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決死の激闘と更なる脅威

 フロリアとアストリスの剣劇は熾烈を極めていた。

 洞窟内には金属がぶつかる音が響き渡り、火花が散るたびに戦場の緊張感が高まっていく。

 フロリアの強化ブレードは輝きを増し、アストリスの剣は淡く冷たい光を放ち続けていた。


「これでも喰らいなさい!」


 フロリアがエネルギーを込めた斬撃を繰り出す。

 その一撃は凄まじい速度と威力を誇り、ブレードから放たれる衝撃波が周囲の空気を震わせた。


 だが、アストリスはその斬撃を軽々といなすように身をひねり、間合いを詰める。

 彼女の剣が鋭く振り下ろされ、フロリアは間一髪でその一撃を受け止めた。


「まだまだね」


 アストリスは笑みを浮かべ、さらに連続攻撃を仕掛ける。

 その動きは予測不可能で、フロリアは防戦一方となった。

 必死に受け流しながらも、隙を見つけ反撃の機会をうかがっていた。


 再び間合いが開き、二人は一瞬だけ静止する。

 だが、次の瞬間、アストリスが再び襲い掛かった。

 フロリアは剣を水平に構え、アストリスの剣を受け止める。

 しかし、アストリスの力強い斬撃はフロリアの腕に重くのしかかり、徐々に押し込まれる。


「くっ……!」


 フロリアは全力で踏みとどまり、逆に力を込めてブレードを振り払った。

 その動きにより一瞬間合いが広がり、再びお互いが鋭い視線を交わす。


 激しい応酬の中、アストリスがわざと隙を見せたかのように動きを緩めた。

 その瞬間、フロリアの目が鋭く光る。


「甘いわ!」


 フロリアは全力を込めてその隙にブレードを振り下ろした。

 その一撃は正確にアストリスの胴体を狙い、速度も申し分なかった。


 だが――。


「残念」


 アストリスは笑みを浮かべながらその一撃を余裕でかわした。

 その動きはまるで風のように滑らかで、フロリアの斬撃は虚しく空を切る。


「……何?」


 攻撃を外した瞬間、フロリアの体勢が一瞬崩れる。

 その隙を見逃すほどアストリスは甘くなかった。


「私の番ね」


 アストリスは素早く回し蹴りを放つ。

 その足がフロリアの腹部に直撃し、彼女の体が大きく吹き飛ばされた。


「ぐっ……!」


 フロリアは地面を転がりながら、なんとか体勢を立て直そうとする。

 だが、蹴りの威力は凄まじく、体に響く痛みに一瞬動きが鈍った。


 フロリアが立ち上がると、アストリスは変わらず余裕の笑みを浮かべていた。

 その瞳には挑発の色が濃く、まるでこの戦いを楽しんでいるように見える。


「さあ、次はどうする?」


 その言葉に、フロリアの目が燃えるような決意を宿した。

 その一撃を避けられた悔しさと蹴りの威力への驚きが、彼女の中でさらなる戦意を掻き立てていた。


「まだ終わりじゃない……!」


 洞窟内の緊張感はますます高まり、次なる一撃が戦いの流れを大きく変える予感を漂わせていた。


 吹き飛ばされた体勢を立て直したフロリアは、再び強化ブレードを構え直した。

 だが、今度は違う。

 腰元からもう一本のブレードを引き抜き、二刀流の構えを取る。


 まだ反抗しようとするフロリアに対してアストリスの口元に笑みが広がった。

 その表情には好奇心すら漂い、戦いそのものを楽しんでいるようだった。


「さあ、次はどんな手を見せてくれるの?」


 フロリアはアストリスの言葉に反応せず、静かに息を整えた。

 そして、一瞬の沈黙の後、地面を蹴り、一気に間合いを詰める。

 

 フロリアの二本のブレードが連続で繰り出される。

 左から右、上から下へ、流れるような攻撃が次々とアストリスに襲い掛かる。

 その動きは速く、そして力強かった。


「これはいいわ!」


 アストリスは楽しげな声を上げながら、その攻撃を次々といなしていく。

 剣で受け止めたり、体をひねって避けたり、その身のこなしには一切の迷いがなかった。


 フロリアは攻撃を止めることなく、さらに猛攻を加える。

 だが、アストリスの余裕の表情は崩れない。

 むしろ、彼女の瞳には戦いを楽しむ光が宿っていた。


「もっと、もっとよ!その調子で来なさい!」


 アストリスの挑発的な言葉に、フロリアの表情がさらに険しくなる。

 フロリアは、猛攻を繰り出しながらも次の一手を計算していた。

 攻撃の手を止めることなく、両手に握ったブレードを巧みに操り、流れるように動きながら接続機構を発動させる。


 剣劇の最中、二本のブレードがしっかりと噛み合い、大きな一本の武器へと形を変えた。

 その動作は滑らかで、アストリスすらその変化に気づくのが一瞬遅れるほどだった。


「……何?」


 アストリスの目がわずかに驚きの色を浮かべたが、フロリアは迷いなく次の攻撃に移行する。


「これが私の全力!」


 フロリアは大きなブレードを一気に振り下ろした。

 刃先から放たれる圧倒的なエネルギーが空間を切り裂き、洞窟内に轟音を響かせる。

 その一撃は衝撃波となり、アストリスに向かってまっすぐに放たれた。


 アストリスは剣を構え、その攻撃を防ごうとしたが、放たれた衝撃の勢いは予想以上だった。

 彼女の剣は激しい振動を受け、耐え切れずに軋みを上げる。


「っ……!」


 その衝撃は、アストリスの体を広場の端まで吹き飛ばした。

 壁際に叩きつけられた彼女の体は一瞬動かず、手にしていた剣も彼女の手元から滑り落ちた。


 フロリアは大きく息をつきながら、ブレードを構え直して次の動きを伺った。


「やったか……?」


 しかし、次の瞬間、倒れていたアストリスがゆっくりと体を起こした。

 その顔には満面の笑みが広がっており、瞳には異様な興奮が宿っていた。


「フフフフ……ハハハハハ……!これよ……これが私の求めていたもの!」


 彼女の声は広場全体に響き渡り、その様子は異様でさえあった。

 痛みに苦しむどころか、まるで楽しさの極みに達したかのように笑い続けている。


「何がおかしい……!」


 フロリアが眉をひそめながら問いかける。


 だが、アストリスはその言葉には答えず、狂ったような笑い声を上げながら立ち上がった。


「素晴らしい……こんなに楽しいなんて!もっと……もっとやりましょう!」


 その異常な光景に、フロリアは警戒心をさらに強めた。

 彼女の攻撃が通じたはずなのに、目の前の敵はまるでそれすらも楽しんでいるかのようだ。


「……この女、何者なの?」


 戦いはまだ終わらない。

 フロリアは再び構えを取り直し、目の前の敵に意識を集中させた。

 洞窟内の緊張感はさらに高まり、次なる局面を予感させていた。


 狂気の笑い声を上げ続けていたアストリスが、突如その声を止めた。

 彼女は薄く笑みを浮かべたまま、静かに手を上げる。


「それ……いいわね。私も欲しいわ」


 彼女が何かを呼びかけるような不思議な言葉を紡ぎ始めると、広場内の空気が変わった。

 薄明るかった空間が一瞬暗くなり、どこからともなく低い唸り音が響き渡る。


「……何をしている?」


 フロリアは眉をひそめながら強化ブレードを構えたまま問いかけた。

 だが、アストリスは答えず、まるで誰かと交信しているかのように呟き続けていた。

 その時、フロリアの耳にルクシアの冷静な声が響いた。


「フロリア、緊急です!先程接続した転送装置から高エネルギー反応を確認しました!」

「高エネルギー反応?」


 フロリアはアストリスから一瞬視線を外し、背後の方向をちらりと見た。

 その先には転送装置がある。


「はい、間もなく転送が完了すると思われます。何かがこちらに転送されてきます!」


 その言葉を聞いた瞬間、フロリアは再びアストリスに視線を戻した。

 彼女はその場に佇み、依然として奇妙な言葉を呟き続けている。


「転送……まさか」


 ルクシアの警告から数秒後、転送装置が唸り声を上げたかと思うと、地面が震え始めた。

 そして、転送装置の方向から突然壁が崩れ、巨大な何かが突進してきた。


「っ……!」


 フロリアはとっさに身を引いて回避する。

 その巨大な物体はまるで意志を持っているかのように進み、アストリスの元で動きを止めた。


「……何だこれは?」


 その物体は装甲のようなパーツで構成されており、どこかで見覚えのある形状だった。


「これは……!」


 目の前でその物体が自動的にアストリスに装着され始める。

 肩から胸、脚部、そして腕にかけて、彼女の体を包み込むように装甲が収まっていく。


 それは、まるでフロリアのDSUに酷似していた。


 装甲の装着が完了すると、アストリスはゆっくりと両手を広げ、自身を覆う装甲を眺めるように見た。


「こういうものかしら?」


 その声には、自分に与えられた新たな力を試す期待感がにじんでいた。

 アストリスが軽く拳を握ると、装甲が微かに光を放ち、力がみなぎる音が響く。


「……まさか」


 フロリアは驚愕の表情を浮かべた。

 その時、ルクシアから再び通信が入る。


「フロリア、確認しました。転送されてきたのは……『デプスストライクユニット』です!」


「……DSUだって?」


 フロリアは目の前のアストリスを睨みつけた。

 まるで彼女専用に設計されたかのように、アストリスの体にぴったりと装着されたその装甲。


「面白い……これはなかなかいいものね」


 アストリスは自信に満ちた笑みを浮かべた。


 フロリアはブレードを握り直し、再び構えを取る。

 目の前の敵が、さらに厄介な存在へと変貌を遂げたことを痛感しながら、次なる戦いへの覚悟を固めていた。


 アストリスの全身を包むDSUが淡い光を帯び、その力を示すかのように低い振動音を発していた。

 その姿は威圧感に満ち、まるでフロリアに向かってさらなる挑発をしているようだった。


「さあ、この力を試させてもらおうかしら」


 その声が響くや否や、アストリスは両手に強化ブレードを持ち、一気に間合いを詰め、フロリアに向かって鋭い攻撃を繰り出した。

 フロリアは強化ブレードを構え、迎撃を試みた。

 しかし、アストリスの動きは予想以上に速く、重く、正確だった。


「っ……!」


 ブレードを振りかざして攻撃を防ごうとするが、アストリスの一撃はブレード越しに衝撃を伝え、フロリアの体勢を崩していく。

 さらに、アストリスは何かを確認するかのように攻撃を仕掛けてきた。


「こう、だったかしら」


――「Maximum Overdrive: Engaged. 全エネルギー戦闘モード」――

 

 その言葉とともにアストリスのマキシマムオーバードライブが発動した瞬間、アストリスは両手に握ったブレードを巧みに操り、接続機構を発動させる。

 二本のブレードがしっかりと噛み合い、大きな一本の武器へと形を変え、刃先から放たれる圧倒的なエネルギーが空間を切り裂きく。


「なっ……!」


 その衝撃波によりフロリアを大きく吹き飛ばし、フロリアの体は壁に叩きつけられる。


「……っ!」


 壁に叩きつけられたフロリアは地面に崩れ落ち、その場で動かなくなった。

 強化スーツがかろうじて致命傷を防いでいたが、そのダメージは計り知れない。


 その時、ルクシアの緊迫した声が通信機から響いた。


「フロリア!意識レベルの急激な低下を確認……フロリア、大丈夫ですか!応答してください!」


 しかし、フロリアの意識はすでに途切れており、その声に応答することはなかった。

 アストリスは、動かなくなったフロリアを見下ろしながら、どこか楽しげに微笑んだ。


「もう終わり?……少しつまらないわね」


 そう言いながら、彼女は軽く手を振る仕草を見せた。


「まあ、いいわ。この装備も気に入ったし。教えてくれたお礼にまだ殺さないでいてあげる。また会いましょう」


 その言葉を最後に、アストリスは軽やかな足取りで洞窟の奥へと消えていった。

 その姿は徐々に暗闇に溶け込み、完全に見えなくなった。


 広場には静寂が戻り、フロリアの倒れた姿だけが残されていた。

 ルクシアの声が通信機から響き続けるが、それに応じる者はいない。


「フロリア……どうか……応答を……」


 洞窟内には冷たい空気だけが漂い、フロリアの無意識の体が、淡い光を放つスーツに守られて静かに横たわっていた。

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