ノアの母の実家に到着
隼人たちは長い旅路を経て、ようやくノアの母親がいる町に到着した。
広がる街並みは活気に満ち、商人や住人たちが行き交う様子が見える。
遠くに大きな噴水がある広場が目に入り、町の中心であることが一目でわかった。
「ここが、私の母さんがいる町よ。結構大きいでしょ?」
ノアが笑顔で町を紹介しながら、隼人とリーシャに向けて説明を始める。
「確かに、思ったより大きな町だな。あの噴水広場が中央か?」
隼人は町の景色を眺めながら、中央にある噴水に目を向けた。
「そうよ。この噴水広場を基点にして、町は分かれているの。東に行けば商業区があって、いろんなお店が並んでるわ。西に行けば工業区で、鍛冶屋や工房なんかが多いの。そして北には、住宅街が広がっているのよ」
ノアはしっかりと町の構造を説明しながら、楽しそうに案内を続けた。
「なるほど。町がきちんと整備されているんだな」
リーシャも興味深げに町の構造を見ながら頷いた。
三人は噴水広場を過ぎ、北へと進んでいった。
ノアの母親がいる家は町の北側に位置している。
住宅街に入ると、建物が次第に大きくなり、立派な屋敷が並び始めた。
「ここから先が、母さんが今住んでいる家よ」
ノアが少し誇らしげに言いながら歩みを進めるにつれ、その家が次第に大きく見えてきた。
「おお……これは結構な大きさだな」
隼人は驚いたようにその大きな屋敷を見上げた。
「こんなに大きな家だったなんて……」
リーシャも目を見張っている。
「驚いたでしょ?ここは、母さんの兄が継いだ家なの。だから、私たちもここに住んでるのよ」
ノアの言葉に、隼人とリーシャはさらに驚きの表情を浮かべた。
目の前にそびえるのは、しっかりとした石造りの大きな屋敷で、美しく整えられた庭があり、立派な玄関が構えていた。
彼らが玄関に近づくと、すでに一人の使用人が待っていた。
その使用人は年配の紳士で、丁寧な身なりをしていた。
彼は優雅な動作で隼人たちを迎え入れる。
「ようこそ、お越しくださいました。私はこの屋敷の使用人、ハーバートと申します。ノア様、お待ちしておりました」
ハーバートは落ち着いた声で丁寧に挨拶をし、扉を開けて隼人たちを招き入れた。
「こちらへどうぞ。お嬢様がお待ちです」
ハーバートの案内で、隼人たちは少し緊張しながらも屋敷の中へと足を踏み入れた。
屋敷の内部は外観に負けず劣らず豪華で、隼人とリーシャはその贅沢な造りに再び驚いた。
隼人たちはハーバートに案内され、広々とした屋敷の廊下を進んでいた。
豪華な内装と重厚な扉が並び、彼らの前には立派な応接室が見えてきた。ノアの母親が待っている部屋だ。
「こちらが応接室です。お嬢様がお待ちしております」
ハーバートが静かに扉を開け、隼人たちを中へ案内した。
応接室に足を踏み入れると、そこには優しい表情を浮かべたノアの母親が座っていた。彼女はノアが来たことに気づくと、温かい微笑みを浮かべて立ち上がった。
「ノア、よく来たわね」
「お母さん!」
ノアは目を輝かせて駆け寄ろうとしたが、母親のお腹が大きく膨らんでいるのを見て、一瞬足を止めた。
彼女はゆっくりと母親に近づき、ふわっと優しく抱き着いた。
「お腹、大きいね……元気だった?」
「ええ、あなたも元気そうね」
母親は笑いながら、ノアの背を優しく撫でた。
その光景を見守っていた隼人とリーシャは、ほっとしたように微笑んだ。
二人が見つめる中、ノアの母親は再び彼らに声をかけた。
「リーシャ、手紙で聞いていたけど……本当に一緒に来てくれたのね!」
「はい!ミレイさん、お久しぶりです。無事にお会いできて嬉しいです」
リーシャも笑顔を浮かべ、すぐに応じた。
「エルズ村でお世話になった頃が懐かしいわ。本当にありがとうね」
ノアの母親は懐かしそうに微笑みながら、リーシャに向けて深く感謝の気持ちを込めていた。
「こちらこそ、元気そうで何よりです」
リーシャが笑顔で答えると、ミレイも嬉しそうに頷いた。
その後、隼人が軽く会釈をしながら、前に出て挨拶をした。
「初めまして、私はハヤトです。ノアには旅の途中でお世話になりました」
ミレイは彼の言葉に微笑みながら頷き、優しい目で彼を見つめた。
「そう、ハヤトさんね。私はノアの母親でミレイといいます。ノアが無事に旅を続けられているのも、あなたたちのおかげね」
ミレイはお腹を軽く撫でながら、穏やかな口調で感謝の言葉を続けた。
「ノアがこんなに元気で、優しい方たちと一緒にいられるなんて、母として安心しました。どうか、これからも彼女をよろしくお願いしますね」
「もちろんです」
ハヤトが優しく返事をし、リーシャも軽く頷いた。
「お母さん、大丈夫だから。ハヤトもリーシャもすごく頼りになるんだから」
ノアが笑顔で言いながら、再び母親の手を握った。
ミレイは再び彼らに感謝の視線を送り、応接室には温かく穏やかな雰囲気が広がった。
隼人たちがノアの母親ミレイと話をしている最中、応接室の扉が静かに開かれた。
その瞬間、部屋に少し厳格な空気が漂った。隼人たちが扉の方を振り返ると、そこには端正な顔立ちで、貫禄のある男性が立っていた。
「失礼します。ノア、久しぶりに戻ったようだな」
その男性は穏やかな口調で言いながら、しっかりとした歩みで応接室に入ってきた。
立派な体躯と鋭い目つき、そして洗練された服装が彼の地位を物語っていた。
「兄さん、お忙しいところをありがとう」
ミレイは微笑みながら、兄に向けて手を差し伸べた。
「もちろんだ。ノアが帰ってきたこと、そしてお前の体調も気になっていたからな」
カイエンは優しい目でミレイとノアを見つめた。
彼はノアに軽く頷きかけ、その後、隼人とリーシャに目を向ける。
「はじめまして。私はミレイの兄、カイエンです。家督を継いで以来、大商会の経営を任されております」
隼人は軽く会釈しながら、カイエンの威厳ある姿に少し圧倒されつつも、挨拶を返した。
「初めまして、私はハヤトです。お世話になっております」
続けてリーシャも頭を下げ、落ち着いた声で自己紹介をした。
「リーシャと申します。ノアとは村での幼馴染でここまで一緒についてきました」
カイエンは二人の挨拶を受けて、軽く頷いた。
「そうか、ノアが無事に旅を終えられたのは君たちのおかげだろう。感謝している。ここでの滞在が快適になるよう、私からもできる限りの支援をさせてもらおう」
その堂々とした言葉に、隼人たちは少し驚きながらも、心から感謝の気持ちを感じた。
カイエンの振る舞いには、大商会の経営者としての余裕と自信が感じられる。
「ありがとう、兄さん。彼らには本当にお世話になっているの」
ミレイが優しく笑顔を浮かべながら、隼人たちに視線を向けた。
「そうだな。ノアやミレイが安心できるのも、君たちのおかげだ」
カイエンは真摯な口調で感謝の言葉を続けた。
こうして、隼人たちはミレイの兄カイエンと対面し、彼のしっかりとした人物像に感銘を受けながら、今後の滞在についても安心を感じた。
大商会の経営者としての責任感と、家族への思いやりを兼ね備えた彼の存在は、隼人たちにとって頼もしいものであった。
応接室での会話がひと段落すると、ハーバートが静かに部屋に現れた。彼は軽く一礼をし、丁寧な口調で隼人たちに声をかけた。
「皆様、夕食の準備が整いました。どうぞ、食堂へご案内いたします」
「ありがとう、ハーバート。それじゃあ、皆で食堂へ行きましょう」
ミレイが微笑みながら立ち上がり、ノアと一緒に隼人たちを促した。
「助かります」
隼人が礼を言いながら、リーシャと共に食堂へと向かった。
食堂は広々としていて、豪華な装飾が施されていた。
壁に飾られた絵画や、柔らかい照明が温かい雰囲気を醸し出している。
長いテーブルの中央には、いくつかの料理が並べられており、上品な香りが漂っていた。
「どうぞ、ご自由にお召し上がりください」
ハーバートが席を勧め、隼人たちはそれぞれの椅子に座った。
「こんなに美味しそうな料理が用意されているなんて、ありがたいわ」
リーシャが感謝の気持ちを込めて言いながら、料理を前に嬉しそうな表情を浮かべた。
「さすがだね。これだけの規模の館なら、食事も素晴らしいものだろうな」
隼人も感心しながら、料理に手を伸ばした。
ノアは嬉しそうに笑いながら、隣の母親と話しつつ料理を楽しんでいた。
食事は和やかに進み、隼人たちは久しぶりの落ち着いたひとときを味わっていた。
食 事を終えると、ハーバートが再び現れて、静かに声をかけた。
「皆様、お食事が済みましたら、それぞれのお部屋へご案内いたします。どうぞお疲れを癒してください」
「ありがとう、ハーバート。今夜はゆっくり休みましょう」
ノアが軽く笑いながら、隼人たちに向けて言った。
「そうだな。しばらくのんびりしようか」
隼人は頷きながら、ハーバートの案内に従い立ち上がった。
彼らはそれぞれハーバートに導かれ、豪華な廊下を進んでいった。
館の中は静かで、重厚な扉が並んでいる。
やがて、ハーバートが1つ1つの部屋の前で足を止め、それぞれに部屋を案内した。
「こちらがハヤト様のお部屋です」
ハーバートは優雅に扉を開けると、中には広々としたベッドと、快適そうな家具が整えられていた。
「素晴らしい部屋だな。ありがとう」
ハヤトは感謝の言葉を述べ、部屋に足を踏み入れた。
続いて、リーシャも別の部屋に案内された。
「こちらがリーシャ様のお部屋です」
リーシャも部屋を見渡し、満足そうに微笑んだ。
「とても素敵な部屋ね。ありがとうございます」
ノアは母親と話すことが尽きないんだろう。
母親と共に部屋に向かっていった。
こうして、隼人たちはそれぞれの寝室に落ち着き、ゆっくりとした一夜を過ごすこととなった。




