魔石の鑑定結果
次の日、隼人、ノア、リーシャの三人は早朝に宿を出て、再びギルドへと向かった。
昨晩の休息で体も心もリフレッシュし、今日はどんな依頼があるかを確認するために意気揚々と足を運んだ。
ギルドの中は既に賑わっており、冒険者たちが次々と依頼を受けている。
隼人たちは掲示板の前に立ち、貼り出された依頼票を一枚一枚確認し始めた。
「どれにする?」とノアが問いかけながら簡単な護衛依頼に目を留めた。
「護衛依頼ならそんなに危険じゃないし、報酬もまずまずだね。でももう少しアクティブな依頼があってもいいかな」
リーシャは討伐依頼に目を留めていたが、少し難易度が高いものばかりで、すぐにそれを諦めた。
「討伐依頼も魅力的だけど、今は無理しない方が良さそうね。ほかにも調査系の依頼があるみたいだし、それもありかも」
隼人は掲示板をじっと見つめ、数ある依頼票の中から自分たちに合いそうなものを探し出した。
「これなんかどうだ?森の調査依頼だ。俺たちも慣れてきたし、先日の出来事もあるから、ちょっと調査してみるのも悪くない」
ノアとリーシャはその依頼票を確認し、同意の表情を浮かべた。
「うん、これならできそうだね!」
「そうね、行けそうな気がするわ」
三人は依頼票を手に取り、受付へと向かった。
受付嬢はにこやかに彼らを迎え、依頼票を受け取ると、ふと思い出したように話しかけてきた。
「そういえば、お客様が以前討伐されたイノシシの魔石について、鑑定結果が出ました」
隼人たちはその言葉に顔を上げ、気になっていた魔石の話題に耳を傾け、隼人が確認するように尋ねた。
「鑑定結果はどうだったんだ?」
受付嬢は少し申し訳なさそうな顔をしながら答えた。
「正確な情報はまだお伝えできないのですが……鑑定士の結果が出たあと、すぐにギルドマスターの手に渡り、今は領主との交渉中とのことです。どうやら魔石には特別な価値があるようで、詳細についてはもう少しお待ちいただくことになります」
ノアが少し驚いた様子で問いかけた。
「領主と交渉中?そんなに特別なものだったの?」
受付嬢は頷きながら言葉を続けた。
「はい、ただ詳細については現時点では非公開です。報酬についても、その交渉次第で決まるということです。しばらくお待ちいただくことになりそうですが、進展があればすぐにご連絡しますね」
隼人は少し考え込んでから、軽く頷いた。
「分かった。まあ、急ぎじゃないし、待つしかないか」
リーシャもその話を聞き、少し安心したように言った。
「なるほど……それなら、今は他の依頼に集中しましょう」
受付嬢に礼を言い、隼人たちは依頼票を持ってギルドを後にした。
次の冒険に向け、三人は新たな目的を定めて歩みを進めることにした。
▼森の調査依頼
隼人たちは、魔石の進展が無いことを確認した後、森の調査依頼を受けて再び森の中へと足を踏み入れた。
静かな風が木々を揺らし、先日の激しい戦いが嘘のように平穏な雰囲気が広がっている。
ノアが周囲を見回しながら口を開いた。
「先日あんなことがあったのに、こんなに平穏だなんて不思議だね。まるで何事もなかったかのように静か……」
隼人は頷きながら周囲を見渡した。
「確かに、あのイノシシの騒動があった後だとは思えないくらい落ち着いてるな。何か異変が続いていると思ってたけど、問題なさそうだ」
リーシャも慎重に辺りを観察しながら言った。
「こうやって落ち着いているなら、この森は今のところ安全ってことね。調査の結果が『異常なし』で済むのは良いことよ」
三人は森の奥深くまで進んだが、やはり目立った異常はなく、隼人たちは安心した様子で調査を終えることにした。
「ここも問題ないな。これで調査は完了だ」と隼人が締めくくると、ノアとリーシャも笑顔で頷いた。
ギルドに戻った三人は、早速受付で報告を済ませた。
「森の調査依頼完了しました。特に異常はありませんでした」と隼人が報告すると、受付嬢は笑顔で頷いた。
「お疲れ様です。問題がなかったのは何よりです。依頼はこれで完了となります」
報酬を受け取り、隼人たちは一息つきながらその日の仕事を終えた。
森での調査も無事に終わり、何事もなく穏やかな一日が過ぎていく。
▼翌日 - ギルドマスターからの呼び出し
翌日、隼人たちは再びギルドに足を運び、依頼を確認しようとしていたその時、受付嬢が慌てた様子で声をかけてきた。
「隼人さん、ノアさん、リーシャさん、少々お待ちください。ギルドマスターが皆さんをお呼びです。お時間をいただけますか?」
突然の呼び出しに隼人たちは顔を見合わせた。
何が起こったのか分からず、少し戸惑いが走る。
隼人は一歩前に出て、受付嬢に問いかけた。
「ギルドマスターが?俺たちに何かあったのか?」
受付嬢は慌てて首を振った。
「いえ、何か問題があるわけではないんです。ただ、ギルドマスターが皆さんにご確認したいことがあるとの事です。どうかご安心ください」
それでも隼人は少し疑念を抱いたまま、ノアとリーシャの方に目を向けた。
「どうする?」
ノアは少し緊張した様子だったが、すぐに頷いた。
「特に問題がないなら、行ってみるしかないよね」
リーシャも冷静に同意し、肩をすくめた。
「そうね、直接会って話を聞けばわかることだし」
隼人は一度頷き、受付嬢に返事をした。
「分かった。案内してくれ」
こうして三人は受付嬢に案内され、ギルドマスターの部屋へと向かった。
▼ギルドマスターの部屋
重厚な扉が開かれ、隼人たちはギルドマスターの部屋に通された。
部屋の壁には大きな地図や剣が飾られ、ギルドマスターが机の向こうで待っていた。
ギルドマスターは静かに手を挙げ、三人に椅子を指し示した。
「まずは、座ってくれ」
隼人たちは促されるまま、用意された椅子に腰を下ろした。
バルゴスは彼らを見渡し、少し微笑みながら話し始めた。
「よく来てくれた。まずは自己紹介をしておこうか」
彼は軽く背筋を伸ばし、静かな声で続けた。
「俺の名前はバルゴス。このギルドのマスターを務めている」
バルゴスは笑みを浮かべながら、彼の言葉からは冒険者としての自信と経験が滲み出ていた。
彼の体格は非常に大きく、筋肉質で、その堂々たる姿が一目で冒険者としての歴史を物語っていた。
肩幅は広く、腕も太く、戦士としての強さが今も感じられる。
「さて早速だが君たちが討伐したイノシシについて、もう少し詳しく聞きたい。特に、魔石があったそのイノシシがどんな獣だったのか知りたい」
隼人は慎重に言葉を選びながら答えた。
「森の奥で遭遇したイノシシでしたが、他のイノシシとは明らかに違っていました。異常に大きくて、動きや執念も異常でした。まるで何かに操られているかのように感じました」
ノアが補足するように言った。
「普通の獣なら、あそこまで執拗に攻撃してくることはないはずです。でも、そのイノシシはまるで命令を受けているかのように動いていたんです」
バルゴスは考え込みながら頷き、静かに言った。
「そうか……それは確かに普通の獣ではないな。魔石が関係しているのかもしれない。実は、この魔石について領主から聞いた話がある」
彼は一瞬周囲を見回し、慎重に言葉を続けた。
「この魔石には、王都で王族だけが使用している小型の『アルテウム・ギア』のコアと同じ性質があることが確認されている。『アルテウム・ギア』は古代の技術で作られた自律型の小型ロボットで、今ではそのコアは産出されていない」
隼人たちはその話に驚きを隠せず、ノアが目を見開いた。
「そんな貴重なものが……」
バルゴスは頷いて続けた。
「領主はこの魔石の価値を知っており、すでに買い取ることを決めている。彼はこの魔石を王族へ献上するつもりだ。つまり、この魔石は極めて重要なものになる」
リーシャが少し驚きながら尋ねた。
「じゃあ、私たちが手に入れた魔石は王族に渡るんですか?」
バルゴスは微笑んで頷いた。
「そういうことになるな。君たちが手にしたものがどれだけ特別かよく分かるだろう?報酬については領主との交渉で決定するが、しばらく時間がかかるかもしれない。とはいえ、領主がしっかりと君たちの功績を評価することは確かだ」
隼人はその重みを感じながらも静かに頷いた。
「わかりました。しばらくは結果を待つことにします」
バルゴスは満足げに微笑み、再び彼らに目を向けた。
「君たちの討伐があってこその発見だ。これからも期待している。引き続き、他の依頼を自由に受けてくれ。何かあれば、また知らせる」
隼人たちは礼を言い、バルゴスの部屋を後にした。魔石の価値とそれが王族に渡るという事実は、彼らに新たな冒険の可能性を示唆していた。




