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エルミオン領主と町の再建会議

 バステオン・アークがゆっくりと姿を現し、その巨大なフォルムを目の当たりにした隼人たちは、ただその威容に圧倒されていた。

 暗闇の中で静かに佇むその姿は、まるで大地を守る堅牢な要塞のように凛とした力強さを放っている。


「……これが彼らの要塞施設か。規模も質も、俺たちの知るものとは全然違うな」


 隼人は目を見開いたまま呟いた。

 ノアもまた、感慨深げに要塞を見上げる。


「まさかこんな設備が地下にあったなんて……」


 リーシャは、未知の技術が生む不気味さと圧倒的な存在感に少し怯むような面持ちで言った。


「昔の技術って、やっぱりすごいわね。こんな設備があるなんて、まるで想像もしてなかった」


 その時、要塞のシステムが起動し、周囲をスキャンする音が聞こえてきた。

 まもなくして、バステオン・アークのシステムログが淡々と響き渡る。


【システムログ】

・周囲スキャン完了。虫型機動兵器による損害確認――町周辺の被害が甚大であることを確認。


 そのデータを確認したフロリアの声が、隼人たちの持つペンダントを通して聞こえてきた。


「我々の兵器による被害が、この地で大きく目立っていますね」


 その言葉にノアが一瞬表情を曇らせ、ペンダントを見つめてから小声で答えた。


「……あなたたちが防衛のために兵器を起動したのはわかってる。でも、被害が出ている以上、少しでも手助けができれば……」


 フロリアはその言葉に考え込むような間を置き、やがて落ち着いた口調で提案を口にした。


「それはもっともなことです、ノア様。しかし、被害を受けた町の復興を直接行うと、我々の存在が目立ってしまう恐れがあります。ですので、復興の支援として、要塞のあった場所に資源を生成するのはどうでしょうか」


 ノアはフロリアの提案にほっとしたような表情を浮かべ、静かに頷いた。

 隼人も納得しながら声を上げる。


「なるほど。支援が寄付のような形で町に届くなら、不自然にならないし、町の人たちも感謝して受け取るだろう」


 ルクシアも冷静に応じる。


「この場所は、かつて多くの記憶を宿した地であり、今もその役割を担い続けています。ノア様の意向に従い、町の復興の一助となる形で、慎重に資源を提供することにいたしましょう」


 フロリアとルクシアの提案により、町の復興に向けた支援策が整い、隼人たちは各々の役割を果たしつつ、静かに町を見守る決意を新たにした。


 フロリアとルクシアの提案で町の復興支援が決まり、隼人たちも少し安堵の表情を浮かべていた。するとルクシアがペンダント越しに隼人たちに伝えた。


「資源の提供準備も整いましたので、私たちはこれからこの場を離れます。落ち着きましたら、またペンダントにてご連絡いたしますので、その際はどうかお聞きください」


 隼人はフロリアとルクシアの声を聞きながら静かに頷き、ノアとリーシャもそれぞれペンダントに向かって答えた。


「わかった。また連絡を待ってるよ」


 その後、ペンダント越しの音が静かに途切れ、辺りは夜の静けさに包まれた。

 三人は夜の街を抜けて、カイエンの屋敷へとゆっくりと帰路についた。


 翌朝、隼人たちは穏やかな朝の光に包まれた屋敷の中で目を覚ました。

 騒がしかった探索がひと段落したこともあり、隼人たちは数日間、屋敷の修繕や片付けを手伝うことに決めた。

 カイエンや屋敷の使用人たちと協力し、崩れた壁を修復したり、瓦礫を運び出したりと、それぞれが自分の手で町を支えることを実感していた。


 ノアは屋敷の廊下で作業していたとき、ふと遠くから噴水広場の方を見やり、数日前のバステオン・アークとの出来事を思い返した。

 心の中で、資源が無事に見つかることを願いつつ、町に住む人々のための復興支援が確実に届くようにと祈るような気持ちだった。


 そんなある日、町中に興味深い噂が広まり始めた。

 昼休憩の時間、使用人たちが楽しそうに噴水広場の話をしているのが耳に入る。

 何かと思い、隼人が興味を引かれて話を聞きに近づくと、彼らは口々にこう語っていた。


「聞いたかい?噴水広場の洞窟からとんでもない資源が見つかったらしい」


「ああ、町の連中も大騒ぎさ。金属や鉱石だけじゃなく、宝石のようなものもあったらしい」


 隼人とノア、リーシャもその話を聞き驚きの表情を浮かべる。

 フロリアたちの配慮で配置された支援物資が、ついに町の人々の目に触れたのだ。


「見つかってよかった。これなら、町の復興にもきっと役立つよね」


 ノアが嬉しそうに微笑み、隼人とリーシャも頷いた。

 さらにその会話の中で、別の興味深い話題が持ち上がっていた。


「それに加えて、領主様がもうすぐこの町に来られるらしいぞ」


 その言葉を聞いたノアは一瞬緊張し、隼人も眉をひそめた。


「領主が来るのか……。町の状況を見に来るってところか」


「そうみたいだな。今度のことで、町の防衛強化や復興支援を話し合うらしい。噴水広場で見つかった資源もその話題に入るかもしれないって噂だよ」


 隼人たちは、町が復興へ向かうための大きな第一歩を目の当たりにしながら、それと同時に、領主の来訪が町にどんな影響を与えるのか、心の中で考えを巡らせるのだった。

 

▼領主と有力者の会議

 

 復興が少しずつ進み、町が再び落ち着きを取り戻しつつある頃、ついにエルミオン領主がこの地を訪れた。

 町で起きた一連の出来事を受けて、領主のエルミオンは町の有力者たちを集め、再建と防衛強化のための会議を開くことを決めた。


 午後、カイエンは他の代表者たちと共に会議の場へと足を運び、重厚な雰囲気が漂う会議室に着席した。

 そこへ現れたエルミオン領主は、高貴な佇まいを漂わせつつも柔和な笑みを浮かべ、彼らに温かく語りかけた。


「改めてお集まりいただき感謝する。私はこの領地を預かるエルミオンと申す者だ。皆の協力に、心より感謝している」


 エルミオンは優雅に頭を下げ、一人ひとりに視線を送りながら言葉を続けた。


「この町が受けた被害については既に耳にしている。町がこのような被害に遭うことは避けねばならなかったが、現状を見て再建の必要性を痛感している。この地が再び平和で豊かなものになるよう、共に尽力していこうではないか」


 その言葉にカイエンを含む有力者たちは頷き、真剣な面持ちで会議の方向性を見定めた。

 エルミオンは、発見された資源について触れながら、話を続けた。


「噴水広場の地下に新たに発見された洞窟の探索も完了し、討伐隊によって残っていたモンスターも制圧された。さらに、この洞窟からは多くの貴重な資源が発見されている。これらの資源は町の復興に大いに役立つだろう」


 エルミオンの落ち着いた声に、カイエンが頷きながら答えた。


「ありがたい話ですな。資源が整えば、復興はぐっと早まるでしょう。この町の人々も、安心して生活できるようになる」


 エルミオンもその言葉に満足げに微笑み、会議の焦点を町の防衛に移した。


「町を防衛するための備えも重要だ。今回のような事態が再び発生しないよう、警備体制の増強も計画している。復興と防衛強化は、この地を支える両輪と考えている」


 さらに、他の参加者からも今後の支援について確認の声が上がった。


「エルミオン様、具体的にはどのような形で資源を用い、復興を進められるお考えですか?」


 エルミオンは穏やかな表情を保ちながら答えた。


「まずは町全体の基盤を整えることに注力する。噴水広場で見つかった資源は、重要な施設や住居の修繕に使うべきだろう。人々が安心して暮らせる環境を一刻も早く整え、町全体を活気づけたい」


 カイエンたちはこの提案に賛同し、それぞれの役割で復興計画を支援していく姿勢を見せた。

 会議室には、一致団結した空気が漂い、町の再建と新たな防衛体制が形づくられようとしていた。


 会議が終わり、エルミオンは静かに部屋を見渡し、全員が退出したのを確認すると、低く囁くように声を発した。


「出てきなさい、影よ」


 すると、部屋の隅から黒ずくめの男が音もなく姿を現した。

 影と呼ばれる男は静かに跪き、エルミオンの前に控える。エルミオンは鋭い視線を向け、静かに口を開いた。


「町での異変について、何を掴んだ?」


 影は一礼し、冷静な声で報告を始めた。


「まず、古文書に記されていた『虫型機動兵器』が大量に出現し、町を襲撃しました。多くの被害が生じ、過去の記述とほぼ一致する脅威が再び発現したと判断されます」


 エルミオンはわずかに表情を変えた。機動兵器の出現は以前から予想していたものの、これほど正確に再現されるとは予想外だった。

 影はさらに続ける。


「そして、数日前の夜、噴水広場が開き、そこから巨大な船が現れるのを確認しました。その船が現れた付近には、ハヤト一行の姿も。彼らは以前、『アルテウム・ギア』のコアをあなたに納品した者たちでもあります」


 その報告を聞き、エルミオンは鋭い眼差しを影に向け、呟くように言った。


「……なに?彼らがこの件にも関わっているのか……」


 以前、隼人たちが納品した『アルテウム・ギア』のコアが一連の出来事とどう繋がっているのか。

 エルミオンは考えを巡らせたが、彼には未だ分からないことが多かった。


 影は淡々とした口調で続けた。


「彼らがこの町に来てから多くの異変が起きています。彼らの動向は、引き続き監視する価値があるかと」


 エルミオンは再び窓の外へと視線を投げ、人々が平和な生活を取り戻しつつある町を見つめた。


「……ハヤトたちの監視は続けるべきだな。もし再び動きがあれば、直ちに知らせよ」


 影は深々と頭を下げ、エルミオンの指示を受けると、部屋を後にした。

 エルミオンは一人静かに立ち、町と彼の胸中に渦巻く疑念の間で揺れていた。

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