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肩慣らしにダンジョンへ

 ノアとリーシャが魔導具の試しにすっかり夢中になり、気づけばすでに夜も遅くなっていた。

 その様子を見たフロリアが、一行に向けて提案した。


「ノア様、リーシャ様、すでに遅い時間です。今日はバステオン・アークでお休みになりませんか?」


 ノアが少し疲れた表情を浮かべながら呟いた。

 

「本当に楽しかったけど、もうそんな時間なのね……」


 リーシャも苦笑いしながら頷く。


「私たち、時間を忘れてはしゃいじゃったね」


 ノアとリーシャも、疲れを感じていたこともあり、その提案にうれしそうに頷いた。

 ブリッジで待機していた隼人とも合流し、フロリアが寝室まで全員を案内する。

 一行はバステオン・アーク内の快適な寝室で一夜を過ごすことにした。


 翌朝、ノアたちはルクシアとフロリアに挨拶をするためブリッジに向かい、居心地の良かった寝室と美味しかった食事の感想を伝えた。

 部屋も広々としており、疲れが取れるほど快適で、まるで地上にいるような一夜を過ごすことができたことをリーシャが伝える。


「寝室もすごく寝やすかったし、食事もとても美味しかったです!」


 リーシャが笑顔で話すと、ノアも同じように嬉しそうに頷く。

 ルクシアが静かに応答した。


「ご満足いただけたようで、私どもも大変うれしく思います」


 フロリアも微笑みながら、続けてノアたちに尋ねた。


「皆様、今日は地上にお戻りになりますか?」


 隼人、ノア、リーシャは少し顔を見合わせながら、今日の予定を考えるためにうなずき合った。


「はい、地上に戻ります。魔導具とか寝室のことも、色々と本当にありがとう。こんなに助けてもらえて、感謝しきれないくらいよ」


 ノアは微笑みながらも真剣な眼差しで二人に礼を言った。

 フロリアは一礼し、ノアの言葉を真摯に受け止めた後、穏やかな口調で返事をした。


「ノア様にお仕えでき、お役に立てたことを誇りに思います。皆様の安全と成長が私たちにとって何よりの喜びです」


 ノアはその言葉に少し照れながらも感謝の気持ちがさらに増し、頬を赤らめた。


 一方、ルクシアがブリッジの中央に現れ、その静謐な顔立ちに真剣な表情を浮かべてノアを見つめた。


「私共はノア様のご指示があるまでこの空域に待機し、いかなる時も支援に応じる準備を整えております。何かご指示がございましたら、どうぞお気軽にお申し付けください」


 ルクシアの真摯で、まるで揺るぎない決意がこもった言葉に、ノアは深く感じ入った。

 彼女はバステオン・アークという巨大な存在の支えを受けていること、その力を必要な時に借りられる立場にいることを改めて実感し、少し胸が熱くなった。


「分かりました!また来るから、よろしくね」


 ノアはフロリアとルクシアに向かってしっかりと目を合わせて微笑んだ。

 ルクシアは静かに頷き、フロリアも同様に穏やかな笑顔を浮かべた。


 その後、ノア、リーシャ、隼人の三人は、地上へ戻るための準備を整え、バステオン・アークを後にすることにした。

 フロリアの案内で、バステオン・アーク内の広々としたドッキングベイに向かって歩き出す。

 重厚なドアが開くと、行きに乗った人員輸送艇がスタンバイしており、一行を迎えるように待っていた。


「こちらが地上に戻るための輸送艇です」


 フロリアが丁寧に説明し、一礼して送り出す準備を整える。

 ノアたちは一礼で応え、輸送艇に乗り込んだ。


 フロリアの穏やかな微笑みが視界に残る中、扉が静かに閉まり、輸送艇はエンジンを始動させてゆっくりと浮上した。

 外からはフロリアが見送る姿が小さく見え、ノアは少し寂しげな表情で手を振りながら別れを告げた。


「また来ようとは思うけど、しばらくお別れね」


 ノアがつぶやくと、隼人も同じように窓越しにフロリアの姿を見つめた。


 輸送艇が軌道に乗り、バステオン・アークの方を見ると、輸送艇が発艦した巨大なドッキングベイが閉じていく。

  

 しばらくして目的地に到着すると、ノアたちは輸送艇からゆっくりと地上に降り立った。

 全員が輸送艇を降りると、自動で扉が閉まり、輸送艇がバステオン・アークへ戻っていく。


 輸送艇が見えなくなるくらい遠くに行くと、隼人が周囲を見渡しながら口を開いた。


「せっかくだから、この新しい装備を試してみないか?」


 その提案に、リーシャがにっこりと笑顔で応えた。


「実は、こんなこともあろうかと冒険者ギルドで町周辺のダンジョンの地図を入手しておいたの!ここから近くのダンジョンにも行けるみたいよ」


「さすがだな、リーシャ!準備万端だ」


 隼人が驚きと感謝の表情を浮かべると、ノアも地図をのぞき込みながら頷いた。


「それなら、この新しい魔導具も試せるし、ちょうどいいかもね」


 三人は早速、地図を頼りに現在地から一番近いダンジョンを目指して進んでいた。

 しばらく歩くと、目の前に巨大な岩壁が立ちはだかり、その中央にぽっかりと大きな穴が口を開けているのが見えた。


「ここがダンジョンの入口みたいね。思った以上に大きいわ……」


 リーシャが感嘆の声を上げながら、足を止めて入口を見上げる。


 ダンジョンの横には、冒険者ギルドが設置したと思われる木製の看板が立っており、その上部には「攻略済み」の印が刻まれている。

 リーシャが看板に近づき、表面に掘り込まれた文字を指でなぞりながら内容を確認した。


「このダンジョンは攻略済みで、一度は隅々まで探索されたってことだけど、定期的にエネミーが湧くから討伐依頼が続いているらしいよ」


 隼人が看板の説明に目を向けて頷いた。


「なるほど、攻略済みなら奥の道も整理されてるだろうし、敵もそんなに出てこないだろう。装備の肩慣らしにはぴったりだな」


「それなら安心して試せそうね。さぁ、せっかくだし、思い切り新装備の力を試してみましょう!」


 リーシャが盾を構え、意気込みを見せると、ノアも自分の杖を軽く握り直し、微笑んで頷いた。


「私もこの杖でどこまで戦えるか、試してみるわ」


 準備を整えた三人は、ダンジョンの奥へと歩みを進めた。

 入口を抜けるとひんやりとした空気が漂い、湿気を含んだ壁がわずかに光を反射して、彼らを神秘的な空間へと誘っている。


「結構広いな。道も分かれてるし、敵が出てもおかしくないな」


 隼人が慎重に周囲を見渡しながら進む。


 奥へ進むにつれて、静寂の中に微かな物音が響き、緊張感が漂い始める。

 しかし、ノアもリーシャも新しい装備の力を試すために、その挑戦を心待ちにしている様子だった。


「この先、どんな敵が出てくるかしらね」


 ノアが杖を握りながら前を見据え、期待に満ちた声を漏らす。

 三人はそれぞれの装備に手をかけ、新たな挑戦に備えつつ、肩慣らしをしようとダンジョンを進み続ける。


 ダンジョンに入ると、周囲には定期的に敵が現れ、隼人、ノア、リーシャの三人は新装備の性能を確かめながら、順調に敵を倒して進んでいった。

 ノアの支援攻撃や回復、リーシャの盾を活かした防御と篭手による一撃、隼人の俊敏な攻撃がうまく噛み合い、敵は次々と倒されていった。


「いい感じで進めてるわね!この装備、本当に頼りになるわ」


 ノアが新装備の力に自信を得た様子で笑顔を見せる。


「この篭手の硬さも強いし、盾も頼りになるし、前線でも安心して戦えるよ!」


 リーシャも笑みを浮かべながら、誇らしげに盾を掲げた。


 その後も、三人は軽快にダンジョンの奥へと進み続け、ついに最奥と思われる広い空間にたどり着いた。

 辺りを見渡しても敵の気配はなく、静寂が満ちている。


「一度ここで休憩しようか。どうやら敵もいないみたいだし、少し休んでから戻ろう」


 隼人が提案し、三人はその場に腰を下ろした。


 それぞれ装備を調整しながら休息を取る中、隼人はふと周囲の壁に目を向け、異変を感じる。

 彼のシステムがわずかに反応し、視界の端に小さな警告が表示された。

 隼人が注意深く壁を見渡すと、システムが目の前の壁の一部に何かがあることを示している。


「なんだ……あれ……、何かが隠されているのか……?」


 隼人が静かに言いながら壁に近づき、軽く手をかざして確かめる。


「どうしたの?」


 ノアが疑問の表情で隼人に近づく。


「どうやら、何か隠されてるみたいだ。普通じゃわからないようになっている」


 隼人が慎重に壁を調べると、かすかに何かが動きそうな痕跡が見つかった。


「これは……もしかしたら、まだ誰も見つけていない扉かもしれないわね」

 

 リーシャが興味津々に隠し扉を見つめ、三人は次なる発見の可能性に胸を高鳴らせながら、慎重に扉を開く準備を始めた。

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