表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/228

新たな道筋

 隼人の手は、倒れたイノシシの巨体からようやく離れた。

 首領格とされるその獰猛なイノシシが地に伏し、静寂が再び森を包み込む。

 汗ばんだ額に手をやり、隼人は深く息を吐いた。


「ふう……これで終わりか?」


 その場にいたノアとリーシャも、互いに顔を見合わせてから隼人の方へ駆け寄った。

 ノアは感激の表情で隼人に言葉を投げかける。


「すごい……! ハヤト、あなたがいなければ、こんなの絶対に倒せなかったよ!」


 一方、リーシャは少し興味深げな表情で隼人に近づいた。


「やるじゃない、どうやってやったの?」


 隼人は少し得意げに微笑むと、誇らしげに言った。


「実はな、新しいシステムが追加されたんだよ。いろいろ便利になったんだ」


 リーシャの視線は好奇心で輝き、さらに問いかける。


「新しいシステムね……具体的には?」

「まあ、言ってみれば、状況に応じて戦術を最適化できるようになった。あのイノシシだって、そのおかげで倒せたってわけさ」


 隼人はあっさりと言うが、その背後にはかなり高度な技術があるのが明らかだった。

 リーシャは満足げに微笑み、肩をすくめた。


「なるほどね。さすが起動兵器……普通の人間じゃ真似できないわけだ」


 ノアも感心した様子だったが、次の瞬間、森の奥から風が吹き抜け、暗い木々がざわめく音が二人の耳に届く。


「さ、これで終わりにしよう。とりあえず森から出るか」


 イノシシ達から魔石を取り出してから隼人は提案し、ノアとリーシャもそれに頷いた。

 だが、いざ森を抜け出そうと歩き始めると、どの道が正しいのか次第に分からなくなってきた。

 木々が高く覆いかぶさり、視界はどんどん悪くなる。道標になるようなものも見当たらない。


「こっち……だったよね?」とノアが不安げに呟く。


「いや、さっき通ったところとは少し違う気がする」とリーシャも不安そうな顔をする。


 隼人は眉をひそめながら、立ち止まって周囲を見回した。

 確かに、先ほどの激闘で気を取られていたせいで、正確な道を見失ってしまったようだ。


「……仕方ないな。少し立ち止まって考えよう」


 彼らは一度歩みを止め、森の中でどうすべきかを考え始めた。

 時間が経つごとに、森の暗さが増していき、焦燥感がじわりと広がり始める。


 その時、隼人の視界に異常が走り、内部システムが反応する。

 彼の目に、衛星から送られてくる地図情報が流れ込み、目の前に立体的な地形図が展開された。


 ――「衛星接続開始、地形情報を受信しました」――


 隼人はにやりと笑みを浮かべ、MAP情報を確認した。


「……これなら、もう迷うことはなさそうだ」

「え?」


 ノアとリーシャが不思議そうな顔をする中、隼人は軽く肩をすくめた。


「さあ、安心しろ。ちゃんと抜け道が分かった。ついて来い」


 自信に満ちた隼人の言葉に、二人は怪訝な表情で彼の後に続いた。

 こうして、彼らは衛星からの地図情報を頼りに、無事に森を抜け出すことができた。


 森を抜けると、空にはまだ薄明かりが残っていた。

 夕焼けにはまだ少し時間があるが、空はオレンジ色に染まりかけている。

 隼人たちは一息つく間もなく、急いで町に向かって歩き出した。


「町の門が閉まるまで、時間があまりないかもしれない。急いだほうがよさそうだ」


 隼人が足を速めると、ノアとリーシャもそれに続く。

 町の門は日没とともに閉じられ、夜間の出入りは不可能だ。

 それを過ぎると、外に一夜を過ごさなければならない。


「あとどれくらいで着けるかな?」とノアが不安そうに尋ねる。

「急げばなんとか間に合うはずだ」


 隼人は冷静な声で答えたが、内心では時間との戦いに焦りを感じていた。

 森の出口から町まではそれほど遠くはないが、日没までにはあまり余裕がない。

 彼らは全力で町へ向かって進んだ。


 ようやく町の門が見え始めた頃、空はすっかり赤く染まり、日没が近づいていることを感じさせた。


「もうすぐだ……急げ!」


 隼人の声に応じ、三人はさらに速度を上げた。

 門の守衛たちも閉門の準備を始めており、門が少しずつ閉まり始めるのが見える。


「間に合って……!」


 ノアの声が焦りを帯びる中、隼人は最後の力を振り絞って駆け込んだ。

 ちょうど門が完全に閉まる直前に、彼らはなんとか町に滑り込んだ。


「ふぅ……なんとか間に合ったな」


 息を切らしながら、隼人は深呼吸をして汗をぬぐった。

 ノアとリーシャも同様に息を整え、ほっとした表情を見せた。


「危なかったね……もう少し遅かったら、外で夜を明かさないといけなかったかも」


 ノアが安堵の声を上げると、隼人は微笑んだ。


「まあ、無事に入れたんだから良かったじゃないか。さて、次はギルドだな。討伐報酬をもらわないとな」


 彼らは町に足を踏み入れると、そのまま冒険者ギルドへと向かった。

 夜になる前に討伐の報告を済ませておきたいところだ。


 冒険者ギルドの扉を開けると、いつも通りの活気に満ちた光景が広がっていた。

 冒険者たちは依頼掲示板の前に集まり、情報を確認したり、依頼を受けたりしている。

 隼人たちは受付に向かい、少し疲れた様子でカウンターに立った。


「いらっしゃいませ。今日はどのようなご用件でしょうか?」


 受付嬢が微笑んで出迎える。

 隼人はカバンから討伐の証として「魔石」を取り出し、カウンターに置いた。


「森でイノシシを討伐した。これがその証拠だ」


 取り出した魔石は普通のイノシシの魔石が数個と、首領格のイノシシの魔石を1個を机の上に出す。

 首領格のイノシシから出た魔石は、他のイノシシから取れるものと大きさは変わらなかったが、どこか異様な光を放っていた。

 通常の魔石が持つ淡い輝きとは違い、この魔石はその表面に奇妙な模様が浮かび上がっており、不自然な光が漏れ出ている。

 受付嬢は一目見て、その魔石に異常を感じ取った。


「確かに、イノシシの魔石ですね……しかし、1つだけ何か他のものとは違うように見えます。特に、普通の魔石にはない奇妙な模様が……」


 彼女は魔石を慎重に手に取り、光にかざしてさらに調べたが、その異常性に困惑していた。

 背後に並んでいた冒険者たちも、魔石に目を奪われ、小声でささやき始めた。


「おい、あの魔石、何か変だな」

「確かに……普通のイノシシの魔石とは違う感じがするな」


 隼人は一度軽くため息をつき、ノアとリーシャに目配せしてから、口を開いた。


「正直、その魔石が出たイノシシは普通じゃなかった。何かに乗っ取られていたような感じがした。ただの獣じゃなかったように感じる」


 隼人の言葉に、受付嬢はさらに困惑した表情を浮かべたが、すぐに真剣な表情で魔石をカウンターに戻した。


「なるほど……それがこの魔石にも影響を与えているのでしょうか。ですが、現時点ではこの魔石の鑑定が難しい状況です。特別な専門家による鑑定が必要ですので、数日お時間をいただけますか?」


 彼女は隼人たちにそう告げた。

 特別な魔石である可能性が高いため、慎重に扱わざるを得ないということだ。

 隼人は頷き、特に急ぐ理由もないため、了承した。


「了解した。鑑定結果が出たら教えてくれればいい。こちらから急ぐつもりはない」


 受付嬢はほっとした様子で微笑み、記録を残すために魔石を手元に保管した。


「ありがとうございます。討伐報酬は通常通りお支払いさせていただきますが、魔石に関する追加の報酬は鑑定結果が出てからとなります」


 受付嬢が手渡したのは小さな袋だった。

 中にはそれほど多くないが、しっかりとした報酬分のゴールドコインが入っている。

 ノアは少し微笑みながらそれを見つめた。


「まぁ、今回はイノシシだけだったしね……それでも十分じゃない?」


 隼人もその報酬に納得し、軽く袋を持ち上げた。


「そうだな。これでしばらくの生活には困らないさ」


 リーシャも頷き、冷静に状況を見守っていた。

 魔石の謎が残るものの、今はとりあえず討伐の結果に満足すべきだった。


「お疲れ様でした。鑑定結果が出次第、ご連絡いたします。今夜はゆっくりお休みください」


 隼人たちは頷いて礼を言い、ギルドを後にした。

 外に出ると、夜の町は静かに光を灯し、彼らを迎えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ