虫型機動兵器の脅威
塔の手形に触れてからしばらくの間、静寂が続いていた。
人たちは何が起こるのか分からず、ただ不安な気持ちを抱きながら噴水広場を見つめていた。
しかし、その静けさは突然破られた。
――大きな振動が噴水広場全体を揺るがした。
「な、なんだ!?」
隼人が驚いて振り返ると、噴水広場全体が地震のように揺れ始めていた。
「地震か!?でも、この揺れ方……普通じゃない!」
ノアも焦りながら、足元を踏ん張って揺れに耐えていた。
振動は次第に大きくなり、まるで地面の下から何か巨大な力が押し上げてくるかのようだった。
噴水の水が激しく揺れ、広場に集まっていた人々も次々とパニックに陥っていく。
突然、広場のあちこちに巨大な裂け目が現れ、地面が大きく割れた。
その瞬間、巨大な穴が次々と開き、そこから何かがせり出してきた――それは古代の防衛システムの「カタパルト」が地中から展開された瞬間だった。
「これは……なんだ?」
隼人は混乱しながら地面から出現する不気味な装置を見上げた。
その時――
――「警告:機動兵器を確認。敵勢力の可能性あり」――
隼人の脳内に、突然機械的な警告が響き渡った。
「えっ!? 機動兵器だと……?」
隼人は頭を押さえながら、突然の警告音に驚き、戸惑った。
広場の地面が再び揺れ、巨大なカタパルトが開放されると、無数の虫型の機械が姿を現し始めた。
それは機械の体を持ち、鋭い金属音を立てながら地上へと這い出してくる。
隼人はその姿を見て、不安と恐怖が胸を締め付けた。
――「敵機動兵器、識別中……。戦闘モードへの移行を推奨」――
再び隼人の内にあるシステムが冷静に警告を発したが、突然の出来事に隼人はその意味を完全には理解していなかった。
「なに、あれ……?」
ノアが恐怖に怯えた声で呟き、その不気味な機械の群れを見つめた。
無数の虫型機動兵器は、その甲殻を鳴らしながら次々と地上に出てきては、周囲を警戒し、動き回っていた。
隼人たちはその光景にただ圧倒され、次第に危険が迫っていることを感じ取り始めていた。
「まずい……何かが始まるぞ!」
隼人が警戒を強めたその瞬間、虫型機動兵器たちが鋭い金属音を立てながら蠢き、一斉に攻撃態勢に入った。
鋭い音と共に、兵器が素早く地上の人々を標的にし始める。
「うわっ、逃げろ!!」
広場にいた人々が次々とパニックに陥り、逃げ惑いながら叫び声を上げる。
虫型兵器は鋭い脚を動かし、次々と攻撃を開始した。
その瞬間、隼人の脳内に再び機械的な声が響いた。
――「敵機動兵器識別完了。識別対象:虫型機動兵器「No.12シリーズ」」――
「虫型機動兵器……No.12シリーズ……?」
隼人は識別された情報に戸惑いながらも、すぐに頭を振り、戦闘態勢を取った。
「こんな数、どうやって対応するの!?」
リーシャが叫びながら金槌を構え、近づいてきた機動兵器に向かって強烈な一撃を放つ。
しかし、次々と襲いかかる虫型兵器の数はあまりにも多く、対応が追いつかない。
「くそっ……多すぎる!このままじゃ……」
隼人も右手をライフルへと変え、次々と襲いかかる敵を迎撃するが、次々に現れる虫型兵器に追い詰められていく。
虫型機動兵器は次々と湧き出し、その数は圧倒的だった。
人々の叫び声と機械の金属音が響き渡り、町は混乱に包まれていた。
機動兵器の攻撃で町の建物が次々と破壊され、破片が飛び散る。
「町が壊されていく……!これじゃ……」
リーシャが焦りながら、周囲の光景に目を向けた。
その時、ノアはふと、母親がいる家のことを思い出した。
「母さん……!もしかして、家が……」
ノアは破壊されていく町の姿を目にして、母親の安否を心配し始めた。
「母さんが危ないかもしれない……!」
ノアは目に見えて焦りの色を浮かべた。
「落ち着け、ノア! 俺たちがなんとかする……ミレイさんのところに急ごう!」
隼人はライフルを構えながら、ノアを安心させようとする。
虫型機動兵器の数は次第に増え、圧倒的な勢力で町を破壊し続けた。
逃げながらも戦い続ける隼人たちは、この圧倒的な数にどう対処すべきかを模索しながら、必死に命をつなごうとしていた。
「母さん……!」
ノアは破壊されていく町を目の当たりにし、母親の安否が気がかりで一気に焦りの表情を浮かべた。
混乱する思考の中、彼女は無意識に行動を取った。
「母さんのところに行かなきゃ……!」
ノアは周囲の混乱をものともせず、突然住宅街へと走り出した。
「ノア!待て、危ない!」
隼人が叫んだが、ノアは一瞬も振り返らず、そのまま走り去っていく。
「くそっ、追いかけるぞ!」
隼人はすぐにリーシャと共にノアを追いかけ始めた。
しかし、彼らの前には次々と虫型機動兵器が立ちふさがり、簡単に道を塞いでくる。
「隼人、敵が邪魔をして追いつけない!」
リーシャが金槌を振り回して敵を撃退しながら、焦りの声を上げた。
隼人はライフルを放ちながら、敵を片付けつつ必死にノアを追いかけようとしたが、数が多すぎる。
無限に湧き出るかのように襲いかかる機動兵器に、思うように前進できない。
「くそ……これじゃ追いつけない……!」
隼人は次々と襲いかかる敵を撃ちながら歯噛みした。
その間に、ノアはどんどん住宅街の奥へと走り続けていった。
街の破壊が進む中、ノアの姿は次第に見えなくなっていく。
「ノア!」
隼人が叫んだが、その声は届かなかった。
ノアの姿は完全に住宅街の中に消える。
「まずい……ノアが……」
リーシャが険しい表情で呟いた。
「このままじゃ、ノアが危ない。急いで追いつかなきゃ……!」
隼人は焦りながら、なんとか敵を片付けつつ、ノアのいる方向に向かおうとするが、敵の勢いは止むことがない。
隼人たちは敵を処理しつつ、何とかノアの後を追おうと必死に奮闘するものの、虫型機動兵器の猛攻に阻まれ、思うように進めない状況が続いていた。
隼人とリーシャは、ノアが向かっていると思われるカイエンの屋敷を目指して必死に走っていた。
しかし、虫型機動兵器が次々と湧き出し、二人の進路を妨害し続ける。
「このままじゃきりがない……!」
隼人は敵をライフルで撃ちながら、次第に限界を感じ始めた。
数が多すぎる上に、倒しても倒しても新たな敵が現れる。
「どうすれば……」
隼人が途方に暮れていると、突然、彼の脳内に機械的な声が響いた。
――「提案:光学迷彩にて認識阻害が可能」――
隼人はすぐに判断し、迷うことなく光学迷彩を発動させた。
彼の姿が徐々に透明化し、完全に見えなくなっていく。
「これで……」
隼人は透明化した自分の周囲を確認し、敵が自分を見失ったことを確認した。
しかし、敵の攻撃はすべてリーシャに向かって集中し始めていた。
「くそっ、リーシャが狙われてる……!」
隼人はすぐにリーシャをかばうように駆け寄り、彼女の腕を掴んだ。
その瞬間、隼人は驚いた。
彼の手が触れた瞬間、リーシャの姿が薄れていき、彼女も透明化して見えなくなっていった。
「……まさか……」
隼人は、リーシャにしっかり触れながら、敵の反応を確認した。
敵の攻撃はピタリと止まり、虫型機動兵器たちは完全にリーシャを見失ったように動きを変え始めた。
隼人はその光景を見て、触れているものも透明化することを確信した。
「触れているものも……透明になるのか」
隼人はリーシャの手を握りしめ、敵の動きを静かに見守った。
確かに、彼女も今や完全に敵の目から消えていた。
「リーシャ、もう大丈夫だ。どうやら俺たちを見失ったようだ」
隼人はリーシャに向かって安堵の声をかけた。
「ほんとだ……ありがとう、隼人」
リーシャは驚きつつも、隼人の言葉に応じてしっかりと彼に身を預けた。
「このまま、カイエンの屋敷に向かうぞ。しっかりつかまれ!」
隼人はリーシャをしっかりと小脇に抱え、透明化したまま敵の目を逃れながらカイエンの屋敷へと進んでいった。




