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脱出口の解放と戦闘の幕開け

 王座の間の緊張感はますます高まっていた。

 操られた警備兵たちが、静かだが威圧的な気配を漂わせながら扉の前に立ちはだかり、人々の動きを封じている。

 隼人は人々の間をかき分けながら、彼らに近づいていった。


 (無益な争いは避けたい……あの警備兵たちは操られているだけだ)


 隼人の眉間には深い皺が寄っていたが、その目は揺るぎない決意を湛えていた。


「システム、聞こえるか?」


 隼人は心の中で呼びかけるように問いかけると、彼の視界の隅にシステムのインターフェースが浮かび上がった。


――「はい、応答します」――


「操られている警備兵やロボットを殺さず、壊さずに無力化する方法はあるか?」


 隼人の問いに対し、システムは一瞬の間を置き、冷静に回答を返した。


――「無力化は非効率です。目標の活動を停止させる最も効果的な方法は完全な破壊です」――


 その言葉に隼人は眉をひそめる。


「非効率だろうと構わない。彼らはただ操られているだけなんだ。殺す必要はないだろう?」


――「了解しました。代替手段を提示します」――


 システムは即座に隼人の装備を解析し、可能性を模索する。


――「バックパックユニットおよび光学迷彩ユニットの魔石吸収により、ユニットの出力が安定しました。これにより、左手にエネルギーブレードを展開可能です。ただし、使用可能出力は最低レベルに制限されます」――


 隼人は一瞬考えた後、指示を続ける。


「最低出力でも問題ない。それで相手を無力化できるか?」


――「エネルギーブレードの周波数を調整することで、人体やロボットの構造には影響を与えず、意識のみを刈り取る設定が可能です」――


 その回答に、隼人はほっと息をついた。


「意識を刈り取る、か……元に戻る見込みは?」


――「操られている要因である大元の信号を遮断または破壊すれば、意識は回復する可能性が高いと推測されます」――


 隼人は視界の隅に表示されたエネルギーブレードの設定情報を確認した。

 その小さな光の刃は、わずかに青白く輝き、彼の左手の甲に現れる準備を整えていた。


「……わかった。それで行こう」


 彼の声には、揺るぎない決意が込められていた。


 隼人は人々の間を縫うように進みながら、ゆっくりと左手を掲げ、エネルギーブレードを展開した。

 淡い光を放つ刃は、不思議と威圧感を感じさせず、むしろ静かな決意を表しているかのようだった。


「よし……これで無力化できる」


 心の中でそう呟きながら、隼人は警備兵たちに近づいていった。

 その足取りは静かだが、彼の内なる闘志は燃え盛っていた。


 操られた警備兵たちの動きはまだ静かだったが、その無機質な気配が肌を刺すように伝わってくる。


「システム、扉を解放する準備は?」


――「即時解放可能です」――


 隼人は深呼吸を一つしてから、振り返り、案内役の衛兵とノア、リーシャに目を向けて合図した。


「行くぞ。扉を開けたら、衛兵さん、頼む!」


 案内役の衛兵は緊張した面持ちで頷き、扉が開かれた後の誘導を心に決めていた。

 隼人はエネルギーブレードを構えながらシステムに指示を出した。


「よし、扉を開けろ!」


――「指示を確認。扉を解放します」――


 隠し扉が低い機械音を立てながらゆっくりと開かれた。

 冷たい空気が流れ込み、薄暗い通路がその向こうに続いているのが見えた。


「脱出口です!皆様、こちらへ!」


 案内役の衛兵が大声を上げ、周囲にいる人々を急いで誘導し始めた。

 その声に、混乱していた人々が徐々に動き始める。


「落ち着いて!順番に並んでください!」


 ノアとリーシャも声を張り上げ、住民たちを扉の方へ誘導していく。

 人々は不安そうな表情を浮かべながらも、少しずつ脱出口へと向かって歩き始めた。


 しかし、扉が開いたその瞬間、操られていた警備兵たちの挙動が変化した。

 彼らの体がわずかに震え、無表情だった顔が一層硬直する。


「……動き出したぞ」


 隼人が低く呟いた瞬間、警備兵たちは一斉に扉の方へと向かい始めた。


――「警告:ヴァルゴート・ナノスウォームによる統制が強化されています。攻撃態勢に移行しました」――


 システムの冷静な報告が隼人の視界に表示される。


「みんなを逃がすまで、絶対にここは突破させない!」


 隼人は左手のエネルギーブレードを再び展開し、その淡い光が彼の決意を照らし出す。

 警備兵の一人が先陣を切り、鋭い動きで隼人に向かって剣を振り下ろしてきた。

 隼人はエネルギーブレードを素早く構え、剣を弾き返す。


――「対象、無力化を開始します」――


 隼人は警備兵の胴体を狙い、エネルギーブレードを軽く当てた。

 刹那、その兵士の体が一瞬硬直し、その場に崩れ落ちた。


「よし、うまくいった!」


 隼人はすぐさま次の兵士に目を向けた。

 脱出口に向かおうとする人々の背中を守るため、隼人は一瞬たりとも気を抜かず、操られた敵たちを次々と無力化していく。


「急いで!扉を抜けたらそのまま進んで!」


 ノアとリーシャが民を誘導し、案内役の衛兵が後押しする。

 隼人はその背中を守る盾となるべく、一人で敵たちに立ち向かい続けた。

 王座の間の空気は緊張の極みに達し、隼人の覚悟が試される時間が続いていく――。


 隼人は鋭い目つきで次々と向かってくる操られた警備兵たちを見据えていた。

 左手のエネルギーブレードは、淡く輝く刃を保ちながら、彼の意思に応じて動く。


「来るなら来い……!」


 警備兵たちは、まるで見えない糸に操られているかのように、一斉に隼人へ向かって突進してきた。

 彼らの動きは一糸乱れず、異様なまでに洗練されている。


 次に接近してきたのは二人の警備兵だった。

 彼らは剣を抜き、まっすぐ隼人の首を狙って斬りかかる。

 隼人は一歩後退し、剣の軌跡を冷静に見極めながらエネルギーブレードを逆手に構えた。


――「警告:敵の攻撃速度上昇を確認」――


「問題ない……俺に合わせろ!」


 隼人はシステムにそう指示すると、バックパックを展開して一瞬で前進し、ブレードを交差させて二人の剣を弾き飛ばした。

 すかさず胴体を狙い、ブレードを軽く当てる。


 警備兵たちは硬直し、その場に崩れ落ちる。


――「対象、無力化完了。意識喪失を確認」――


 隼人は一瞬の隙も与えず、次の敵に視線を向けた。


 外部から王座の間に向かってきていた警備兵たちが、ついに扉をこじ開けた。

 隼人の視界には、さらに10人以上の警備兵が姿を現す。

 背後からは操られたロボットたちが機械音を響かせながら進んできている。


「増援か……」


 隼人は眉をひそめながらエネルギーブレードを構え直す。


――「警告:対象増加。周囲の敵数、15体以上を確認」――


「やるしかない!」


 警備兵たちが一斉に動き出した。

 そのうちの一人が槍を突き出し、隼人の腹部を狙ってくる。

 隼人はジェットパックの勢いに任せて体をひねり、槍の先端をわずかにかわすと、カウンターでエネルギーブレードを肩口に当てた。


 警備兵はその場に倒れ込むが、その隙を狙って別の兵士が盾を構えて突進してきた。


「そんなもんで止められるか!」


 隼人はエネルギーブレードを盾に打ち付け、その振動で相手の腕をしびれさせると、胴体を狙って刃を軽く当てる。

 一撃で動きを止めた。


 しかし、ロボットたちも不気味な音を立てながら接近してきた。

 操られた彼らは剪定用だろうか鋭利なブレードを展開している。


――「警告:敵ロボットの攻撃性能上昇を確認。近接戦闘を継続」――


「ロボットまで来るとはな……だが、相手をしてやる!」


 隼人は素早く後ろへ下がり、最初のロボットの攻撃をかわす。

 かわす際にエネルギーブレードを下から振り上げ、ロボットの脚部関節に一撃を入れる。

 刹那、ロボットが動きを止め、その場に崩れ落ちた。


――「ロボット、無力化完了。動力停止を確認」――


 その直後、別のロボットが背後から鋭い刃を振り下ろしてきた。

 隼人は一瞬で反転し、ブレードを防御に回す。


「くっ……!数が多いな!」


 エネルギーブレードが衝撃を受けて火花を散らす中、隼人はロボットを蹴り飛ばし、再び構え直した。


 王座の間の空気は、激しい戦闘の余波で緊張感に包まれている。

 隼人の周りには無力化された警備兵やロボットが転がっているが、新たな敵が次々と湧いてくる。


「これじゃキリがない……!だが、全員が脱出するまで、俺が止めてやる!」


 エネルギーブレードが再び淡い光を放つ。

 隼人はブレードを構え直し、迫り来る敵の波に立ち向かう準備を整えた。


 更に操られた警備兵やロボットが次々と流れ込んでくる。

 その度に隼人のエネルギーブレードが光を放ち、敵を一体ずつ無力化していく。


――「警告:新たな敵が接近中。王座の間の侵入者数、さらに増加を確認」――


 背後では、案内役の衛兵が民を誘導し続けていた。

 ノアとリーシャも住民のサポートを行いながら、少しずつ脱出口へと人々を送り出している。


「ハヤト、頑張って……!」


 ノアが小さく呟きながら、民の最後尾を見守る。

 その視線の先で、隼人が一人で敵の大群に立ち向かっている姿がはっきりと映っていた。


(ここで倒れるわけにはいかない……!)


 隼人の戦いはまだ続く。

 彼のエネルギーブレードが光を放ち、王座の間の暗闇を切り裂きながら――。

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