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ナノちゃんが語る目的

 ナノちゃんが無邪気な笑顔を浮かべて場の空気を和らげた直後、レオンハルト王子は冷静な声で彼女に問いかけた。

 

「元々のデータが残っていると言っていたが、一体どのくらい残っているのだ?」


 その言葉に、ナノちゃんは少し考え込むように唇を尖らせ、腕を組む。

 

「うーん、結構残ってるみたいだよー。この星に来た理由とか、目的とか?」


 その答えに、王子をはじめ部屋の技術者たち全員が緊張した表情を浮かべた。

 魔石として再構築され、さらに幼女の姿を取る今でも、彼女は何か重要な秘密を抱えている可能性があった。


「なぜ、そのデータが浄化プロセスを経ても消えなかったのか?」


 王子はさらに問う。


「そして、その内容を確認したい」


 ナノちゃんは再び「うーん」と悩む仕草をしながら、次ににっこり笑って言った。

 ナノちゃんは少し得意げに説明を始めた。

 

「ナノの中には『自己保存モジュール』っていうものがあって、それがデータを保護してたみたい!」


「自己保存モジュール?」


 主任技術者が眉を寄せながら問い返す。

 ナノちゃんは嬉しそうに頷いた。

 

「そうそう!転送や浄化、破損が起きても、ナノの一番重要なデータはそのモジュールに自動で保存される仕組みなの。だから浄化プロセスを経ても、そのデータは消えなかったんだよー!」


 主任技術者はすぐに端末を操作し始め、ナノちゃんの言う「自己保存モジュール」の構造を確認しようと試みた。

 だが、頭を振って結論を述べた。

 

「これほどまでに高度なモジュール……現状の技術では、その全容を解析するのは困難だ」


 ナノちゃんは楽しげに頷きながら、情報を話し始めた。

 

「じゃあ、この星に来た理由と目的を教えるね!」


 彼女は胸を張り、誇らしげに語る。

 

「ナノの目的はね、全ての存在をナノたちに同化することだよ!」


 その場にいた全員が一瞬言葉を失った。

 その静寂を破ったのは、王子の低く抑えた声だった。

 

「同化……だと?」


「うん!」


 ナノちゃんは無邪気な笑顔のまま頷く。


「ナノたちの星ではね、同化してみんなを一つにするのが最高の状態だって考えてたの!だから、いろんな星を訪れて、そこにいる存在を同化してたんだー!」


「では、この星に来た理由もそれか?」


 王子がさらに問う。

 ナノちゃんは楽しげに答えた。

 

「そう!この星も同化の対象だったんだよ!星々を順番に同化していく途中で見つけた、次の目的地って感じかなー?」


 その言葉を聞いて、王子も技術者たちも表情を引き締めた。

 彼女が語る内容は、想像以上に深刻だった。


「その同化する尖兵はお前だけなのか?」


 王子が鋭い声で問いかける。

 ナノちゃんは再び首をかしげたが、やがて楽しげに語り続けた。

 

「それがねー、ナノだけじゃなくて、いろいろな同化の方法を試してたらしいの!だから、ナノ以外の同化用の存在も、この星に一緒に転送されてるんじゃないかな?」


「……他にも、同化のための存在が?」


 ナノちゃんは頷き、にっこりと笑った。

 

「そうだと思う!」


 部屋の空気が一段と重くなった。

 ナノちゃんの言葉は、これが単なる一つの事件ではなく、もっと広範な問題に繋がっている可能性を示していた。

 王子の眉間には深い皺が刻まれ、技術者たちは互いに顔を見合わせて動揺を隠せなかった。


「同化……そして他の存在か……」


 王子は低く呟き、ナノちゃんの幼い姿をじっと見つめた。

 その無邪気な笑顔の裏に潜むものを探るように。


 レオンハルト王子はナノちゃんが語った「星々を同化する」という言葉に、ふと顔を曇らせた。

 少しの間考え込むように目を伏せ、やがて真剣な表情で問いかける。


「星々を同化する……、それは……我々の伝承に語られる星間戦争のことか?」


 その言葉に、部屋の空気が一段と張り詰める。

 技術者たちも端末から目を離し、王子とナノちゃんのやり取りに集中し始めた。


 ナノちゃんはその質問に、特に深刻な様子もなく軽い調子で答えた。

 

「伝承になるくらい古い話なんだねー」


 彼女は少し考え込むように顎に指を当てた後、楽しげに続けた。

 

「ナノも転送に失敗しちゃってね。起動コードが送られてこなかったからずーっと眠ってたんだ。でも最近目覚めたばっかりだから、その間のことはわからないけど……多分、そういうことだと思うよ?」


 ナノちゃんの無邪気な返答に、王子は眉をひそめたままさらに尋ねる。

 

「最近目覚めた……とはどういうことだ?」


 ナノちゃんは王子を見上げ、何かを思い出したように目を輝かせた。

 

「最近ね、この星にナノたちとは違う何かが転送されてきたみたいでさー」


 その言葉に、部屋の全員が耳を傾けた。ナノちゃんは無邪気に続ける。

 

「その起動信号がすっごく強力だったの!だからナノも一緒に目が覚めちゃった感じなんだよねー。多分、ナノ以外の何かも目覚めてるんじゃないかな?」


 その言葉に、隼人は表情には出さなかったものの、内心で大きな衝撃を受けた。


(俺がこの星に転送されてきたから……?そのせいでナノちゃんが目覚めてしまったってことか?)


 隼人は心の中でシステムに問いかけた。


――「現在の情報では、ナノスウォームの起動信号の詳細は特定できません」――


(いや、どう考えても……俺だろう)


 隼人はその可能性を否定できず、次に自分が確認するべきことを思い浮かべた。


 隼人は少し息を整え、落ち着いた声でナノちゃんに問いかけた。

 

「ナノちゃん、他の同化用の存在に関してだが……。闇のように暗く、人型の存在は見覚えがないか?」


 その質問に、ナノちゃんは目を丸くし、すぐににっこりと微笑んだ。

 

「うん、いたよー!」


 彼女の言葉に隼人の心臓が跳ねる。

 技術者たちや王子も、その答えに緊張を走らせた。


 ナノちゃんは軽い調子で続けた。

 

「あのちょっと暗そうな子でしょ?前に会ったよー。あ、でもナノ、今の状態になる前だからね。その時はよくわかんなかったけど、確かにあれは……えっと、何て言えばいいのかな?」


彼女は言葉を探しながらも、その存在について特に恐れる様子もなかった。その軽さが逆に周囲の緊張感を増幅させる。


「暗そうな子……それが、他の同化用の存在だということか?」


 王子が鋭く確認する。


 ナノちゃんは首を小さく傾げながら笑った。

 

「うーん、たぶんそうだと思う!でも、ナノと違う感じだったから、きっと別の方法で同化するタイプなんじゃないかな?」


 その言葉に、隼人は先日の戦闘で遭遇した「闇の存在」を思い出していた。


(あれも同化を目的とした存在……俺が転送されてきたことで、ナノちゃんだけじゃなく、あいつも目覚めたってことか?)

 

 部屋の空気は重く、誰もがその場に漂う不穏な空気を感じ取っていた。

 レオンハルト王子は静かに言葉を切り出す。


「つまり、この星にはお前以外にも起動した『何か』がいるということだな?」


「そうだと思うよー」


 ナノちゃんは悪びれることなく答えた。


「でも、大丈夫だよ!ナノがいるから!」

 

 レオンハルト王子は冷静にその意味を問いただした。


「何が大丈夫だと言うのだ?」


 彼の鋭い問いに、ナノちゃんは明るい笑顔を浮かべたまま、胸を張りながら言葉を続けた。


「えっとね、接続していい端末があったら、データを見せてあげられるよ!」


 その言葉に技術者たちは一瞬戸惑い、主任技術者がレオンハルト王子の指示を仰ぐように目を向けた。

 王子は短く頷き、技術者に端末をナノちゃんにリンクさせるよう命じた。


「わかりました。安全を確認した上でリンクします」


 主任技術者は慎重に端末を操作し、一台の端末をナノちゃんに接続した。


「ありがとう!」


 ナノちゃんは楽しげに笑いながら、目を閉じた。

 その瞬間、端末のスクリーンに次々と複雑なデータが表示され始めた。


 技術者たちはその内容に目を凝らし、次第にその驚きが声となって漏れ出す。

 

「……これは……!」

「『アルテウム・ギア』で使用されている特殊な魔石の構築方法が記載されている……」


 端末に送られてきたデータには、通常の魔石ではなく、より高度な「魔石コア」の構築方法が詳細に記されていた。

 それは、現在の王城の技術では作成できないとされていた発掘された希少なコアと同等のものだった。


 ナノちゃんは端末のスクリーンを指差しながら楽しげに説明を続けた。

 

「ナノみたいなナノマシンの集合体を作るのは難しいかもだけど、これくらいの簡易的なコアなら今の技術でも作れるんじゃないかな?」


 技術者の一人が目を輝かせながら王子に向き直った。

 

「王子!これは……もし本当に構築可能なら、『アルテウム・ギア』を量産出来る可能性があります!」


 主任技術者も興奮した声で補足する。

 

「構築方法が現在の技術で実現できるレベルに落とし込まれている……」


 ナノちゃんは満足げに胸を張ると、にっこりと笑って言った。

 

「どう?すごいでしょー!」


 レオンハルト王子は冷静な表情を保ちつつも、その目には明らかに驚きの色が浮かんでいた。

 

「このデータ……今までの技術ではあり得なかったものだ。それを君が持ち込んだというわけか」


 ナノちゃんは得意げに頷いた。

 

「そうだよー!これを使えば、きっともっと人々を守れるようになるよね?」


 その言葉を聞いた技術者たちは、一斉にデータの解析を進め始めた。

 

「これがこの国の未来を変える可能性を秘めているかもしれないな」


 王子が低く呟く。

 その言葉には期待と警戒が入り混じっていた。


 ナノちゃんはそれに応えるように、無邪気に笑みを浮かべながら言葉を重ねた。

 

「そうだねー!ナノ、もっとお手伝いすることあったら言ってね!」


 その姿は幼く無害に見えるものの、彼女が持つ技術と謎の背後には、まだ誰も知らない危険が潜んでいるかもしれない。

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