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見えない敵との戦闘

 隼人がヴォルクハウンドの攻撃を回避し、ノアとリーシャをかばったことで、ひとまずは二人を守ることができた。

 だが、敵の動きはあまりにも素早く、完全に仕留めるチャンスはなかった。

 透明化しているヴォルクハウンドは隼人の目には映っているものの、まるで姿を見せないことを利用しているかのように素早く攻撃してくる。


「ノア、リーシャ、俺の後ろに下がってろ!」隼人は叫びながら、必死にライフルを構えた。


 しかし、ヴォルクハウンドは音もなく足を運び、隼人たちの周囲をすばやく移動している。

 攻撃の隙を見つけることができないまま、敵の速さに翻弄され続けていた。


「速すぎる……!」


 隼人は何度か狙いを定めて引き金を引こうとするが、ヴォルクハウンドの動きは常に一瞬先を行っていた。

 システムがその存在を捉え続けているにもかかわらず、その速度に追いつくことができない。


「まるで俺の動きを読んでいるみたいだ……」


 隼人は冷や汗を流しながら考えた。

 今の状況では、攻撃をしても無駄に終わる可能性が高い。

 ノアとリーシャを守るためには、まずは敵の動きを封じ込める手段を見つけなければならない。


「奴の狙いが分かれば……」


 隼人は自分に言い聞かせながら、周囲の状況を把握しようとしたが、ヴォルクハウンドの素早い動きに遮られてしまう。


「見えない敵を追いかけるなんて、悪夢だな……」


 ノアは隼人の背後で不安そうにしながらも弓を握りしめ、リーシャも同じく周囲を警戒し続けていた。

 彼女たちには何も見えないが、隼人が必死に守ろうとしているのが伝わっていた。


「隼人、大丈夫……?」


 リーシャが緊張した声で聞くが、隼人はすぐに答えず、敵の次の動きを追いながら集中力を高めていた。

 次の一手を決めるため、隼人は静かにライフルを構え直し、狙いを定めるタイミングを待っていた。


 隼人はヴォルクハウンドの速さに翻弄されながらも、冷静に状況を分析し始めた。

 このままでは、ノアとリーシャを守るのが精いっぱいで攻撃のチャンスを得ることができない。

 隼人は1つの策を考えた――ヴォルクハウンドの注意を自分に引きつけ、少しでも二人から距離を取ることだ。


「……ここで牽制し続けても勝てないな」


 隼人は静かにライフルを構え直し、ヴォルクハウンドの動きを追いながら、わざと大きく移動してみせた。

 敵の目には見えていないが、隼人の動きを警戒しているヴォルクハウンドは彼の動きを読み取り、わずかに反応を見せた。


「こっちだ……!俺を狙え」


 隼人は叫びながら、再びヴォルクハウンドに照準を合わせ、攻撃のタイミングを探りながら牽制の動きを取った。

 ヴォルクハウンドは音もなくその位置を変えつつ、隼人に注意を向けているようだった。


「ノア、リーシャ!少し下がれ!距離を取るんだ」


 ノアとリーシャは隼人の指示に従い、すぐにその場から距離を取った。

 二人は周囲を警戒しつつ、慎重に隼人の後ろへと移動した。


 隼人は敵の動きに集中しながら、徐々にノアとリーシャから距離を取り始めた。

 ヴォルクハウンドの注意を自分に引き付けながら、慎重に足を運ぶ。

 周囲の静寂の中、隼人はその機動兵器としての優れた能力を発揮し、敵を翻弄するように動き続けた。


「そうだ……こっちに集中しろ」


 ヴォルクハウンドは確かに隼人に対して警戒を強め、その動きを見ていた。

 攻撃の隙を与えないまま、隼人の動きに反応するかのように、ゆっくりとその距離を詰めてきた。


「いいぞ、こっちだ……!」


 隼人はさらに大胆に移動し、ヴォルクハウンドとの距離を詰めながら、わざとノアとリーシャから離れるように動いた。

 自分を餌にして敵の注意を完全に引きつける作戦が、少しずつ成功し始めていた。


 だが、油断はできない。

 ヴォルクハウンドの動きは依然として速く、隙を見せれば瞬時に襲いかかってくる。

 隼人は次の手を考えながら、敵との間合いを調整し続けた。


 隼人がヴォルクハウンドを巧みに誘導し、ノアとリーシャから少しずつ距離を取っていったおかげで、二人に一時的な余裕が生まれた。

 ノアは隼人の奮闘を見つめながら、心の中に複雑な感情が湧き上がっていた。


「また……何もできないままだ……」


 ノアは前回の首領格のイノシシ戦を思い出し、隼人に助けられたことが脳裏をよぎった。

 今回も同じように、隼人が戦いの中心となり、自分はただ後ろで見守るだけになっている現実が、胸を締め付けた。


「どうして、私には何もできないんだろう……」


 ノアは悲観的な表情で弓を握りしめた。

 役に立たなければと思ってはいるが、敵が見えない状況ではどうしても行動に移すことができない。

 気持ちが沈むノアを見てリーシャはその様子に気づき、明るい声で声をかけた。


「そんなに落ち込まないで、ノア!実はね、いいアイデアがあるの」


 ノアは驚いて顔を上げた。

 リーシャはにっこりと笑いながら、バックパックから小さな瓶を取り出した。

 それは道具屋で購入した赤いポーションだった。


「これはね、爆発ポーションで、衝撃を与えることで小範囲の爆発を起こすらしいのよ!私がこの爆発ポーションを地面に仕掛けるから、隼人にヴォルクハウンドを誘導してもらって、ヴォルクハウンドが上に来た時にノアが弓で狙い撃って爆破するの!」


 ノアは驚いて顔を上げた。「爆発ポーション……!?そんなの、道具屋で……」


「そう!隼人が戦ってる間に私も考えたの。これで、あの速いヴォルクハウンドを止めることができるかもしれない。隼人に誘導してもらって、ノアが狙撃して……私たちもやるしかないわ!」


 リーシャの目は輝いており、その自信に満ちた提案にノアは驚きを隠せなかったが、少しずつ気持ちが前向きになっていった。

 自分にもできることがある、そんな気がしてきた。


「わかった……やってみる。隼人が時間を稼いでくれている間に、私が狙いを定める」


 リーシャは満足げに頷き、二人で素早く作戦を立て始めた。

 隼人がヴォルクハウンドを引きつけているうちに、作戦を実行するチャンスが訪れた。

 彼女たちは、隼人の努力に報いるためにも、手を休めることなく準備に取りかかった。


 隼人はヴォルクハウンドを巧みに誘導し続けていたが、その速さと狡猾な動きに、常に注意を張り詰めていなければならなかった。

 隙を見せれば二人を守ることも、自分を守ることもできない。

 だが、隼人は敵の動きを封じる策がないまま、焦り始めていた。


 その時、遠くからリーシャが大きな声で叫んだ。

 だが、隼人にはその声がはっきりと聞こえなかった。

 敵の動きと風の音にかき消され、彼女の言葉は不明瞭だった。


「……何か言ってるが……!」


 隼人は一瞬だけリーシャの方に目をやったが、次の瞬間、システムがリーシャの声をキャッチした。


 ――「音声確認……リーシャ・指示……指さし方向を確認」――

 ――「爆発物設置位置を表示します……」――


 隼人の視界にリーシャが指さした方向がハイライトされ、そこに爆発物が設置されていることがシステムに表示された。

 瞬時に、隼人はリーシャの意図を理解した。


「なるほど……そういうことか!」


 隼人はすぐに作戦の意図を理解し、ヴォルクハウンドをその方向に誘導するための動きを開始した。

 ノアが弓を構え、リーシャが仕掛けた爆発ポーションの場所へ、ヴォルクハウンドを誘い込む作戦が動き出す。


「よし……奴を爆発のところへ追い込むぞ!」


 隼人はヴォルクハウンドの動きに注意を払いながら、慎重に爆発物の方へ誘導するための立ち回りを始めた。


 隼人はシステムの情報を頼りに、ヴォルクハウンドを爆発物のある地点へ誘導する準備を整えた。敵の素早い動きと透明化という厄介な能力を持つヴォルクハウンドを仕留めるためには、隙を作るしかない。


「さて……ここからだ」


 隼人は息を整え、慎重に足を運び始めた。

 ヴォルクハウンドの位置を視界に捉えながら、わざと少しゆっくりとした動きで敵の気を引く。

 ヴォルクハウンドもそれを察知したのか、隼人の動きを見ながらじりじりと距離を詰めてきた。


「もっとこっちだ……来い……!」


 隼人は徐々に爆発物の位置へと近づきながら、ヴォルクハウンドを誘導するために大きく回り込む動きを繰り返した。

 ヴォルクハウンドの速さには注意が必要だが、その敏捷さを逆手に取ることで、罠にかけるつもりだった。


「もう少し……あと少しで……」


 隼人は自分の立ち位置を調整し、ヴォルクハウンドがまさに爆発物の上に来る瞬間を狙い始めた。

 爆発ポーションの位置まで残りわずか。だが、ヴォルクハウンドはその動きを見逃さず、突如として加速を始めた。


「くそっ、速い!」


 一瞬、ヴォルクハウンドが隼人の横をすり抜けようとするが、隼人は素早くその動きを読み、体を回転させて追いかけた。

 システムのサポートを最大限に活用し、わずかな隙も見逃さないように目を光らせる。


「今だ……!」


 ついに、ヴォルクハウンドが爆発ポーションの位置に到達した瞬間、隼人は叫んだ。


「ノア、今だ!撃て!」


 ノアは隼人の指示に従い、弓をしっかりと引き絞って狙いを定めた。

 爆発ポーションの位置を確認し、手元の震えを抑えながら、矢を放った。


「はぁっ!」


 矢がヴォルクハウンドの真下に設置された爆発ポーションに命中した。

 瞬間、爆発が起こり、激しい閃光と衝撃が周囲を包んだ。


「よし!」


 爆発が起こり、激しい閃光と衝撃が周囲を包んだ。

 ヴォルクハウンドは爆風によって大きく揺さぶられ、透明だった姿が一瞬だけ浮かび上がった。

 その瞬間、隼人はヴォルクハウンドが動きを止めたことを確認した。


「動きが止まった……!」


 しかし、隼人はすぐに気を引き締めた。

 爆発でダメージを与えたものの、まだ完全に撃破したわけではない。

 ヴォルクハウンドは息絶えることなく、その場に留まっていた。


「……まだだ、終わっていない」


 隼人は素早くライフルを構え直し、ヴォルクハウンドの頭部に照準を合わせた。

 敵の姿がはっきりと見える今が、唯一のチャンスだった。

 彼は息を止めて狙いを定める。


「これで終わりだ……!」


 閃光が夜の闇を切り裂き、ライフルの弾がヴォルクハウンドの頭部に命中した。

 正確な一撃が獣の命を絶ち、ヴォルクハウンドはその場に崩れ落ちた。


「……これで、終わったか」


 隼人は息を整え、敵の動きが完全に止まったことを確認した。

 爆発とライフルの一撃で、ついにヴォルクハウンドを撃破することができた。

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