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町への帰還と報告。そして次の目的地へ

 隼人たちは、さらなる情報を求めて神殿内をくまなく探索したが、得られる情報も物もなく、神殿の謎を解き明かす糸口を掴むことはできなかった。

 異質な円形の金属構造物も、ただそこにあるだけで機能や用途は一切わからず、手応えがないまま調査を終えた。


「これ以上は無理みたいね……ここまで調べても、何も手がかりが残ってないなんて」


 ノアが深いため息をつき、どこか不満げに呟いた。


「一度戻ろう。また何か分かる日が来るかもしれないさ」


 隼人が仲間を励ましながら言うと、リーシャも静かに頷き、三人は足早に神殿を後にするため来た道を戻り始めた。


 静まり返る通路を慎重に歩き続け、長い階段を登り、ついに隠し扉のあった部屋にたどり着いた。

 薄暗い部屋には何の変化もなく、石の壁と苔むした床が彼らを出迎える。

 ノアたちは無言で扉のあった場所を通り過ぎ、ダンジョンの出口を目指そうとした。


 しかし、その瞬間、背後で何かが動くような微かな音が耳に届いた。


「……今の音、何?」


 リーシャが驚きながら振り返ると、隼人とノアも動きを止め、背後の壁を注視する。


 そこには、壊して開いていたはずの隠し扉が、まるで最初からそこに何もなかったかのように、完全に壁と同化していた。

 扉の跡形すらなく、境目すら見えない壁が、静かに彼らの視界に広がっている。


「扉が……消えた?」


 隼人が目を見開き、壁に手を触れるが、そこにはただひんやりと冷たい石があるだけだ。


「……私たちが通り過ぎた瞬間に、扉が元通りになったの?」


 ノアが混乱しながらも、その技術の奇妙さに言葉を失う。


 壁は完全に再生され、まるで隠し扉など存在しなかったかのように完璧に復元されている。

 ノアとリーシャもその異様な光景を見つめ、呆然と立ち尽くした。


「一体どうなってるの?誰もいないはずなのに、こんなことができるなんて……」


 リーシャが信じられない様子で、壁を触りながら言った。


「おそらく、この神殿にはまだ解明されていない高度な技術が備わっているんだろう。俺のシステムも、あの金属を解析できなかったし……」


 隼人も不安そうに壁を見つめる。

 神殿内部の設備が、この場所に近づく者を閉じ込めないよう、自動的に扉を閉じる仕組みがあるとしか思えなかった。


 三人は再び閉ざされてしまった隠し扉を見つめ、ここがいかに謎めいた場所であるかを改めて感じ取った。

 彼らはこの場所の謎を解き明かすことができなかったが、ダンジョンの奥に秘められた神秘と未知の技術に触れ、驚愕と警戒の念を抱いた。

 再び闇に包まれたこの部屋を背に、三人は無言でダンジョンの出口へと歩き出した。


 隼人たちは、謎に包まれた神殿と不思議な体験を胸に秘め、慎重にダンジョンを脱出した。

 冷たく湿った空気から解放され、外の明るい光が彼らを迎えると、三人は安堵の表情を浮かべ、町へと戻る道を歩き出した。


 町に着くと、いつもの喧騒が広がり、彼らの疲れた体に安心感を与えてくれる。

 隼人たちはカイエンの屋敷に向かい、重厚な門をくぐって中庭を進むと、執事のハーバートが玄関で出迎えてくれた。


「おかえりなさいませ、皆様。ご無事で何よりです」


 ハーバートが深々と一礼し、隼人たちを出迎えた。

 隼人たちは軽く挨拶を返し、ハーバートの案内で応接室に通された。


 応接室に入ると、そこにはノアの母親、ミレイとカイエンが待っていた。

 二人とも、どこか心配そうな表情を浮かべながら、ノアたちの帰りを出迎えた。


「ノア、無事で良かったわ。どんな冒険をしてきたの?」


 ミレイが安堵の表情で娘に語りかけた。


「いやぁ、どうなるか心配してたぞ」


 カイエンも微笑みながら、興味津々といった様子で隼人たちを見つめる。


 しかし、隼人たちはバステオン・アークやあの神殿や闇の像、異質な金属についての真実を話すわけにはいかなかった。

 隠された謎や技術は、簡単に口外できるものではないと三人とも理解していたからだ。


 彼らは町に戻る前、ダンジョンからの脱出後に口裏を合わせ、報告内容を整えていた。

 隼人がその打ち合わせ通りの話を始める。


「実は、近くのダンジョンで少し珍しいものを見つけましてね。隠し通路を発見したんです。奥に進んでみたら、思いがけずノアとリーシャの新しい魔導具が置かれていたんです」


 隼人が涼しい顔で話を続けると、ノアもリーシャも黙って頷き、話に合わせた。


「ええ、本当に驚きました。誰も通った形跡がなかったから、古い遺物のように置かれてたんです」


 ノアがさりげなく続ける。


「でもね、その隠し通路も不思議なんだ。私たちが脱出した瞬間、突然消えてしまったの。まるで幻だったみたいに」


 リーシャも言葉を添えて説明する。

 カイエンは目を丸くして驚きの声を漏らした。


「おお、それは珍しい発見だったな。隠し通路が突然消えるとは、不思議なこともあるもんだ。魔導具も見つけたとなれば、それも大収穫じゃないか」


「お母さんもそれを聞いて安心したわ。無事に戻ってきてくれたことが一番よ」


 ミレイが柔らかく微笑み、娘たちの無事に心から安堵している様子が見て取れる。


 隼人たちは一見普通の冒険を終えたように振る舞ったが、胸の中には誰にも話せない謎が幾重にも積み重なっていた。


 その後、ダンジョン探索の疲れを癒すため、隼人たちはカイエンの屋敷でしばしの休息を取った。

 石造りの隠し神殿や謎めいた金属構造物、封じられたような扉の数々を巡った一日が、重く体にのしかかっていた。

 夕食を済ませて部屋に戻ると、隼人は早々に眠りに落ち、ノアとリーシャもぐっすりと休息を取った。


 翌朝、日の光が差し込む中、隼人たちは集まり、次の行き先について話を始めた。

 復興も徐々に進み、町の喧騒もどこか落ち着きを取り戻している。

 隼人は、以前からの目的地である「王都」への旅を再開する時期が近づいていると感じていた。


「復興も落ち着いてきたし、そろそろ次の目的地に進んでもいいんじゃない?」


 リーシャが朝の静けさの中で口を開いた。


 隼人もその意見に頷きながら、考えていた目的を思い出す。


「そうだな。俺たちの目的地は王都だったし、『アルテウム・ギア』の件もあるし、そろそろ向かう頃かもしれない」


 隼人がしっかりとした表情で言葉にすると、リーシャも新たな旅に期待を寄せている様子だった。


 三人が王都行きを決めかけたその時、ふと応接室に姿を現したカイエンがその会話を耳にし、興味深げにこちらに歩み寄ってきた。


「なんだ、君たち。王都に向かう予定なのか?」


 カイエンが笑顔で問いかけると、隼人は驚きつつも丁寧に返答した。


「はい。王都には特殊な魔導具があると聞いたので、それを確認しに行こうと思っています」


 隼人の言葉にカイエンは少し眉を上げ、考え込むような表情を見せた。


「なるほど。確かに王都には珍しい魔導具もあるだろう。しかし、王都までの道のりは険しいぞ。この町から王都に向かうには山を二つ越えねばならんし、さらに王都は海に囲まれているから、海を越える手段も必要になる。大丈夫か?」


 カイエンが心配そうに言うと、隼人たちはその地形の厳しさを改めて思い知る。


「山を越え、海を越える必要があるのね……」


 ノアがその険しい道のりを思い浮かべ、少し不安げな表情を浮かべた。


「確かに、道中にはいくつか難所もありそうだ。でも、だからこそそこに価値があるんだろう。きっと新しい発見があるはずだ」


 隼人が微笑みながら前向きな意見を述べると、リーシャも隼人の言葉に背中を押され、意欲が湧いてきた。


「私たちの装備もだいぶ整ってきたし、今なら王都までの道も乗り越えられる気がする!」


 リーシャが力強く宣言し、三人は新たな決意を胸にした。


 カイエンはそんな隼人たちの姿を見て微笑み、少し考え込むようにしながらも、しっかりと見守るような視線を向けていた。


「君たちの覚悟はしっかりしているようだな。旅の途中で何か困ったことがあれば、いつでも助けを求めてくれて構わない。王都には私の知人もいるから、必要なら紹介状を用意しておこう」


 カイエンがそう言い、隼人たちに再び優しい笑顔を向けると、三人はその申し出に感謝し、新たな冒険への準備を始める決意を固めた。


 隼人たちは王都に向かうため、各自で持ち物や装備の準備を整えていた。

 長い旅路になると予想されるため、食糧や寝具なども見直し、しっかりと準備をしている。

 そんな時、ふとノアが何かを思い出したように顔を上げた。


「ハヤト、リーシャ、ルクシアたちに連絡した方がいいかな?」


 ノアが少し考え込むように言う。

 ルクシアたちの存在は、彼女たちにとって心強い仲間であると同時に、重要な支援者でもあった。


 隼人はその提案に頷き、柔らかく微笑んだ。


「確かに、場所も移動するわけだし、連絡しておいた方がいいかもな。彼らにも動向を知ってもらった方が安心だろう」


 隼人の言葉に、リーシャも同意するように頷き、ノアに促した。


 ノアは頷くと、ペンダントをそっと握りしめ、意識を集中させてルクシアたちへと念を送った。

 やがて、通信がつながり、ペンダントの中からルクシアの澄んだ声が響く。


「ご用でしょうか、ノア様」


 ルクシアの穏やかな声に、ノアは少し安心したような表情を浮かべた。


「ええ、ちょっと相談があって。私たち、これから王都に向かおうと思っているんだけど、あなたたちはどうする?」


 ノアが言うと、ペンダントの向こうで少しの間があった後、ルクシアがきっぱりとした声で返事をした。


「もちろん、私たちもご一緒いたします。ノア様にお仕えする立場として、どこへでもお供させていただきます」


 ルクシアの言葉にはしっかりとした信頼が感じられ、ノアは自然と微笑みを浮かべる。


「ありがとう。頼りにしてるわ」


 ノアが礼を言うと、ルクシアは一礼をするようにさらに続けた。


「では、王都はどのあたりに位置し、どのように移動する予定ですか?」


 ルクシアが詳細を尋ねてくると、ノアは少し考え、王都までの長い道のりについて説明を始めた。


「山を越えて、さらに港から船を使っていくことになると思うわ。徒歩と船での移動だから、何日もかかると思うの」


 ノアが話すと、ペンダントからルクシアの考え込むような声が聞こえた。


「徒歩と船で……それはかなりの時間と労力を要することになりますね。それでしたら、私たちのバステオン・アークで行くのはいかがでしょうか?」


 ルクシアの提案に、ノアは驚きつつもその意外な申し出に思わず顔を上げた。

 隼人とリーシャもルクシアの提案に耳を傾け、驚きの表情を浮かべている。


「バステオン・アークで……それって、空から一気に王都に?」


 ノアが確認するように尋ねると、ルクシアはペンダント越しに自信に満ちた声で返事をした。


「はい。バステオン・アークならば、王都までの移動も迅速かつ安全に行えます。ノア様のご意思に沿い、私たちの技術でお力添えさせていただきます」


 ノアはこの提案に驚きながらも、冒険の旅路がさらに心強いものになるのを感じ、隼人やリーシャに視線を送る。

 バステオン・アークでの移動が可能なら、王都までの困難な道のりも大幅に短縮できるだろう。


 隼人たちは互いに頷き合い、王都への新たな計画を胸に、バステオン・アークと共に空を目指す冒険へと心を馳せた。

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