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王子一行、未知の技術と遭遇

 レオンハルト王子一行は、王都を出発してから南下を続け、道中は平穏そのものだった。

 行列は整然と進み、警戒態勢を崩さない衛兵たちの動きが、どこか頼もしさを感じさせる。


 数時間が経ち、陽が少し高くなった頃、エルバートが馬車の運転席から声を上げた。


「ここで一旦進行を停止します!この付近で食事の時間を取る!」


 馬車は順次停車し、衛兵たちが手際よく作業を開始した。

 荷台から食材や調理器具が取り出され、焚火の準備が始まる。

 数名の衛兵は川へ向かい、水を汲んで戻ってくる。

 すべてが無駄のない動きで行われ、短時間で食事の準備が整えられていった。


 隼人はその様子を見ながら、ライナーとマリアに声をかけた。


「俺たちも何か手伝おうか?」

「大丈夫!私たちにまかせなさい!」

 

 マリアはテンション高く言い放ち、目の前で迅速に進む衛兵たちの作業に、隼人たちは完全に出る幕を失った。


「皆さん手際がいいですね……」


 リーシャが呟きながら、衛兵たちの動きに目を奪われている。


 その様子を見ていたレオンハルト王子が、荷台から顔を出して隼人たちに声をかけた。


「気にするな。衛兵たちに任せておけばいい。彼らはこういった作業には慣れているからな。君たちは少し休んでおくといい」

「わかりました。それではお言葉に甘えて」


 隼人たちは王子の提案を受け入れ、礼を述べ、衛兵たちの動きを見守ることにした。


「少し周囲を確認してきます」


 食事の準備が進む中、ノアが隼人に視線を向け、レオンハルト王子に声をかけてその場を離れた。


「俺も念のためついていくよ」

 

 隼人は軽く頷き、ノアの後に続いた。


 二人は一行から少し離れ、周囲が静かで、話し声が届かないほどの距離まで歩いていった。

 木々の間を抜けると、静寂が広がる小さな空き地に出た。


「ここなら大丈夫かな」


 ノアは立ち止まり、ペンダントを手に取った。

 その金属製の装飾品を軽く操作すると、微かな光が点灯し、通信が開始される。


 数秒後、ルクシアの落ち着いた声がペンダント越しに響いた。


「ノア様、どうされました?」


 ノアは状況を説明した。


「今、少し休憩していて、これから食事をします。その後、南の草原に着く予定です」

「承知しました」


 ルクシアの声は正確で冷静だった。


「到着時に輸送艇を向かわせます」


 ノアは少し申し訳なさそうに声を落とした。


「ごめんね、今回は連れていく人が多くなってしまったの。それに、ルクシアさんたちに調べてもらいたい大きな機械もあるの」

「ほう、機械ですか」


 ルクシアの声が少し興味深げなトーンに変わった。


「その機械とは、どの程度の大きさですか?」


 ノアは考えながら答えた。


「とても大きな人型の機械なの。馬車よりも大きいくらいかな?」

「ほう……」


 ルクシアは短く返し、数秒の間を置いてから言葉を続けた。


「わかりました。それでは、それも乗せられるような輸送艇を準備します」


 ノアは安堵の笑みを浮かべて頷いた。


「お願いね」

「かしこまりました。それでは準備を整えてお待ちしております」


 ルクシアの声が通信の終わりを告げた。


 通信が切れると、ノアはペンダントを閉じて隼人の方を振り返った。


「よし、大丈夫そう。あの大きな機械を運ぶ準備も整うみたい」


 隼人は頷き、ノアの背中に少し肩を並べながら歩き出した。


「そりゃ助かる。だけど、これからが本番だな」


 二人は一行の元へと戻る道を進みながら、それぞれの考えを巡らせていた。

 ノアと隼人は一行の元に戻った。

 衛兵たちはすでに食事の片付けも終えており、整然と次の移動に向けた準備を整えていた。

 隼人たちも簡単に準備を済ませ、全員が馬車に乗り込み、再び南の街道を進み始めた。


 やがて目的地に近づいた頃、ノアがミランダに声をかけた。


「ミランダさん、一旦ここで停止をお願いします」


 ミランダは即座に反応し、馬車を停車させる指示を出した。


「一時停止します!全員、準備を!」


 衛兵たちが素早く馬車を止め、一行は静寂の中に包まれた。


 ノアはミランダのもとに寄り、指示を続けた。


「ここから街道を外れますが、馬車も通れる場所を誘導します。私の指示する方向に進んでください」


「了解しました」


 ミランダは頷き、衛兵たちにも声をかけた。


「ノア様の指示に従うように」


 ノアはミランダに指示を出し、静かに街道をそれて右側の道へ誘導し始めた。

 馬車はゆっくりと移動し、草原を進む。

 しばらく進んだ後、ノアが振り返り、声を上げた。


「ここです。一旦進行を停止してください」


 馬車が次々と止まり、一行は馬車から降りて四方を見渡した。

 周囲はただの広い草原で、木々や小さな丘が点在するだけだった。

 風が緩やかに草を揺らす中、特に異変は感じられない。


 デストールが周囲を見回しながら、首を傾げた。


「何もありませんが……???」

「確かに」


 レオンハルト王子も同意し、周囲を警戒するように見渡す。


「もう間もなくです」

 

 ノアは少し微笑みながら答えた。


 その時――遠くの空から低い轟音が響き始めた。

 音は徐々に大きくなり、その方向に目を向けると、何か巨大な物体がこちらに向かってくるのが見えた。


「何だ、あれは……?」


 ライナーが思わず声を漏らす。


 一方でデストールは、目を輝かせて興奮気味に叫んだ。


「ま、ま、まさか!?」


 彼は飛び跳ねるような勢いで前へ進み、完全にテンションが振り切れていた。


 やがて、それは一行の前方に降下し、大きな輸送艇が着陸した。

 草原が風圧で大きく揺れ、一瞬全員が息を呑む。


「前に見たやつよりも大型だな……」

 

 隼人は目を細めながらその姿を見上げ、呟いた。

 輸送艇の搭乗口が開き、中からフロリアが降りてきた。

 整った顔立ちと凛とした姿が印象的で、彼女はノアたちの方に向かって丁寧に一礼した。


「お待たせいたしました、皆様。この船の後部ハッチを開けますので、馬車と馬ごとお乗りください」


 その光景に、レオンハルト王子や衛兵たちは呆然と立ち尽くし、しばし言葉を失っていた。

 その沈黙を破るように、デストールが突然動き出した。


「こ、これは……!?何だこれは!?」


 彼は輸送艇に駆け寄り、その外壁をペタペタと触り始めた。


「素材は何だ?どうやって浮いていた!?これはどんな技術だ!?」


 フロリアはその光景を見て、困惑した表情をノアに向けた。


「ノア様、あの方々は……?」


 ノアは苦笑しながら小声で答えた。


「あの人たちは、この国の偉い人たちなの」


 その時、意識を取り戻したレオンハルト王子がフロリアの方に歩み寄り、一礼して話しかけた。


「初めまして。私はレオンハルトと申します。ん……?あなたは確か……村の討伐の際にいらっしゃった方ですよね?」


 フロリアは王子に一礼を返し、静かに答えた。


「はい、その節はお世話になりました」


 他の衛兵たちもようやく動き出し、それぞれ簡単な挨拶をフロリアに交わした。

 しかし、デストールは依然として輸送艇をペタペタと触り続けていた。


「デストール、やめろ!」


 レオンハルト王子がデストールに呼びかけると、デストールはフロリアの方を向き、フロリアに詰め寄ろうとした。


「これは何だ?どういう構造になっている!?」

「いい加減にしてください!」


 ライナーが後ろからデストールを取り押さえ、場の混乱をなんとか収めた。


「申し訳ありません」


 エルバートが頭を下げ、フロリアに詫びた。


「いえ、大丈夫です」


 フロリアは苦笑を浮かべつつも、冷静に対応した。

 その後、フロリアの指示のもと、馬車と馬は後部ハッチから輸送艇に乗り込んだ。

 一行全員が搭乗し、荷物と人員が整えられた頃には、草原に広がる緊張感が少しずつ和らいでいった。


 これからの旅路に、再び未知への期待と緊張が高まっていく中、一行は次の目的地へと飛び立つ準備を整えていた。

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