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同期の君が言うことには  作者: 卯月はる
気の合う同僚?
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なんで、翠が、そんなこと。


酒の席は結構好きだ。


学生時代のように激しい飲み会ではないが、ワイワイ楽しい空気だ。

飲める人は飲める人と、浴びるほど飲んだらいい。

先輩社員に勧められて困ってる可愛い後輩ちゃんがいたらお酒をもらってあげて、先輩も楽しく飲ませるのを勝手にミッションだと思っている。


私もそんなに強くはないけど、それよりみんな楽しく飲むのが大事!


意外とザルの真紘はスイスイ飲んでいる。


ほぼ飲めない翠は、野原さんを始め女子達に囲まれてよろしくやっている。

よそ行きの涼しい顔だ。

翠ってモテるんだなあ。キレーな顔してるもんなあ。


翠はあの中の誰かが好きだったりするのかなあ。みんな可愛いし。


なんて思いながら飲んでたら、楽しさも相まって、ペースを失敗した。


フワフワする。楽しい。


「すーいー」


店を出たところで、ガードレールに凭れていた翠の方へ向かいながら、酔いが回って足がもつれた。


タボっとしたニットカーディガンに黒の大判ストールを巻いて、黒のスキニー。中はワイシャツなのに翠らしくておしゃれだなあ。


「飲み過ぎだ、バカ」


そのまま翠の胸にダイブした。

あー翠のいい匂いだ。この匂い好き。


「んー、だいじょぶ。にじかいー」

「ムリだろ」

「まだのむー」

「オイ、寝るな」


翠が引き剥がさないことをいいことに、そのまま眠気に襲われるまま目を閉じた。


「あかねー」


周りがザワザワしている気がしたが、私はそこから記憶がない。




◇◆◇




あー頭いた。


休みだからって飲みすぎたんだっけ。もう二度と酒なんて飲まない。


…人ってほんと懲りないよなあ。


パチリと目を開けると、ゴツゴツした体に抱き締められていた。


「ーーーっ!?」


声にならない声が出た。


飛び込んできたのは翠の寝顔で。


当然メガネはしてなくて、長いまつ毛。間近で見るキレーな顔に、つい見惚れそうになる。


「え。え?」


下着は…してる。


キャミソールは着ている。ウエストゴム仕様のワイドパンツは履いたまま。


「はよー茜」


目が覚めたらしく、目をこする翠は…Tシャツだけ。


ぎゅっと私の頭を胸に抱き込む翠。唇が額に触れる。


ーーーえ、なんで、翠が、そんなこと。


咄嗟に翠から離れようとして、


「ぅぎゃ」

「あ」


私は布団ごと床に落ちた。


「大丈夫か?お前ほんとなにやって」


手を貸してくれようとする翠の方を見れず、私は鞄をつかむと、


「ご、ごめん、帰る!!」

「あ、オイ」


脱ぎ捨ててあったシャツを着て、脱兎の如く逃げ出した。


だめだ。二日酔いで頭が痛い。


気持ち悪い。


さらに、頭の中がぐるぐるしている。


どうしよう。


翠はただの同期なのに。


きっと翠は介抱してくれただけで。さっきのも翠の悪ふざけで。


確かめようがない。


お腹の痛みとか違和感とかは…ない。


でも。どんな感覚だったっけ?


忙しくてすれ違って、別れたのが2ヶ月前。元カレと別れる前から段々キスもエッチも減ってった。…元々そんなに好きじゃなかったのもある。


もうとっくにただの友達みたいにたまーに遊びに行ったり、アイドルの話をメッセージでやりとりしてたくらいで、2年近くそういうことなかったし。


え、わざわざ聞く?


「私たちえっちしてないよね?」って?


いやいや、してたらどうするんだ。


どっちにしても何もなかったことにするのが大人の対応だろう。なら聞いても聞かなくても同じだ。


「はーー…落ち着け、茜。」


翠に限って、同期となんて会社で気まずくなるようなことしないだろう。


女に困ってなさそうだし。うん、昨日もモテモテだったし。

その割に社内では付き合った噂なんか聞かないから、社外の彼女とかいるのかな。

たまに付き合ったとか別れたとか聞く。


あれ、今は彼女いるんだっけ?いないんだっけ?

いるとしたら、申し訳ないことをした。


過ちはなかったとしても、彼女にしたら気持ちいいもんではない。


…でも、さっきのキスは、なに?


「うん、何もなかった。うん。酔っ払って介抱してもらった!それだけ!」


パンっと自分の頬を両手で叩いて、私はトボトボと駅に向かった。






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