静止する戦場
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【マスターユニット指示受信】
マスターユニットからの新たな指示を受信しました。
【指示内容】
全兵器、攻撃を即時停止します。
全ユニット、周囲警戒モードに移行します。
【状態変更】
全防衛兵器の攻撃動作停止を確認。
敵対勢力への攻撃プロセスを中断。
防衛システムの全ユニット、警戒態勢へ移行中……
移行完了。
【環境スキャン】
周辺エリアのスキャンを強化中……
環境データをリアルタイムで更新中……
新たな敵対シグナルなし。異常なし。
【セキュリティプロトコル発動】
セキュリティプロトコルを起動します。
周囲の警戒レベルを最大に設定。
全ユニット、マスターユニットからの新たな指示待機状態に移行。
【システムモニタリング】
全防衛ユニットの正常動作を確認。
リアルタイムの監視データを継続収集中……
次の指示を待機中。
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………
……
…
隼人は光学迷彩を使い、透明化したままリーシャをしっかりと抱え、カイエンの屋敷へと急いでいた。
虫型機動兵器の攻撃を何とか避け、無事に到着したものの、屋敷は激しい戦火に包まれていた。
「ノア……一体どこへ……」
隼人は心配そうに周囲を見渡し、ノアの行方を確認しようとしていた。
広場から逃げたノアを追いかけていたが、敵の対処に追われ、彼女の姿を見失ってしまった。
屋敷周囲からは爆発音が絶えず聞こえていた。
炎の煙が立ち上り、建物が崩壊する音が響いていた。
隼人はその音の方へ足を速め、状況を確認するために進んだ。
やがて、屋敷の裏庭にたどり着いた隼人の目に飛び込んできたのは、カイエンたちが虫型機動兵器に応戦している光景だった。
だが、その瞬間、隼人はさらなる衝撃を受けた。
「倉庫が……!」
虫型機動兵器の遠距離攻撃が小さな倉庫に直撃し、建物が一瞬で吹き飛んだ。
大きな爆発とともに、倉庫の壁が崩れ、中に隠れていた地下が露出し、虫型機動兵器が地下へと更なる攻撃を開始する。
「やめて……お願い、やめて……!」
その場にいたノアが反射的に叫ぶ。その声には恐怖と絶望が混じっていた。
隼人はノアを助けるべく駆け出すも、激しく揺れる瓦礫と立ち上る煙を見つめた次の瞬間、虫型機動兵器の動きが唐突にピタリと止まった。
「急に……どういうことだ……?」
隼人は疑念を抱き、しばらく動きを止めた虫型機動兵器を冷静に観察した。
すぐに目の前で攻撃していたはずの機械たちは、一斉にその場で硬直し、まるで命令を待っているかのように静止していた。
しかし、ノアの安否が気になる彼は、光学迷彩を解除することを決断した。
「リーシャ、少し待っててくれ」
そう言って隼人は光学迷彩を解除し、透明状態から自らの姿を現した。
そして、リーシャをそっと地面に降ろし、ノアの元へ駆け寄った。
「ノア……無事か?」
隼人はノアの安否を確認しようとした。
しかし、その瞬間、上空から機械的な音が再び響き渡った。
「なんだ……?」
隼人が上空を見上げると、止まっていたはずの虫型機動兵器が再び動き出し、ゆっくりと旋回を始めた。
まるで何か新たな命令を受けたかのように、機械たちは再稼働し、上空を監視するように飛び回っている。
「また……動き出したのか……!」
隼人は、ノアの前に立ちはだかり、再び動き出した虫型機動兵器に備えていた。
しかし、意外にも機械たちは攻撃してこなかった。
上空を旋回するだけで、何の攻撃行動も取らず、ただ監視しているようだった。
「……攻撃してこない……?」
隼人は疑念を抱きながら、じっと機械たちの動きを観察したが、やはりそのまま動きを止めることなく旋回を続けていた。
「何が起きたの……?」
ノアも正気を取り戻し、周囲を見渡すと、母親や隼人たちの安否を心配し始めた。
「母さん……!」
ノアはすぐに母親の無事を確認しようと、隼人の腕を抜け出して母親の方へ駆け寄った。
カイエンやハーバードたちも、無事を確認し合うようにそれぞれの家族や仲間のもとへ駆け寄っていた。
「攻撃は……止まってるな」
隼人は、上空の虫型機動兵器たちがまだ旋回を続けているのを見上げながら、今の状況を冷静に判断した。
彼らは攻撃範囲外にいるため、攻撃魔法を放っても届かない位置にいた。
「どうやら攻撃はしてこない様だ。今のうちに救援活動を始めよう。町の人々も手分けして助け出すぞ!動けるものは全員救援を開始しろ!」
カイエンが息を整えながら、町の状況を確認し、すぐに救援活動の指示を出した。
虫型機動兵器が攻撃を止めている今が、町を救うためのわずかな時間だった。
カイエン、ハーバード、そして町の他の住民たちも協力し、全力で救助活動が始まった。
「よし、俺たちも手伝うぞ」
隼人とリーシャは救援活動を始めようと歩き出した。
しかし、その瞬間、ノアが二人を呼び止めた。
「待って!ハヤト、リーシャ、ちょっと話を聞いて……」
その切迫した声に、隼人もリーシャも足を止め、振り返った。
ノアの表情には、明らかな緊張と戸惑いが浮かんでいた。
「どうした?急いで助けないと――」
隼人は焦燥感からすぐに動こうとするが、ノアの表情を見て言葉を飲み込んだ。
ノアは一瞬、言うべきかどうか迷っているように視線を落とした。
しかし、意を決して顔を上げた。
「はっきりとは言えない。もしかしたら……ただの偶然かもしれない。でも……」
ノアは少し呼吸を整え、目の前の隼人とリーシャに向き直った。
「さっき、あの虫たちが動きを止めた瞬間、私……の声に反応したんだと思うの」
ノアの言葉に、隼人もリーシャも驚いた表情を浮かべた。
「声に……反応した?」
隼人が疑問を口にすると、ノアは真剣な表情で頷いた。
「うん。私が『やめて!』って叫んだ時、あの機械たちがピタッと動きを止めたでしょう?それだけじゃなくて……その瞬間、私の体と何かが繋がるような感じがしたの」
ノアは自分でも信じられないように話し始めた。
あの一瞬、彼女の叫びに反応して機械が停止した感覚がまだ鮮明に残っていた。
「何かが繋がる……?」
リーシャは驚きと共に、その言葉を反芻した。
機械とノアが何らかの関係を持っているとでも言うのだろうか。
「本当に確証はないし、どうしてそんなことが起きたのかも全然わからない。でも、ただの偶然じゃない気がしてならないの。もしかすると、私……あの虫たちをなんとかできるかもしれないの」
ノアの声には決意が込められていた。自分の力に不確かなものを感じつつも、何か手がかりを得たと信じているようだった。
「ノア……」
隼人は目を細め、彼女の言葉に耳を傾けた。
ノアの表情は真剣そのもので、冗談や思い過ごしではないと感じた。
「ノア……本当に大丈夫か?」
隼人が慎重に問いかけた。
ノアの表情には少し不安が浮かんでいたが、彼女はゆっくりと深呼吸をして、目を閉じた。
「やるしかないわ……」
そうつぶやき、ノアは両手を前で組んだ。
まるで祈るように、静かに両手を合わせて上空を見上げた。
虫型機動兵器たちはまだ上空を旋回し続け、いつ再び攻撃を始めるかもわからない状況だ。
「お願い……帰って……もう、これ以上、誰も傷つけないで……」
ノアは心の中で強く願いながら、静かにその言葉を口にした。
彼女の言葉には、純粋な祈りと願いが込められていた。
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【マスターユニット指示受信】
マスターユニットからの新たな命令を確認。
全防衛兵器に帰還命令を発令。
【防衛兵器状態】
虫型機動兵器(No.12シリーズ)への帰還命令送信……
全ユニット、指定カタパルトへ帰還中。
【防衛終了】
敵対行動なし、防衛プロセスを終了します。
全防衛システムを待機モードへ移行。
【カタパルト状態】
カタパルトユニットを閉じます……
カタパルト閉鎖完了。
【最終状態】
全防衛兵器は待機状態に移行。
マスターユニットの次の指示を待機中。
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その瞬間、虫型機動兵器たちが一斉に動きを変えた。
旋回していた機体が、まるで命令を受けたかのように上空から姿勢を変え、ゆっくりと元の位置へと戻り始めたのだ。
「……帰っていく……」
隼人は目の前で起こっている信じられない光景に、驚きの声を漏らした。
虫型機動兵器たちは徐々に降下し、カタパルトへと帰還していった。
巨大なカタパルトの構造物が再びゆっくりと動き出し、防衛兵器たちを内部に収めていく。
機械的な音を響かせながら、カタパルトもゆっくりとその役目を終え、静かに閉じられていった。
「本当に……帰ったんだ……」
リーシャも驚いた表情で、目の前の出来事を見守っていた。
まるで、ノアの願いに応じたかのように、すべてが穏やかに収束していった。
「よかった……」
ノアは息を吐き、両手をそっと降ろした。
心の中での緊張が解け、ようやく少しの安堵が訪れた瞬間だった。




