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迫り来る危機と脱出経路の探索

 緊張が高まる王座の間。

 ヴァルゴート・ナノスウォームの制御下の警備兵たちは何かを探しているようだった。

 その中で、隼人のシステムが再び鋭い警告を発した。


――「警告:王座の間外部の警備兵とロボットに異常を検知。対象、ヴァルゴート・ナノスウォームの制御下に入る」――


 隼人の視界には、次々と赤いマーカーが浮かび上がり、制御下に入った警備兵やロボットの位置が表示されていく。

 しかも、それらが王座の間へ向かってきていることを示す矢印が絶え間なく追加されていく。


「これ……外の連中まで巻き込まれてるのか……」


 隼人は低く呟き、焦燥を隠せない様子で地図を凝視した。

 隼人のシステムが次の選択肢を提示した。


――「警告:現在の状況下での判断を要求。戦闘か退却かを選択してください」――


 ノアとリーシャが隼人の様子に気づき、顔を寄せる。


「ハヤト、何か起こってるの?」


 ノアが緊張した声で尋ねた。


「外の警備兵やロボットが次々と制御されて、ここに向かってきているらしい」


 隼人は答え、二人の表情が険しくなる。

 リーシャが焦りを隠せない声を上げた。


「そんな……じゃあ、ここもすぐに危なくなるってこと?」


 隼人は冷静さを保とうと深呼吸しながら、短く指示を出した。


「ここで戦うのは無理だ。人が多すぎる。脱出経路を探すしかない」


 そう言うと、隼人はすぐにシステムに命令を送った。


「脱出経路を探せ。この状況で戦闘を避けられるルートはあるか?」


――「命令受諾。周辺のマッピングを開始」――


 隼人のシステムは即座に衛星とのリンクを確立し、王座の間の詳細な構造を解析し始めた。

 その間にも、外部からの制御された生命体が王座の間に迫る警告が断続的に表示される。


――「衛星データとのリンク完了。周辺構造物の解析を開始」――


 緊張が高まる中、隼人たちは人々のざわめきに耳を傾けながら、次の一手を待った。


 そして、数秒後――。


――「脱出経路を確認。王族専用と思われる非常用脱出口を発見しました」――


 隼人はわずかに息を吐き、ノアとリーシャに振り向いた。


「脱出経路がある。王族専用の非常用脱出口らしい」


 ノアは安堵の表情を浮かべながらも不安を隠せない。


「王族専用……それって、私たちが使えるの?」

「わからない。でも脱出口があるなら試してみるべきだとは思う」


 隼人はシステムの表示を見つめながら短く答えた。

 リーシャが隼人の腕を軽く引きながら言った。


「とにかく行くしかないわ。ここに留まるよりはずっとマシよ」


 外部から迫る危険と、内部の混乱。

 隼人たちは、限られた時間の中で命をつなぐ脱出の一歩を踏み出す準備を始めた。


 王座の間の異変により、ざわざわと騒ぎ立つ人々。

 その中で、隼人たちは脱出口を目指して人の波をかき分け、慎重に玉座の後ろへと進んでいった。

 

 状況はますます緊迫し、隼人たちの表情には焦りが見え始めていた。

 リーシャが小声で隼人に問いかけた。


「ハヤト、ここに脱出口があるって本当に間違いないの?」


 隼人はシステムのオーバーレイマップを確認しながら、短く答えた。


「間違いない。俺のシステムが場所を教えてくれている」


 隼人たちは玉座の背後に到着したが、その場で動かず、周囲の様子を慎重に確認した。

 扉は全て封鎖されており、ヴァルゴート・ナノスウォームに制御された人々は周囲を探索しているようだが、いつ動き出してもおかしくない状況だった。


 その時、案内役を務めていた衛兵の一人が隼人たちを見つけ、小走りで近づいてきた。

 その衛兵の顔には混乱が見え隠れしていたが、ヴァルゴート・ナノスウォームの制御下にある様子はなかった。


 衛兵は小声で問いかけてきた。


「あなたたち、何をしている?ここは立ち入り禁止のはずだが……」


 隼人は周囲に注意を払いながら、焦る気持ちを押し殺し、同じく小声で答えた。


「……ここに脱出口がある。それを調べに来た」


 その言葉を聞いた衛兵は一瞬驚いたような顔を見せた。


「脱出口だと?そんな情報、どうしてあなたたちが……」


 隼人は少し語気を強め、小声ながらも真剣な口調で言った。


「今そんなことを話してる余裕はない。この状況で、外からの助けは期待できない。私たちがここから人々を救うために動くしかないんだ」


 衛兵は一瞬言葉を失い、玉座の背後に視線を送りながら逡巡している様子だった。

 明らかに動揺しているが、隼人の必死の訴えに心を揺さぶられたようだった。


「……わかった。ただ、私もこの状況では自分の行動に責任を取れるかわからないが……協力しよう」


 玉座の背後で手探りを続ける隼人たち。

 隼人の視界に、再びシステムの通知が浮かび上がった。


――「特殊素材で構成された構造物を検知。推定:隠し扉」――


 隼人はノアとリーシャ、協力している衛兵に向け、小声で伝えた。


「ここだ。隠し扉がある」


 衛兵が目を見開き、扉があると言われた壁に手を触れたが、何も感じ取れない様子だった。


「壁としか見えないぞ……本当にここに扉があるのか?」


 隼人は頷きながら言った。


「見た目や触り心地は壁そのものだ。だけど、特殊な金属で作られている。俺のシステムが間違いないって言ってる」


――「解析完了。扉の素材:高耐久合金。推定:通常の物理的手段での破壊は不可能」――


 その報告に、隼人は歯を食いしばりながら、心の中で苛立ちを感じた。


「……これ、壊して突破するのは無理か」


 ノアが不安そうに問いかけた。


「じゃあ、どうやって開けるの?何か仕掛けとかないの?」


 隼人はシステムの次の分析を待ちながら答えた。


「おそらく、この扉は普通の方法では開かない。仕掛けがあるはずだ」


――「制御システム解析開始」――


 隼人のシステムは扉の制御機構を解析し、その仕組みを明らかにした。


――「制御システム確認。開放条件:王族のDNA認証に基づく解放」――


 その報告を聞いて、隼人は眉をひそめた。


「……王族のDNAか」


 リーシャが驚いた声を漏らした。


「じゃあ、私たちには開けられないってこと?」


 隼人は歯を食いしばり、再びシステムに命令を送った。


「俺の承認で解放できないのか?要請してみてくれ」


――「承認要請送信中……承認不許可。アクセス拒否」――


 ノアが焦りを隠せない様子で尋ねた。


「どうするの?このままじゃ……」


 隼人はシステムに問いかけた。


「……強行突破は可能か?クラッキングしてでも開けられるか?」


――「命令受諾。クラッキングを開始します」――


 隼人のシステムは扉の制御システムに対する侵入を開始した。

 目に見えないシステム同士の戦いが始まり、隼人の視界にはリアルタイムで進行状況が表示されていく。


――「システム認証プロトコル解析中……制御システムの脆弱性を検知」――


 隼人は祈るような気持ちでシステムの進行を見守る。

 扉のシステムは高度な防護を施されているようで、侵入を試みるたびに複雑なエラーが返されてきた。


――「追加プロトコルを発見。王族認証データの暗号化を解除中……」――


 数秒後、進行状況が劇的に進み始めた。

 システムがセキュリティの一部を突破し、徐々に扉の制御を掌握していく。


――「王族認証データに類似の鍵を生成中……システムアクセス権を確保」――


 隼人は短く息を吐き出しながら、小声で告げた。


「もう少しだ……持ちこたえてくれ」


――「クラッキング成功。制御システムの掌握を確認。扉の解放が可能になりました」――


 その報告に、隼人は安堵の表情を浮かべた。


 隠し扉を開放する準備が整ったものの、隼人はすぐに行動を起こさなかった。

 視界には扉を制御したシステムの報告が浮かんでいるが、目の前には解決すべきもう一つの問題が立ちはだかっていた。


「……この扉を開けるだけじゃ、意味がない」


 隼人は独り言のように呟き、玉座の後ろに隠れるように控えている案内役の衛兵に顔を向けた。


「ちょっと話がある。時間がないけど、聞いてくれ」


 衛兵は緊張した面持ちで頷いた。


「わかった。話してくれ」


 隼人は視線を巡らせながら言葉を選び、小声で慎重に説明を始めた。


「この扉を開けた瞬間、操られている連中が一気に動き出す可能性が高い。扉を開けること自体が合図になるかもしれないんだ」


 衛兵が困惑しながらも問いかける。


「なら、どうすればいい?人々を安全に脱出させるには?」


 隼人は短く息を吐き、意を決したように続けた。


「俺が囮になる。出入り口にいる操られている警備兵に近づいて、注意を引く。その間にあなたは、扉を通じて人々を安全に避難させてくれ」


 衛兵の目が見開かれる。


「囮って……お前一人でどうやって?」


 隼人は落ち着いた声で答えた。


「俺には逃げる方法がある。心配しないでくれ。俺は必ずここを切り抜ける」


 ノアが不安げな顔で口を開いた。


「ハヤト、それって危険すぎない?私たちも一緒に殿を務める!」


 リーシャも隼人に詰め寄る。


「そうよ、ハヤト!私たちだって戦えるんだから、一人で背負わないで!」


 隼人は二人に向き直り、その瞳に真剣な光を宿して言った。


「違うんだ。君たちはここにいる人たちを守る役目を果たしてほしい。もし君たちがここで俺と一緒に殿を務めたら、逃げるときに一緒に捕まる可能性が高くなる。俺一人なら、どんな状況でも退ける方法がある」


 ノアが歯を噛みしめ、迷いを浮かべながらも言った。


「……でも、ハヤト……」


 隼人はノアの肩に手を置き、優しく微笑んだ。


「大丈夫だ。俺を信じてくれ。それに、君たちはここにいる人たちをサポートする役目がある。それが今、一番大事なことなんだ」


 リーシャも隼人の言葉に心を揺さぶられながら、小さく頷いた。


「……わかった。でも、無茶はしないで」


 隼人は再び衛兵に目を向けた。


「俺が動き出したら、扉を開放する。君が扉を案内してみんなを脱出口に導いてくれ。ノアとリーシャもその集団に加わって、戦闘が起きた場合はサポートしてほしい」


 衛兵は深く息を吸い込み、覚悟を決めたように頷いた。


「了解だ。君を信じる。扉が開いたら、全力で人々を脱出させる」


 隼人は最後に玉座の後ろの扉を一瞥し、静かに呟いた。


「よし……行こう」


 場内に迫る危険が刻一刻と増す中、隼人は自ら囮になる覚悟を固め、次の行動へと移る準備を整えた。

 全員の無事な脱出のため、彼は一歩前へと踏み出した。

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