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王城の入城と不穏な気配

 王都での日々を楽しみながら、祭りの賑わいに心を躍らせていた隼人たちは、ついに待ちに待った「星降りの大祭」の本祝を迎えた。

 この日は、王城が一般開放され、普段では決して見ることのできない内部に入れる貴重な日だ。


 早朝、隼人たちは他の誰よりも早く準備を整え、王城へと向かうことにした。


「今日はやっと王城に入れるんだね!」


 リーシャは期待に胸を膨らませながら足早に歩いた。


「うん、古代の技術を実際に目にできる機会なんて、そうそうないからね」


 ノアも楽しそうに微笑んだ。

 隼人は二人の後を追いながら、自身も少し胸を高鳴らせていた。


「どんな技術が使われているのか、直接確認できるのは貴重な経験だな。それに、例のロボットも気になるし」


 三人は王城へ向かう途中、早朝にも関わらず、通りがかる人々の多くが同じ方向に向かっていることに気づく。


「これ、絶対に混むよね……」


 リーシャが苦笑しながら漏らした。


「確かに、こんなに多くの人が向かってるとなると、相当な行列になりそうだ」


 隼人も同意するように頷いた。


 やがて王城の正門前に到着すると、そこにはすでに膨大な数の人々が集まっていた。

 色とりどりの衣装に身を包んだ人々が楽しげに話し合いながら列を作り、正門の周囲はまるで一つの祭りのような活気に満ち溢れていた。


「……これ、すごいな」


 隼人が目を見張りながら感嘆の声を漏らした。


「うわぁ、本当にたくさんの人が来てるんだね!」


 ノアも驚いた表情を浮かべた。


「まあ、10年に一度の祭りの本番だし、これだけ人が集まるのも当然よね」


 リーシャが納得したように頷いた。


 王城の大きな門には豪華な装飾が施され、門の前には衛兵たちが整然と配置されていた。

 その周囲では、何やら機械的な装置が動いているのが見える。

 隼人たちはその装置に目を奪われたが、細部まではまだ確認できない。


「中に入れば、もっといろいろ見られるだろうね」


 隼人は呟いた。


「うん、どんなロボットがいるのか早く見たいな」


 リーシャが期待に満ちた声で言い、ノアもそれに同意するように笑みを浮かべた。


 祭りの本番、そして王城への入場。隼人たちの期待は高まり、その興奮は周囲の熱気とともにさらに大きくなっていくのだった。


 ついに、王城の正門が開放された。

 長い行列がゆっくりと進み、隼人たちもその流れに乗って城内へと足を踏み入れる。

 目の前には、巨大な正門がその威厳を示すようにそびえ立ち、周囲には兵士たちとともに配置された機械的な装置やロボットの姿がちらほらと見受けられた。


 リーシャは目を輝かせながら周囲を見回し、小声で興奮を隠せない様子で話しかけた。


「見て見て、あそこ!ロボットが門の警備をしてるわよ!」


 彼女が指さす先には、人型のロボットが兵士たちと並んで立っており、来訪者の列を冷静に監視している様子があった。

 その動きは滑らかで無駄がなく、時折、訪問者に視線を向けているようだった。


「本当だ……こうして見ると、かなり高度な技術が使われているみたいだな」


 隼人は感心しつつ、そのロボットの動きを観察しようとしたが、列が流れるため長く立ち止まることはできなかった。

 一方、隼人の視界にロボットが入るたび、彼のシステムが淡々とメッセージを表示していた。


――「ロボット型ユニット確認。警備型モデル。危険性:無し」――


 その冷静な分析結果に隼人は軽く息をつくが、こうした技術がまだ完全には理解できないことに小さな不安を覚える。

 それでも、王城内のロボットが現状では脅威を持たないと確認されるたび、少しずつ安心感が広がっていった。


 城内に足を踏み入れると、広々とした中庭が広がっていた。

 美しく整えられた植栽の間を、二脚で歩行する作業用ロボットが忙しそうに動き回っている。

 ロボットたちは、中庭の手入れをしているようで、草を刈り込んだり、植木を整えたりしていた。


「おお、中庭にもロボットがいるなんて……これはすごいな」


 隼人が驚きを隠せずに呟き、リーシャも興味津々で言った。

 

「なんか、どのロボットも用途ごとに形が違うのね。さっきの警備用のロボットとはまた別物だわ」

 

「本当に人と機械が共存してるって感じだね……これは古代の技術が今でもしっかり生きてる証拠だね」


 ノアが感慨深げに呟いた。


――「作業型ロボット確認。環境維持モデル。危険性:無し」――


 隼人のシステムが再び静かに報告を出す。

 人々の流れに従って歩みを進めながらも、隼人は自分の中で少しずつ警戒を緩めていくのを感じていた。


 さらに進むと、一部の通路が通行止めになっている箇所が見られ、そこには兵士とともに、また別の形状をしたロボットが立っていた。

 これはどうやら兵士の補助を行うタイプらしく、通行者に対して簡単な案内を行ったり、装置を操作してセキュリティを確認しているようだった。


「これ、普通にすごいわね……いろんな場所で活躍してる」


 リーシャが感心して呟き、隼人も小さく頷いた。


「うん、これだけのロボットが動いてるのを見ると、王城全体が一つの巨大なシステムみたいに見えるな」


「でも、注視してると後ろから人に押されちゃうね」


 ノアが少し笑いながら列の流れを気にした。


――「補助型ロボット確認。兵士支援モデル。危険性:無し」――


 隼人のシステムは冷静に状況を把握し続けていた。

 だが、その背後では、古代技術の一端に触れるたびに、彼らの中にわずかな緊張感と興奮が交錯していた。


 王城内の散策はまだ始まったばかりだが、その一歩一歩が新しい発見と驚きに満ちていた。


 王城内の案内はさらに続き、豪奢な回廊や古代の技術で彩られた展示を見学した隼人たちは、ついに「王座の間」に到着した。

 この場所は王都の中心に位置し、王族が公式行事や謁見に用いる荘厳な空間だった。


 ノアは天井まで届く広大な空間を見上げながら、感嘆の声を漏らした。


「これが王座の間……すごいね」


 隼人は周囲を見渡しながら、壁や柱の装飾に目を留めた。


「豪華だけど、それだけじゃないな。どこかしら機械的な雰囲気もある」


 リーシャは興味津々で壁に近づき、細かい彫刻や模様を指差した。


「ねえ、この壁や柱、ただの装飾じゃなくて何か意味があるんじゃない?」


 隼人たちがそれぞれ王座の間の壮麗さに感嘆していると、突然、部屋の窓がゆっくりと閉じ始めた。

 光が遮断され、徐々に暗くなる部屋に、来訪者たちのざわめきが広がる。


 リーシャは驚きながら辺りを見回した。


「え、何これ?」


 ノアも少し戸惑った表情で隼人に視線を向けた。


「何か始まるのかな?」


 完全に暗闇となった瞬間、部屋の壁と天井が一斉に光り始めた。

 星のような小さな光が無数に浮かび上がり、まるでプラネタリウムのような壮大な光景が広がる。


 ノアはその光景に目を奪われ、感動で言葉を詰まらせた。


「うわぁ……これは……」


 リーシャも驚きと感激が入り混じった声を漏らした。


「すごい……こんなものが見られるなんて……」


 隼人は目を見張りながら、小さく呟いた。


「プラネタリウム……って、こっちの世界でもあるんだな」


 その言葉に、リーシャが振り向いて疑問を口にした。


「プラネタリウム?それって何?」


 その時、部屋の天井に浮かんだ星々が流れ始めた。

 光の粒が美しく軌跡を描き、見る者をさらに引き込むようだった。


 低く響く声でアナウンスが流れた。


「この光景は、古代の技術により王都の夜空に広がる星々を模したものです。祭りの夜、空を見上げれば、同じような光景をお楽しみいただけます」


 ノアはその説明を聞きながら、壁一面に映し出された星空の美しさに再び目を奪われた。


「こんな光景が夜に見られるなんて……やっぱり王都は特別な場所なんだね」


 リーシャも感嘆しながら頷いた。


「本当に。ここまで技術が進んでるなんて、想像以上だわ」


 隼人は天井の光景を見上げながら、ふと何かを考えるように黙り込んだ。

 王城での見学はただの観光に終わらず、古代技術の奥深さとその影響を隼人たちに改めて感じさせていた。


 王座の間に広がる星々の光景に目を奪われていた隼人たち。しかし、その穏やかな時間は唐突に不穏な空気に包まれ始める。


 隼人の視界に、突然システムの警告メッセージが浮かび上がった。


――「特殊な信号を検知。過去データと照合中……」――


 そのメッセージを見た隼人は思わず眉をひそめる。

 静かに深呼吸をし、周囲の様子をさりげなく観察し始めた。

 ノアとリーシャは気づいていない様子で、まだプラネタリウムのような美しい光景を見上げている。


 リーシャが隼人に声をかけた。


「ハヤト?どうかしたの?」


 隼人は笑顔を見せながら誤魔化した。


「いや……なんでもない。ただ、ちょっと様子を見てるだけだ」


――「照合完了。データ一致:ヴァルゴート・ナノスウォームの信号と一致しました」――


 その表示に、隼人の中で警戒心が一気に高まった。

 あの「首領格のイノシシ」との戦闘時に遭遇した厄介な敵。

 その名が再び目の前に浮かび上がるとは予想外だった。


――「現在の本体は未確認。検知対象:制御された生命体」――


 さらにシステムは続けて警告を出す。

 検知された「制御された生命体」の存在が、隼人の視界にオーバーレイ表示され始めた。

 それは、星々の美しい光景を背景に静かに立つ王座の間の警備兵たちだった。


――「対象:王座の間警備兵。現在、制御状態下」――


 隼人は内心で歯を食いしばりながら、目立たぬようにリーシャとノアのそばに近づいた。

 低い声で二人に伝える。


「……おい、少しおかしいかもしれない。気をつけてくれ」


 ノアが不安げに尋ねた。


「え?どういうこと?」


 隼人は慎重に答えた。


「まだ断定はできないけど……警備兵たちが操られている可能性がある」


 その時、警備兵たちが突如として一斉に動き始めた。

 彼らは出入り口の扉へと向かい、まるで命令を受けたかのように機械的な動作で扉を閉め始めた。

 重い音が響き渡り、王座の間の全ての出口が完全に封鎖された。


 リーシャが驚いて呟いた。


「……何これ……閉じ込められたの?」


 周囲の他の来訪者たちも状況の異変に気づき始め、ざわざわと騒ぎ出す。


 案内役の衛兵が声を張り上げた。


「落ち着いてください!何か問題が発生したようです!」


 だが、その衛兵さえも警備兵たちの不自然な行動に明らかな違和感を抱いている様子だった。


――「警告:制御下の警備兵による出口封鎖を確認。危険度:高」――


 隼人のシステムがさらに警戒を強め、状況の深刻さを告げていた。

 隼人はゆっくりと周囲を見渡しながら、次の行動をどうするべきかを考え始める。


 ノアが不安げな表情で隼人に問いかけた。


「ハヤト……これ、本当にヤバいんじゃない?」


 隼人は小さく頷いた。


「わかってる。でも、まだ何が起こるかはっきりしてない。今は様子を見るしかない」


 彼らは星々の美しい光景に隠された異変の中で、危険の兆候が確実に近づいていることを感じ取っていた。

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