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同期の君が言うことには  作者: 卯月はる
気の合う同僚?
21/29

あの、恋愛の好きで…!


「…どうしたのこんな時間に」


オートロックの部屋番号を押すと、呆れ声。声の主の呆れた顔が目に浮かぶ。

伝えようと思ったらいても立ってもいられなくて、走って翠のところまで来てしまった。


「翠、あの」


上下黒のスウェットというラフな格好で、私を出迎えた翠は、入りなよとリビングに通してくれた。


「ごめん、急に」

「いいけど」


言われた通りリビングのソファに座る。ふかふかで気持ちがいい。

シンプルでダークトーンに統一された部屋だ。


肩で息をしていると、ペットボトルの水を渡された。


「走って来た?」

「う、うん…翠に、伝えたいこと、あって」


無言で漆黒の瞳に先を促される。


「翠のことが好きで…あの、恋愛の好きで…!」


翠の顔が見れない。


震える手を握りしめて、それも見ていらなくて、目をぎゅっと瞑った。


「今更遅いかもしれないけど、付き合ってください…!」


なのに。


「うん。」


翠の返事は呆気なくて、私の方が狼狽えた。


「えっ!?お、驚かないの?怒らないの?」

「まあ」


そんな私を知ってから知らずか、翠はしれっと言い放つ。


「遅かれ早かれこうなるかなって。」

「え」

「いくら茜でも好きじゃなきゃキスはしないだろうし、気づくのも時間の問題でしょ」


翠を傷つけたんじゃないかって、悩んで凹んでたのに!


「考える時間が必要そうだし、押してダメなら引くしかないよね」

「う」

「友達の付き合いの方がお好みみたいだし?」


最近の「いつも通り」の翠を思い出して、意図してやってくれていたのだと気付く。


「そんなにずっとウジウジ悩まないとは予想してたけど、思ったより早かったね」

「ひ、ひどい!ずっと悩んでたのに!!」

「茜を待ってたんだよ。感謝してほしいくらい」


プイッとそっぽを向くが、翠はどこ吹く風。

スリスリと、指で私の頬を撫でる。


「よしよし、拗ねんなよ」


指から逃れるように反対を向くと、肩に腕を回されて身動きが取れなくなる。


「どうしたら許してくれる?」


抱きしめられてフワッと翠の匂いに包まれると、心地よさで拗ねてた気持ちはどうでもよくなる。

クラクラとしてきた。


「…ちゅー、して…」


くすくすと耳元で笑って、私を抱きしめたまま、頬にキスしてくれた。


ーーー違うの、ほっぺじゃなくて。


思っていると、腕を緩めた翠は、あっという間に私の唇を掠め取って行った。


「ねえ、こんな時間に男の家に来る意味、わかってるよね?」

「へ?あ…」


コツンとおでこを合わせて、翠は試すような言い方をする。

その一言で、私は漸く今の状況を把握した。


遅い時間に、翠の部屋で、2人っきり。


「…あ、や、ちが…」

「違うの?」

「す、翠に、早く言わなきゃってそればっかりで」

「うん」

「その、深い意味、は…」


スルリと翠の指が私の顎を掬う。


漆黒の瞳に、キレーな顔に見惚れてしまう。


「ここまで来たら帰すわけないじゃん。ヒントも逃げ道もあげたのに、バカだねえ。」


あわあわしているうちに、ポスンと、やわらかいソファに寝かされる。


「本気で嫌ならやめるけど?」


触れるだけのキスをくれた。


首を傾げて、キレーな顔を直近に寄せて、翠は訊く。きっと確信犯だ。ずるい。


「嫌?」


でも、ここまできても、逃げ道を用意して選択肢をくれる翠は、優しい。


「い…」

「い?」


でもこの、手のひらで転がされる感じも、


「……イジワル……」


嫌、じゃない…


目を見て素直なことは言えなくて、そっぽを向くが、翠はくすくす笑って、額にキスを落とす。


「かわいい」

「かっかわっ!?」


両腕で頭を囲い込まれて、2人分の重みでソファに沈み込む感覚。

真っ黒な瞳に私が映る。


翠しか見えなくなる。


「人には簡単に言うくせに、これだけで照れちゃうなんて可愛いね」

「んっ」


はむはむと、上唇と下唇を順に、やわらかい唇で喰む。

食べられちゃいそうだと錯覚する。


「…す、ぃ…」


空気を求めて開いた唇から舌を絡め取られて、舌を吸われる。


こんなキス、知らない。


心地よくて、その先を、知りたくなる。


息ができなくなって目に涙が浮かんで翠の胸を叩くと、翠は名残惜しそうに唇を離した。


「こことベッドどっちがいい?」


抱きしめて、耳元で囁く。


思考が溶けて、力が入らない。


「…ベッド…」




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