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初めての魔導具

 隼人はバックパックの試用を終え、フロリアと共にブリッジの会議室へ戻った。

 会議室に入ると、ノアとリーシャが机の上に並べられた魔導具を興味深そうに眺めている姿が目に入った。

 隼人が姿を現すと、二人は笑顔で迎えてくれた。


「おかえりなさい、ハヤト。どうだった?」

 

 ノアが声をかける。


「かなり使いやすかったよ。軽くて収納も出来るから持ち運ぶ必要もないのがいいな。それにしても、そっちも何か面白そうなものを見てたみたいだな?」


 隼人が机の上の魔導具に目をやる。


「そうなの。ルクシアさんが見せてくれたんだけど、これはバステオン・アークに保管されていた魔導具なんだって。『コア』って呼ばれる魔石が使われてるらしいのよ」


 ノアが答えた。

 その瞬間、ルクシアのホログラムがブリッジの端に浮かび上がり、機械的なアームを操作して魔導具をひとつずつ手に取ってはノアやリーシャに差し出していった。


「こちらは後方支援用の魔導具で、ノア様には特にこの杖がお勧めです」


 ルクシアが説明を始める。

 青白く輝く魔石が先端に埋め込まれた杖は、ノアが手に取ると、瞬時に魔力に反応し、周囲に暖かな光が広がった。


「この杖は、持ち主の魔力に合わせて回復や強化の支援魔法を発動するだけでなく、攻撃時には先端から魔力の矢を放つことも可能です。距離が離れた位置からも敵を攻撃できるので、後方からの援護射撃が可能です」


 ルクシアが杖の先端を示しながら言うと、ノアは目を輝かせた。


「すごい……これで支援も攻撃もできるなんて!これなら戦場でもみんなを守りながら戦えそうだわ」


 ノアは杖を握りしめ、しっかりとした表情で頷いた。

 さらに、ルクシアは別のアームで小さな金色の小瓶をつかみ、ノアに手渡した。


「こちらは『結界の小瓶』です。これを使用すれば、範囲内に強力な防御結界が展開され、味方を守ることができます。また、防御結界の中から杖での攻撃を放つことも可能です」


 ノアが慎重に小瓶を手に取ると、ふわりと金色の結界が彼女の周囲に現れた。ノアはこの光に包まれて、安全に後方支援ができる可能性を感じた。


「この結界に守られていれば、もっと安心して援護攻撃もできるね」


 次に、ルクシアは前衛での防御を強化するタンク用の魔導具をリーシャに渡した。

 防御力を重視した盾と篭手は、迫力のある見た目で、いかにも前線での戦闘に適している。


「リーシャ様にはこの盾が適しています。防御の際、魔力に反応して周囲に炎の障壁を展開し、敵を寄せつけません。そして、この篭手は、攻撃時にはリーシャ様が認識している最大硬度まで強度が増し、強力な打撃を繰り出すことが可能です。防御力と攻撃力が備わっているため、前線で大きな役割を果たせます」


 ルクシアのアームが盾と篭手をリーシャに差し出した。


 リーシャが盾を手にすると、表面に激しい火のエフェクトが走り、強烈な威圧感を放ち始めた。

 さらに篭手を装着すると、篭手から紫の光が彼女の腕にまとわりつき、篭手が硬く力強い防御力を持った状態に変化した。


「これ、すごい!この篭手の硬さなら、どんな相手にも力強く攻撃できそう。前線でみんなを守りながら戦える!」


 リーシャは盾と篭手を動かし、その性能を確かめながら喜んだ。

 隼人はその様子を見て、心から感謝を込めて口を開いた。


「ここまで揃っていると、戦力も大幅に上がりそうだ。ルクシアさん、ありがとう」


 ルクシアが静かに頷く。


「ノア様達にお喜び頂き恐悦至極で御座います」


 魔導具の説明が一通り終わり、それぞれが新たな装備を手に、どこか気持ちも引き締まる中、リーシャがふと疑問を口にした。


「そういえばさ、私たちって魔導書とか使い方なんて教えてもらってないけど、どうして魔導具が使えるんだろう?」


 彼女は自分の篭手を見つめ、首をかしげた。


 その問いにフロリアがすっと近づき、会議室の隅に置かれていた余った武具型の魔導具を手に取った。

 手慣れた様子で魔導具を示しながら、丁寧に説明を始めた。


「お尋ねの件についてお答えしますね。本来であれば、魔導具を使用するためには個人を識別する『バイオコード』の登録が必要です。この登録によって使用者を特定し、万が一敵に奪われても無効化されるようにするためのセキュリティ機能が備わっています」


「なるほど……それがないと敵にも使われちゃうわけか」


 リーシャは思わずうなずいた。

 フロリアは軽く頷き、さらに続けた。


「ですが、1万年以上前の大戦……未知の脅威との戦争の末期には、敵の猛攻により民間人さえも徴兵しなければならない状況に追い込まれました。その際、急速に戦力を増強するため、通常のバイオコード登録が間に合わず、簡素化された登録方法が導入されたのです」


「その簡素化された方法って……?」


 ノアが興味深そうに尋ねた。


「はい。その頃、私たちの文明が戦時に残したマニュアルと呼ばれる書物に、その簡素なバイオコード登録方法が記載されていたのです。おそらく、その技術や知識がこの世界で継承され、現在の『魔導書』として引き継がれたのでしょう。こうして『魔導書』を手に入れ魔導具を扱えるようになったと考えられます」


 リーシャは思わず驚きの表情を浮かべた。

 

「えっ!じゃあ、今使われてる魔導書って、元はあなたたちの世界のものなんだ……」


 フロリアは静かに頷き、今度はノアとリーシャが持っている魔導具に目を向けて言葉を続けた。


「ちなみに、ノア様とリーシャ様にお渡しした魔導具は、受け取った時点でバイオコードが登録され、二人専用の魔導具となりました。他の誰かが手にしても、今は使用することができません」


 ノアは驚きながらも感謝の表情を浮かべて、自分の杖を見つめた。


「そうだったのね……私たちだけのものになったんだ」


 リーシャも自分の篭手を握りしめながら頷いた。


「うん、これで私たちも戦いに備えて一層安心して使えるね!」


 二人は改めて自分の魔導具に目を落とし、それぞれの専用装備としての重みを感じた。

 フロリアは説明を終えると、二人の様子を見守りながら微笑んでいた。


 魔導具に関する説明が一通り終わり、ノアとリーシャは自分たち専用の装備を手にしっかりと握りしめた。

 その重みと共に、どこか誇らしい気持ちが湧き上がってくる。

 しかし、それと同時に彼女たちの心の中にはひとつの疑問が浮かんでいた。


「ねぇ、せっかく魔導具をもらったんだから、どこかで試せないかしら?」


 ノアが軽く杖を振りながら、嬉しそうに言う。


「私もこの盾と篭手がどんな感じで使えるか試したい!どこかで性能を確認できないかな?」


 リーシャもわくわくした様子で、盾を掲げてみせた。


ルクシアがそれを聞き、柔らかな光を放ちながら答えた。


「それでは、射撃場へどうぞ。フロリア、二人を案内してください」


「わかりました、ルクシア」


 フロリアが了承し、二人を案内するために歩み寄った。


 フロリアの案内で、ノアとリーシャは施設内を進み、しばらくして射撃場と書かれたドアの前に到着した。

 ドアが開くと、広いスペースが広がり、壁の一部にはさまざまな標的が配置されている。

 ここなら、魔導具の性能を思う存分試せそうだった。


「それでは、どうぞ。こちらで武具の性能を試してみてください」


 フロリアが静かに言いながら、標的の方向を指差した。


 ノアは自分の杖を握りしめ、まずは穏やかに杖の先端に魔力を込めてみた。

 杖が応えるように淡い光を放ち、杖の先端が青白く輝き始める。

 そして、彼女が軽く魔力を解放すると、杖の先から精密な魔力の矢が放たれ、的に向かって一直線に飛んでいった。

 狙った通りに命中し、的に鮮やかな光の痕が残る。


「すごい!これで後方から援護射撃もできるなんて……本当に使える!」


 ノアは興奮した表情で手元の杖を見つめた。


 一方、リーシャは自分の篭手と盾を見つめ、軽く息を吸い込むと、思い切って前方の標的に向かって走り出した。

 篭手に魔力を込めると、篭手が彼女の認識する限りの最大硬度まで強化され、固く鋭い感触が伝わってきた。

 彼女がそのまま標的を殴りつけると、篭手から衝撃音が響き、標的がぐらりと揺れた。


「この硬さ……!これなら強敵にも真正面からぶつかっていける!」


 リーシャは驚きと喜びを感じながら、盾も構えて炎の障壁を展開した。

 周囲に熱気が漂い、盾の表面には炎が揺らめき、まるで燃え盛る壁のように彼女を守っている。


「すごい……盾がこんなに力強く炎を纏うなんて、どんな敵も近寄らせないわね!」


 リーシャは自信に満ちた表情で言った。


 ノアとリーシャは、お互いの魔導具の性能を確認し合い、その力強さに感動を覚えた。

 フロリアも彼女たちの様子を見守りながら静かに微笑んでいた。

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