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闇の存在と古代の対抗手段

 バステオン・アークが空を滑るように進む中、ノアたちはゆったりとした自由時間を楽しんでいた。

 ブリッジの窓から見える広大な空と雲海は美しく、旅の疲れも和らいでいくようだったが、ふとノアの胸には、ある疑問がよぎった。

 先日、大洞窟で遭遇した「闇の存在」のことだ。


 ノアはフロリアに向き直り、慎重に尋ねた。


 「そういえば、フロリアさん。私たちが大洞窟で戦った、あの“闇の存在”って、一体何だったのでしょうか?私たちの攻撃はほとんど効かなかったし……」


 フロリアは静かにノアの言葉を聞き、しばらく考え込んだ後、彼女の視線を正面から受け止めた。

 そして、慎重に言葉を選びながら語り始めた。


「あの存在……。実は私たち『恒星防衛軍』にとっても“未知の敵”です。彼らは、突如として現れる謎の存在で、物理的な攻撃がほとんど通用しない“闇”そのものでした。我々が敵として戦ったことがあるのですが、実態が不明な部分が多く、記録も断片的で、その謎は解明されないままです」


 フロリアの話に、隼人とリーシャも驚きの表情を浮かべ、再びあの戦いの恐怖を思い出した。


「だからこそ、私たちにとっても深い畏怖の対象となっていたのです。強力な武器で対抗しても、彼らの本質はまるで掴めず、あらゆる手段を尽くしても完全には対抗できない存在でした」


 フロリアの声にはどこか、あの存在に対する敬意と畏怖がにじんでいた。


 ノアはしばらく言葉を失い、遠くの景色を見つめながら静かに息を整えた。


 「本当に……私たちが戦ったあの闇の存在は一体なんだったんだろう。私を執拗に狙ってきてたし……」

 

 しばらくの沈黙の後、リーシャは以前の戦いを思い出し、もう一つの疑問を抱いた。


 「でも、フロリアさん、あなたはあの闇の存在を倒せましたよね?どうやって対抗できたんですか?」


 フロリアは微笑みながら、説明を始めた。


 「あの時、私が使用したのは『セラフィム・ボウ』という高出力の光射撃武器です。光のエネルギーを圧縮し、高密度で照射することで、あの闇の存在に対抗する力を発揮できました」


 隼人とリーシャはその説明に興味を引かれ、さらに耳を傾けた。

 ルクシアも話に加わり、補足を始める。


「『セラフィム・ボウ』は非常に特別な武器で、その出力は通常のエネルギー兵器の比ではありません。光の照射によって、闇の存在にもある程度の効果が認められています。しかし、この武器はかなり大量のエネルギー源が必要です」


 隼人はそれを聞き、希望が湧いたような表情で呟いた。


 「なるほど、光が闇に対抗できるってことか……でも、そんな武器があるなら、『恒星防衛軍』が闇の存在に負けることはなかったんじゃないですか?」


 ルクシア代わり、フロリアが続けて説明した。


「確かに理屈としてはその通りです。しかし、『セラフィム・ボウ』には大きな制約があります。あの武器はエネルギーを極端に消費するため、短時間しか稼働させられず、連射もできないのです。さらに、あまりにも強力なため量産も難しい。決め手にはならず、総力戦においては充分な武器とは言えませんでした」


 ルクシアとフロリアの説明に、隼人たちはその武器の強力さとともに、その代償の大きさを思い知らされた。

 単純に「強力な武器」があれば戦争に勝てるわけではない。

 闇の存在はそれほどまでに手ごわい敵であり、恒星防衛軍ですら容易には対抗できないものだったのだ。


「だからこそ、あの闇の存在は単なる敵ではなく、我々にとっても未知であり、手ごわい存在でした。力だけで制圧できる相手ではない、まさに闇そのものであり、今も私たちにとって最大の謎なのです」


 ルクシアの声には、あの存在に対する敬意と畏怖が感じられ、隼人たちは再び彼らが戦う相手の恐ろしさを改めて実感した。


 闇の存在について語り合う中で、隼人はふと以前見つけた神殿のことが頭をよぎり、話題を切り替えた。


「実は……バステオン・アークが眠っていた場所の近くで、奇妙な神殿を見つけたんです。その神殿には『闇はただの無ではない。すべてを抱き、すべてを飲み込む“始まり”のゆりかごなり』と書かれた古代文字が残されていました」


 フロリアとルクシアは興味深げに耳を傾け、真剣な表情を浮かべて隼人の話を聞いていた。


「さらに、その神殿の奥には用途不明の円形の金属構造物がありました。見たことのない素材でできていて、バステオン・アークの技術とも異なるものでした。あの闇の存在に何か関係があるのかと、つい思ってしまって……」


 隼人が説明を続けると、ルクシアが慎重に口を開いた。


 「ふむ……先日、周囲をスキャンした際には特に異常は検出されませんでしたが、その場所は確かに調査の価値があるかもしれませんね」


 続けてルクシアは、隼人たちに尋ねた。


 「その円形の構造物について、他に何か特別な情報や手がかりはありませんか?」


 隼人たちは互いに顔を見合わせたが、あの時はそれ以上の情報を得られるような状況ではなかった。

 隼人が残念そうに首を振ると、ルクシアは考え込むようにしてから、提案をした。


「わかりました。皆様を王都にお送りした後、私たちでその場所を再度調査いたしましょう。もしよろしければ、その場所を教えていただけますか?」


 リーシャが自分の持っていた地図を広げ、神殿の位置を指差した。


 「ここ、このダンジョンの奥よ。隠し扉を通ってさらに奥に進んだ先に、その神殿があったの」


 ルクシアは地図をホログラムに記録し、慎重に頷いた。


 「ありがとうございます。これで場所の特定ができました。特殊な探査と解析を行い、皆様の手がかりに基づき、新たな情報を提供できればと思います」


 ノアも隼人も、ルクシアとフロリアの協力に感謝の意を示し、彼らと共に闇の存在や神殿の謎を解き明かす日が訪れることを期待した。


 闇の存在の話をしていると、バステオン・アークが順調に王都へ向かう航路を進んでいる中、ブリッジの窓から見える景色が徐々に変わり始めた。

 視界の端から地平線が消え、遠くに果てしない青が広がっていく。

 気づけば、船の周囲には大海原がどこまでも広がっていた。


 ノアが窓の外に目を向け、驚きと興奮が入り混じった表情を浮かべる。


「すごい……海がこんなに広がってるなんて。こんな風に海を間近で見たの、私初めてかもしれない」


 リーシャもその光景に目を奪われていた。


 「私もよ、こんなに広大で綺麗な海……夢みたい」


 その美しい光景に魅了されていた二人だったが、ふと海面にうっすらと影が見えた。

 その影はどんどん近づいてくるように見え、やがて巨大な背びれが水面を切り裂きながら浮かび上がる。


「な、なんか……海にものすごく大きな何かがいる!」


 リーシャが驚きの声を上げた瞬間、その巨大な生物がバステオン・アークの近くをすっと通り過ぎていくのが見えた。

 その背びれは波間からひと際高くそびえ、悠然とした動きが迫力を感じさせる。


 ノアも目を見開いたまま息をのんだ。


「……あれって一体、何なの?」


 リーシャは少し緊張した様子で口を開く。


「確か、海には“リヴァイアサン”っていう伝説の巨大生物がいるって話を聞いたことがあるの。昔からこの辺りの海を守ってる守護者みたいな存在だとか」


「そんなのが本当にいるんだな……」


 隼人も、目の前をゆっくりと進むその巨大な影を見つめながら呟く。

 彼もまた初めて目にするその存在の圧倒的なスケールに圧倒されていた。


 しばらくその圧巻の光景を見守っていたが、ルクシアが冷静な口調で状況を報告する。


「現在、順調に王都方面へと航行中です。この海を越えれば、間もなく目的地への到着予定地点に近づくでしょう」


 ノアとリーシャは、まだその広大な海と未知の生物の記憶が残る中でうなずき、やがてバステオン・アークが目指す王都へと再び心を向けるのだった。

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