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同期の君が言うことには  作者: 卯月はる
気の合う同僚?
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持つべきものは優秀な同期!


「マヒロー!週末の飲み会来る?」

「マキちゃん」


きっちり着こなしたネイビーのスーツ。おしゃれなネクタイとタイピン。

今風だが派手すぎない私服。

洗練されているが、高級過ぎず身の丈に合ったカバンやお財布。


全部アユミちゃんのチョイスだったということだ。


そりゃあおしゃれなわけである。


「今週だっけ?行こうかな」

「お、珍し。」

「そんなに?半分は行ってるつもりなんだけど」

「アユミちゃんに怒られる?」

「あはは、全然だよ。ちょっとは怒ってほしいくらい」


そう言って眉を下げる真紘。

この忠犬め。

最高にいい。2人は私の推しカップルなのだ。


真紘は面白いから好きだし、一緒に飲みたいが、そのせいでアユミちゃんとの仲が悪くなるのは困る。


本人は付き合ってはいないというが、アユミちゃんは今もSNSの発信を毎日しているし、芸能人が恋愛NGみたいなアレなのだろう。


もちろん全力で協力しますとも!!


会社の人に、真紘に彼女はいるのか聞かれても、知らないと答えることにしている。




◇◆◇




電話に出た真紘が呆然と固まる。


「え、あーちゃんが事故って」


あーちゃん。アユミちゃん。


ええ!?


隣で電話の受け答えを聞いて、私もパニックになる。


「え…っと」


が、顔面蒼白な真紘を見て急激に冷静になった。


「午後アポだけでしょ?やっとく!先輩もいるし。半休使えるでしょ!部長に言っとくから、落ち着いたら電話入れて!」


「あ、えぁ、そっか」

「アユミちゃん病院?タクシー呼ぶ!大丈夫だから!ほら荷物持って行って」


タクシーを手配し、真紘を追い出し、上司に相談して真紘の仕事を請け負った。


後から真紘から部長へ電話が入り、聞き耳を立てていると明日もお休みになったらしい。


部長から代わってもらった電話でアユミちゃんの無事を聞かされてホッとした。


明日の検査も付き添いたいとのことで、喜んで仕事の引継ぎを受けた。


「んんー?これは何?」

「真紘の仕事請け負ってやったって?」

「翠!お疲れ!」


トンと缶のコーラを私のデスクに置いて、隣の席に腰掛ける翠。


定時はとっくに過ぎている。


「アユミちゃん、腕の打撲だけで元気そうだって!よかったねぇ」

「それで仕事終わってないわけ?」

「あ、もうこれ作ったら真紘の分は終わりだよ!」

「…お前の分は?」

「提案資料が。あはは」

「アホか。お人好し。」


上機嫌で伝えると、翠は呆れ顔。


だって先輩は大きい仕事抱えてて毎日遅くまで残ってるのを知っているから早く帰れるときは帰らせてあげたいし、新米パパに残業をお願いするのは心苦しい。こういうのはできる人がフォローするのだ。


「明日、病院に付き添ってあげるって言うから」

「無事なら付き添いなんていらねーだろ」

「いるよぉ!心配でしょ!アユミちゃんだって不安だと思うし、付いててあげた方いいよ」

「何だそれ」

「真紘には私も風邪のときいろいろやってもらったし、持ちつ持たれつでしょ。こういうときのための有給!」


大袈裟なため息と共に翠はパソコンを開く。


フリーアドレスのパソコンに手早くパスワードを打ち込む翠。


「…お前らホントバカ。ほら早く、過去の提案資料と、今回のデータ送れ。」

「手伝ってくれるの!?」

「お前のスピードで資料作ってたら電車終わる」

「え、や、作れるの!?」

「誰がお前に資料の作り方教えたと思ってる」

「えへへ、そうでしたー」


翠は黙々と作業してあっという間に仕上げてくれた。


私の5分の1の時間…


「私が作る資料よりキレイだな!?」

「そりゃーな。詳しいところはわからないから最終チェックして。文章はイジってない」

「天才なの!?持つべきものは優秀な同期!」

「ハイハイ、早くそっち終わらせて」


結局、何かカタカタ時間を潰しながら、私が資料を仕上げるまで翠は待っていてくれた。


天使か!?


「気にかけて見に来てくれたの?」

「遅くまで残ってる仕事のできないポンコツは誰だろうなと思ってね」

「えへへ、私のことかー。翠ってヤサシーよねぇ」

「…嫌味ってわかる?」

「あはは!」


げんなりした表情の翠。


仕事も終わったし、爽やかな気持ちで戸締りして、翠と2人、裏口の守衛さんに挨拶して会社を出た。


「ラーメン食べよ!奢るよ!餃子も!ニンニクマシマシしたい」

「明日客先行くんじゃねぇの」

「あ゛!!!」

「はは、ニンニク抜きにしときなー。俺はマシマシにするけど」

「ず、ずる…!やっぱお寿司にしよ!」

「回らないやつ?」

「まーわーるーやーつーー!10皿までね!後は自腹!」

「高いやつだけ食べよー」

「性格悪っ!」

「はは」


翠はぐしゃぐしゃと私の頭をかき混ぜた。


いつものクールなのもいいんだけど、こうやってバカなこと言って笑ってる翠の方が可愛くていい。


「翠って頭撫でるの好きだよね」

「ちょうどいいよね。まんまるで」

「もうちょっと優しく撫でてくれていいけどね?犬じゃないんだけど」

「俺猫派」

「そういう問題じゃないけど!」


助け合って、こんなくだらないことで笑い合える同期がいるって幸せだなーと思いながら、翠と2人夜道を歩いた。






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