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不穏な空気

 翌朝、清々しい光が館に差し込み、隼人たちはゆっくりと目を覚ました。

 十分な休息を取り、元気を取り戻した彼らは、今日の予定に思いを馳せながら食堂に集まった。


「おはよう、今日はちょっと町を案内しようと思って。せっかくだから、いろんな場所を見て回ろう!」


 ノアは元気いっぱいに隼人とリーシャに声をかけた。


「いいね。昨日は館の中ばかりだったから、外も楽しみだ」


 隼人も笑顔で応じた。


「私も楽しみ!初めての場所だし、どんな町か気になってたのよ」


 リーシャも目を輝かせて、興味津々な様子でノアに続いた。

 こうして、隼人たちは町の観光に出発することとなった。


 ノアの案内でまず向かったのは、商業区。

 ここではたくさんの店が並び、活気ある雰囲気に包まれている。

 様々な商品が並び、商人たちが活発に取引をしている様子が目に飛び込んできた。


「ここが商業区。いろんなお店があるから、見て回るだけでも楽しいよ」


 ノアは自慢げに町を紹介した。


「色々と面白いものが揃っていそうだな」


 隼人が店の品物を興味深そうに見渡しながら言った。


「こんなににぎやかだなんて、見てるだけでワクワクするわ」


 リーシャも目を輝かせながら、商人たちの元気な掛け声に耳を傾けていた。


 次に向かったのは工業区。

 ここでは、鍛冶屋や工房が多く、鉄を打つ音が響き渡っている。

 職人たちが汗を流しながら黙々と作業を続けている光景が広がっていた。


「ここは工業区。鍛冶屋や工房が集まっているの。私の叔父さんがここで多くの工房を支えてるんだ」


 ノアが少し誇らしげに説明する。


「なるほど。こういった場所があってこそ、町が発展するんだな」


 隼人が感心しながら、鍛冶屋の仕事に目を向けた。

 リーシャもその光景を見て、軽く笑いながらつぶやいた。


「でも、おやじに比べたらまだまだね」


 その言葉に、隼人は驚いた表情で振り返った。


「ゴルドさんの技術がそんなにすごいのか?」


「そうね。おやじの仕事は一流よ。どんなものでも完璧に作り上げるの」


 リーシャが誇らしげに微笑む。


 工業区を後にし、次に向かったのは町の中央に位置する噴水広場。

 大きな噴水が中心にあり、その周囲には人々が集い、ゆっくりとした時間を過ごしている。

 噴水の清らかな水の音が耳に心地よく響いていた。


「ここが町の中央、噴水広場。人が集まる場所で、いつもこんな感じで賑わってるの」


 ノアは広場の様子を見せながら説明する。


「落ち着いた場所だな。広々としていて、町全体の中心って感じがする」


 隼人が周囲を見渡しながら呟いた。


「そうね。旅の疲れも癒されそうな場所だわ」


 リーシャは水の音に耳を澄ませながら、心地よさそうに微笑んだ。


 広場で一息つきながら、隼人たちは今日の観光を振り返り、町の美しさと賑やかさに感動していた。


 噴水広場で一息ついた隼人たちは、広場の一角にそびえ立つ古い塔を見上げた。

 その塔は他の建物よりも高く、塔の周囲には人々が行き交い、観光客のような人もちらほら見られる。


「ねえ、あの塔、観光名所なんだってさ」


 リーシャが塔を見ながら興味を示した。


「そうなんだ。でも、どうして観光名所なんだろう?」


 隼人が不思議そうに尋ねた。

 その時、塔の近くで観光宣伝をしていた男性が、三人の会話に気づきながら親しげに声をかけてきた。


「お客さん、あの塔に興味があるのかい?」


 彼は塔の観光案内をしているらしく、笑顔で話しかけてきた。


「ええ、ちょっと気になって」


 隼人が答えると、男性は嬉しそうに頷いた。


「それならぜひ知ってもらいたいことがあるんだ。この塔には特別な『手形』があってな、その『手形』に手を添えると『未知の世界へ導いてくれる』って言い伝えがあるんだよ」


「未知の世界……なんだか冒険心をくすぐられるわね」


 リーシャが面白そうに言いながら、塔を見つめた。

 しかし、ノアは首をかしげた。


「そんな話、あったかな?子供の頃は聞いたことがなかったと思うんだけど……」


 ノアの疑問に対して、彼は「しまった」と言いたげに目をそらし、気まずそうに笑った。

 

 「ありゃ、嬢ちゃん、この町に来たことあったのかい?そりゃバレちまったら仕方ないな。実はこの塔、数年前に地震があってな。その時に塔の外壁が少し崩れ、そこから現れたのが、例の『手形』だよ」


 ノアが少し驚いた表情を見せる。


「え、地震で『手形』が出てきたんですか?そんな話、聞いたことないんですけど……」


 男性は少し笑いながら自慢するかのように話す。


「そうだろうな。『手形』が出てくるまでは誰も知らなかったからな。『手形』も人が触れると少し光るんだよ。だからさ、これを見つけた時に『これを使って町おこしをしよう』って町全体で盛り上がって、今じゃ観光名所になってるってわけさ」


「なるほど、町ぐるみで観光名所にしているってことか」


 隼人は納得した様子で頷いた。


「よかったら、『手形』に触れてみてごらんよ。観光客の皆さんが結構喜んでくれるんだ。ほら、塔の正面にうっすらと『手形』があるからさ」


「面白そう!試してみない?」


 リーシャが軽く笑いながら提案した。


 三人は塔の正面へ向かい、その『手形』を探し始めた。

 言われた通り、大人の肩くらいの高さにうっすらと『手形』が刻まれていた。

 何か不思議な力を感じさせるその『手形』は、観光名所として人々の関心を集めていた。


「ちょっと触れてみようか?」


 隼人が笑いながら『手形』に近づき、手を添えた。

 すると『手形』が少し光りだす。


「おお、なんか光ったぞ」


 続いてリーシャが手を添えた。

 彼女もまた、『手形』に触れると、『手形』が発光する。


「ほんとだ!なんかちょっと光った!」


 そして最後に、ノアが手を添えようとした瞬間、微かに空気が変わったように感じた。ノアが手を触れた瞬間――


 ――地面が揺れた。


「えっ……地震?」


 隼人が驚いて周囲を見渡す。


「今の、地震だよね?」


 リーシャも不安そうな声を上げた。


 その揺れは短い間に収まったが、何か異様な気配が残ったような感覚が彼らの胸に残った。

 塔は依然として静かにそびえ立っているが、手形に触れた瞬間に地震が発生したことは偶然ではないように思えた。


「なにか……嫌な感じがする」


 ノアが不安げに言葉を漏らした。

 三人は塔を見上げながら、ただならぬ空気を感じ取りつつ、揺れがもたらした不吉な予感を胸に抱え始めた。


▼防衛システム起動

 

 隼人たちが塔に触れると、地中深く、塔の下に埋められた古代のシステムが静かに動き出した。

 長らく停止していたその防衛システムは再び起動し始めていたが、その音やメッセージはすべて地中でのみ再生され、地上の人々には一切知られることがなかった。


------------------------------

 認証システムの起動を確認。

 システム再起動プロセスを開始……

 メインユニットのスキャンを開始します。


 【エラー検出】

 一部のサブシステムに異常を確認。

 修復モジュールを実行します……

 修復モジュール起動中……

 修復完了。

 再起動プロセスを継続します。


 【外部接触シグナル確認】

 認証システム「HAND-V」による認証開始。


 認証成功───

 ───防衛システム「ALPHA-17」を起動します。

 防衛システムのアクティベーションを確認。

 外部センサーのスキャンを開始します……

 スキャン完了。

 環境データの一部が不足しています。


 【システム警告】

 IFF信号未受信。

 接近する全生命体からIFF信号が送信されていません。

 スキャン範囲内の全生命体を敵対勢力と見なします。

 

 【警告】

 敵対勢力を多数確認。

 セキュリティプロトコル「BETA-13」を発動します。


 ───カタパルトを開放準備中……

 防衛兵器:虫型機動兵器(No.12シリーズ)を起動中……完了。

 兵装を対人用兵器へ切り替え。

 全ユニットを出撃カタパルトへの移動開始。


 ───敵対勢力への攻撃を準備中。

 

 【情報更新】 全ての目標に対して攻撃準備が進行中。


 【システム監視モジュール起動】

 環境スキャン継続中……

 防衛兵器のリアルタイムデータ更新中……

 セキュリティレベルの再評価を実施します……

 【警告】 セキュリティレベル低下。外部干渉の可能性を示唆。

------------------------------


 システムが起動し、敵味方の識別ができず、全ての生命体を敵対勢力と判断。

 防衛プロトコルが発動され、地下の「カタパルト」が開放準備を進めていた。

 虫型の機動兵器たちは出撃体制を整えつつ、攻撃開始の指示を待機していた。


 地上では、その異常な動きに気づく者はおらず、塔を見上げる隼人たちはただ不安な空気を感じ取っているだけだった。

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