村を後にして、彼らは次なる脅威の存在を感じ取ろうとしていた。

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