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王都での拠点

 不動産屋の案内に従い、隼人たちはついに賃貸物件の前に到着した。

 その建物は少し古びてはいるが、どこか温かみのある外観で、立派な小さな庭がついていた。

 庭には小さな木が植えられ、花壇もあり、長旅の疲れを癒やしてくれそうな落ち着いた空間だった。

 王都の住宅街にしては静かで、隠れ家のような雰囲気が隼人たちの気に入った。


 隼人たちは賃貸物件の外観と庭を確認し終えると、早速建物の内部に足を踏み入れた。

 古びた木製の扉を開けると、室内は広々としており、王都の住宅街にしては意外なほどの広さがあった。

 少し埃っぽい空気が漂っているが、居住性の高い部屋がいくつも揃っている。


 ノアが周囲を見渡し、微笑んだ。


「少し埃っぽいけど……この広さは嬉しいわね」


 玄関から続く廊下を進むと、最初に大きなリビングルームがあり、簡単なソファとテーブルが配置されていた。

 窓からは庭の景色が見え、昼間は自然光がたっぷり差し込む配置になっている。

 隼人たちはそれぞれ、ソファやテーブルの位置を確認しながら、新しい拠点として使うには十分だと感じていた。


「広々していて落ち着くな。王都でこの広さを確保できるとは思っていなかったよ」


 隼人が満足げに呟いた。


 さらに奥にはキッチンがあり、調理器具や棚も一通り揃っている。

 清潔ではあるものの、久しく使われていなかったのか、少しだけ手入れが必要そうだ。


「ここなら料理も楽しめそうね。しばらく滞在するなら、自炊も悪くなさそう」


 リーシャがキッチンを見ながら楽しそうに話す。

 

 そして各自が使える4部屋があることも確認した。

 広さはまちまちだが、最低限の家具が揃っていて、衣類をしまうクローゼットも備わっていた。


 不動産屋は建物の内部を一通り確認させた後、改めて隼人たちに条件を説明した。


 「こちらの物件は、最低賃貸期間が100日となります。その後は10日単位での延長が可能です。賃貸料は、10日で金貨1枚になります」


 隼人たちは以前の報酬もあり、100日分の家賃を支払う余裕は十分にあった。

 ノアもリーシャも頷き、隼人が代表して契約を進めることに決めた。


「それで問題ありません。まずは100日分でお願いします」


 不動産屋は契約書を取り出し、隼人に差し出した。


 「それでは、お名前をこちらにご記入いただき、契約金として金貨10枚を頂戴いたします」


 隼人は契約書にサインし、金貨10枚を手渡した。

 不動産屋は丁寧に一礼し、隼人たちが新たな拠点に満足している様子を確認すると、建物を後にした。


 室内の埃を払いながら、隼人たちは早速、この新しい家でどのように過ごしていくか話し合い始めた。


 隼人たちは一通り家の中を見回した後、思いのほか埃が積もっていることに気がついた。

 家具や床にうっすらと積もった埃を払おうとしたが、手元に掃除道具がないことに気づき、隼人は掃除道具を買いに行くついでに町を見て回ることを提案した。


「掃除道具を買いがてら、町の様子を見て回らないか?長期間滞在するし、店を把握しておくのもいいと思うんだ」


 ノアとリーシャもその提案に同意し、二人とも嬉しそうに頷いた。


「そうね。少しでも町を知っておけば、生活も楽になるわね」


 ノアが言うと、リーシャも目を輝かせながら言った。


「せっかくだし、いろんなお店も見て回りたいわ」


 隼人たちは街路に出て、王都の雰囲気を楽しみながら歩き始めた。

 町は美しく整備されており、石畳の道が続く通りには、さまざまな店が軒を連ねていた。

 薬屋や食材店、そして冒険者向けの装備品を売る店などが次々と現れ、どこも祭りの準備で賑わっている。


 三人がそれぞれ興味深そうに店を眺めているうちに、町の中心部まで来たようで、やがて大きな開けた場所に出た。

 目の前にそびえ立つのは、壮大な王城だった。白亜の壁が陽光に輝き、まるで王都の威厳を象徴するかのように堂々としていた。


「すごい……これが王城か」


 隼人がつぶやきながらその姿を見上げると、ノアも感嘆の声を上げた。


「本当に大きいわね。王都に来た実感が湧いてくるわ」


 王城の正門には大きな石橋がかかっており、まるで天然の要塞のように周囲には幅広い水路が城を囲むように流れていた。

 水は透き通り、太陽の光でキラキラと輝きながら流れている。

 橋を渡らない限り、王城へとたどり着くことはできないようになっていた。


「まるでおとぎ話に出てくるお城みたい。あんな立派な橋を渡れるのは一部の人だけなんでしょうね」


 リーシャが橋を見つめながら話すと、ノアも同意するように頷いた。

 

「きっと王族や特別な人だけが通れるんでしょうね。私たちみたいな冒険者は、この景色を遠くから眺めるのが関の山ね」


 王城の重厚な門を警備する衛兵たちが目に入り、城へ近づく人々に目を光らせているのが見て取れた。

 隼人たちは城を遠くから見上げるだけで十分満足し、また町を見て回りつつ掃除道具を探しに行くことにした。


「じゃあ、掃除道具を買える店を探しに行こうか」


 隼人が提案し、三人は再び街中の探索を再開した。


 隼人たちは掃除道具や食料、生活用品を揃えるために町を歩き回り、ようやく必要な物資を全て買い揃えることができた。

 掃除道具一式や長期滞在に必要な食料、日用品など、家での生活に欠かせない物ばかりだ。

 荷物は少し重いが、三人はそれぞれ持ち分を分け合い、物資を抱えて拠点となる家に戻った。


「ここでしっかりと暮らしていくためにも、掃除は必須だな」


 家に戻ると、隼人は少し疲れた様子で額の汗を拭いながらも意気込んだ。

 

「ええ、埃っぽくてこのままじゃ休むどころか落ち着けないわ」


 ノアも同意し、リーシャも張り切って掃除を始めた。


「さあ、まずは徹底的に綺麗にしましょう!」


 それぞれが手分けして、リビングやキッチン、寝室などを隅々まで掃除し始めた。

 掃除道具を駆使してホコリを払い、古びた床や家具を綺麗に拭き上げていく。

 しばらくの間、三人は黙々と掃除に励んでいたが、隼人がふと床を磨きながら「よいしょっと、だいぶ綺麗になってきたな」と独り言を呟いた。


 数時間が経ち、ようやく家全体が隼人たちが落ち着いて暮らせる場所へと変わりつつあった。

 だが掃除に集中しすぎたせいか、気づけば全員お腹が空いてしまっている。


「さっき外で買ってきたもので、少し休憩にしない?」


 ノアがふと提案し、三人はキッチンに集まった。

 袋から取り出したのは焼きたてのパンやハム、果物などの簡単な食べ物で、腹ごしらえには十分だ。

 軽く食べて腹が落ち着くと、リーシャがほっとした表情で話した。


「本当にいい場所ね、ここ。家も広いし、町も賑やかで」

「ああ、王都に長く滞在するには理想的な場所だ」


 隼人も頷きながら満足げに言葉を返したが、ふとリーシャが真剣な表情でこう言い添えた。


「ただ……正門の行列に並ぶのはもう勘弁してほしいわね。外に出るたびにあの行列はちょっとね……」 

「そうだな。王都の外に出る必要がある時は、できるだけ他の手段を考えるか、どうにかして行列を避けたいところだな」


 隼人が苦笑しつつ言うと、ノアが賛同しながら提案する。


「祭りもすぐだから、しばらくは外に出る必要もないかもね。せっかくだし、ギルドで王都内で完結する仕事があるか確認してみようか」

「それがいい。王都内で受けられる依頼があれば、それをこなしていこう。せっかく大祭の時期に来たんだし、しばらくはここで落ち着いて過ごせるといいな」


隼人たちは一息つき、新しい拠点での生活を充実させつつ、王都での新たな日々を楽しもうという思いを共有していた。

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