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バステオン・アーク、王都へ向け発進

 準備が整い、ついに王都への旅立ちの日がやってきた。

 隼人たちは屋敷の玄関に立つと、ノアの母ミレイとカイエンが見送りに出てきてくれた。

 ミレイはどこか寂しそうな表情を浮かべているが、娘を信じる気持ちがその瞳に宿っていた。


「気をつけて行ってくるのよ。無理をしないで、危なくなったらすぐに戻ってくるのよ」


 ミレイが優しくノアの肩に手を置き、声に温かな愛情を込めて告げる。

 ノアは少し頬を紅らめながらも母の手を握り返した。


「ありがとう、お母さん。ちゃんと準備もしたし、きっと大丈夫よ。また帰ってくるから心配しないで」


 ノアが微笑むと、ミレイも安心したように頷き、軽く目元を拭って娘を見つめた。


 カイエンは懐から一通の封書を取り出し、隼人に手渡す。


「これは王都にいる私の知人への紹介状だ。彼は信頼できる人間で、きっと力になってくれるだろう。王都には珍しい魔導具も多く、君たちが探している魔導具についても手がかりが得られるかもしれない」


 カイエンが封書を隼人に差し出し、隼人は丁重に受け取り、頭を下げて礼を言った。


「ありがとうございます、カイエンさん。王都に着いたら、この紹介状を役立てさせていただきます」


 隼人がしっかりとした声で礼を述べると、カイエンも頼もしい若者たちを見守るように微笑んだ。


 屋敷を後にし、隼人たちは町の門を目指して歩き出した。

 まだ早朝だが、町の人々はすでに賑わいを見せており、復興の進み具合がうかがえる。

 門の近くに差し掛かったとき、ちょうど町の通りを歩いていたエディとフィオナに出くわした。


「おお、久しぶりだな。元気してたか?」


 エディが笑顔で手を振りながら近づいてくる。その視線は隼人たちの大きな荷物に留まり、少し驚いた表情を見せた。


「ふむ、それだけの荷物を背負ってるってことは、どこかへ行くのか?」


 隼人はエディの問いに微笑んで答えた。


「ええ、今から王都に向かうところです。長い旅になりそうだけど、きっと新しい発見が待っていると思います」


 隼人の言葉に、エディは真剣な表情で頷き、再びその目に冒険者の鋭い輝きを宿らせた。


「そうか、王都か。俺たちも、もう少ししたらこの町を出て、新しい仕事を探しに行く予定なんだ。復興も進んでるし、そろそろ俺たちの役目も終わりそうだからな」


 エディはどこか遠い目をしながら語り、その視線が次第に隼人たちへと戻った。


「お互い無事でな。またどこかで会おうぜ、次はそれぞれの成果を持ち寄って乾杯でもしようじゃないか」


 エディが手を差し出し、隼人が力強く握り返す。二人の間に固い握手が交わされ、共に歩んできた日々の記憶がよみがえる。


 フィオナも穏やかな笑顔で手を振り、「またどこかでね」と柔らかな声で挨拶をすると、エディと共に町の中へと姿を消した。


 隼人、ノア、リーシャは町での思い出と別れを胸に刻みながら、再びバステオン・アークに乗るために人員輸送艇が待っていた場所へ向かって歩き始めた。

 新たな冒険、そして王都で待ち受ける謎に挑むため、心を引き締め、出発の一歩を踏み出した。


 隼人たちは王都に向かうため、集合場所に到着した。

 静かな空間に、遠くから小さな振動音が近づいてきたかと思うと、空に浮かぶ黒い影が人員輸送艇の姿を現した。

 前回と同じように、輸送艇はふわりと滑るように地面へ降り立ち、搭乗口が静かに開かれる。


「よし、これでバステオン・アークに戻れるな」


 隼人が確認しながら頷き、三人は再び輸送艇に乗り込んだ。

 内部は相変わらず静かで、整然とした空間が広がっている。

 ノアとリーシャも席につき、輸送艇が軽く浮上すると、景色が瞬く間に流れ、バステオン・アークへと向かっていった。


 やがて、輸送艇がバステオン・アークの格納庫に到着し、扉が静かに開かれると、そこには前回と同じくフロリアが出迎えに立っていた。


「お帰りなさいませ、皆様。再びお迎えできて嬉しい限りです」


 フロリアが穏やかな笑顔で挨拶し、隼人たちはその笑顔に応えるように軽く頭を下げた。


「よろしくお願いします、フロリアさん」


 ノアが挨拶すると、フロリアは優雅に一礼し、「ブリッジへどうぞ」と案内を始めた。


 前回と同じく、ターボリフトに乗り、やがて広々としたブリッジに到着した。

 ブリッジの中央にはホログラムのディスプレイが浮かび、複雑な機器が静かに稼働している。

 その中央にルクシアが姿を現し、隼人たちを出迎えた。


「ようこそ、ノア様、ハヤト様、リーシャ様。これより目的地についての確認を行います。目的地は王都で間違いございませんか?」


 ルクシアが柔らかい口調で問いかけながら、ホログラムの地図を指し示すと、地図上に王都の位置が浮かび上がった。


「こちらの場所で間違いないでしょうか?」


 ルクシアが指し示した場所には、山や海を越えた位置に王都が輝くアイコンで示されている。

 ノアは少し地図を見つめ、うなずきながら確認した。


「はい、そこです。王都に向かう準備は整っていますか?」


 ルクシアはノアの確認に頷き、淡々とした表情で答えた。


 「はい、バステオン・アークはいつでも発進可能です。ご準備が整いましたら、すぐに王都への航路を開始いたします」


 隼人たちは互いに目配せをしながら、しっかりと準備が整っていることを確認し、新たな冒険に心を躍らせつつも、これから待ち受ける未知の王都への旅に胸を高鳴らせた。


 ブリッジで準備が整うと、ルクシアが改めて隼人たちに向き直り、冷静な口調で航行計画を説明し始めた。


「現在のバステオン・アークは完全起動には至っておりませんが、十分な機能を備えており、所要時間は一日もかからず王都まで到達可能です」


 その言葉に、隼人たちは顔を見合わせた。驚きの表情を浮かべつつも、その技術力に改めて感心する。


 ルクシアはさらに続ける。


 「ただし、王都の直近まで接近することは、ノア様の安全面でもリスクがあると判断いたしました。そこで、王都から徒歩でおよそ一日手前の地点までお運びいたします」


 ノアはその提案を静かに聞き、微笑んで頷いた。


 「それで大丈夫よ。ルクシア、ありがとう」


 ノアが了承の意を示すと、隼人とリーシャも安心した様子で頷き、それで問題ないことを伝えた。


 ルクシアは丁寧に一礼すると、「かしこまりました」と言って指示を始めた。


 「では、ノア様はこちらの艦長席へ。隼人様とリーシャ様は近くの座席へどうぞ」


 フロリアが隼人たちを席に案内しながら、出発準備に取り掛かった。


 艦長席に腰を下ろしたノアは、ブリッジ全体を見渡すことができる座席の視界に圧倒されながらも、しっかりと身を落ち着けた。

 隼人とリーシャもその隣の席に腰を落ち着け、二人もまたこの瞬間をしっかりと心に刻み込むように座り直した。


 ルクシアとフロリアは、それぞれの位置で次々と確認を進め、しなやかで正確な手順で操作を行っていく。

 静寂の中に響くわずかな操作音が緊張感を高め、彼らの前でホログラムの地図が拡大され、王都までの航路が鮮やかに表示された。


 ルクシアが、再度ブリッジに響くような声で指示を出した。


「航路設定完了。エネルギーシステム稼働確認。推進システム準備完了」


 フロリアも続けて、各システムの報告をする。


「各機関、稼働確認完了。艦内システム正常。進路クリア。全てのチェック完了しました。出航可能です、ノア様」


 その整然とした作業と緊張感のある雰囲気に、隼人たちは圧倒されながらもわくわくとした気持ちを抑えられなかった。


 しかし、ノアはわずかに緊張した表情を浮かべて隼人の方に目を向け、そっと小声で聞いた。


「こういうのって……何か言わなきゃダメなのかな?」


 隼人は思わず微笑みを浮かべ、ノアに軽く頷いて答えた。


「うん、こういう場面では、『バステオン・アーク発進』って言えば、きっとぴったりだよ」


 ノアはその言葉に安心しつつも、真剣な表情で前を向き直した。

 そして静かに息を整え、艦長席からしっかりとした声で宣言した。


「バステオン・アーク、発進してください!」


 その言葉と共に、バステオン・アークのエンジンが低く唸りを上げ始めた。

 静かな振動が艦全体に広がり、次第に浮上感が彼らを包み込む。

 視界がじわりと動き始め、ゆっくりと力強く進み始めるバステオン・アークの感触が彼らの体に伝わってきた。


 ブリッジの窓からは青く広がる空が視界に映り、遥か遠くに町の景色が小さく見え始める。

 隼人たちはその光景に言葉を失い、まるで新しい世界へと進む船の中で、胸の高鳴りを感じていた。

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