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同期の君が言うことには  作者: 卯月はる
気の合う同僚?
10/29

きっと。たぶん。めいびー…


午後は散々だった。


大きなミスこそなかったが、今週中にまとめる見積書がまったく進まない。


システム部と同じフロアにある経理部へ出す書類は、真紘に頼んでしまった。


真紘は何か言いたそうにしていたが、何も言わずに頼まれてくれた。


「槙田さぁん?」


ニコニコと立っていたのは、野原さん。


会いたくなかったなー。

ちょっといいー?と間延びした声に、背筋がヒヤッとした。


帰るばかりの格好で、よくないですとも返せない。


「先週のことなんだけど」

「ええっと」

「川嶋くんの家で介抱してもらったで、合ってる?」

「………ハイ」


あくまで、穏やかににこやかに、的確に、質問する野原。


「でも、別に何もなくって」


きっと。たぶん。めいびー…


いや、私の中では何もなかったことにしたのだ。翠が何と言おうとも。事実はどうだろうとも。


「彼氏に怒られちゃえ」


あ、私まだ彼氏いることになってたのか。


「あーん、でも、それで彼氏と別れて、槙田さんがライバルなっちゃうのは困るなぁー」


まぁいっか。何で別れたとか根掘り葉掘り聞かれるのも嫌だし。


「聞いてるー?」

「ひゃい」


別のことを考えていたのがバレて、グイッと頬をつねられた。


い、痛い…自慢のお爪が痛いっす…


「あたし、川嶋くんが好きなの。付き合いたいの。わかる?」

「ええはい、まあ…」

「同期で仲がいいのは結構だけど、邪魔しないでくれる?」

「…邪魔、なんて、そんなつもりは」


ふざけて笑い合って、ランチ行って飲みに行って。


仕事で落ち込めば励まされ、客先で意地悪された後輩のために怒れば宥められ、推しが引退して泣けば慰められ。


じゃんけんやおふざけの勝った負けたで、奢り奢られ。


それだけで。


「翠は…ただの気の合う同期です」


翠にしたら、友達ですら、なくって。


「まぁ、そうよね。槙田さんって女の子って感じしないし、恋愛対象にはならないわよねー」

「はあ…」

「並んでてもBL?って感じだもんね」


グサリとなんか刺さった。


その通りなのに。


「うん、いいの、わかってるなら」


言いたいことだけ言って、野原さんは軽やかに去って行った。


あ、あれ。


なんでこんなショック受けてるんだろう。


そんなこと知っていた。


元カレだって、私は友達の延長で、結局フワフワ可愛らしい女の子を選んだ。


そりゃそうだよねと納得してもいた。


自分を卑下するつもりもないが、客観的に見たときに、まあ、翠みたいにモテる人ならわざわざ私を選ばないよね。


並んでも、絵になるような絶世の美女。翠が選ぶなら、きっとそういう子だ。


…その子には、どんな顔するんだろう。


私や真紘に向ける素の表情じゃなくて…


男友達みたいに気安い話し方じゃなくて…


穏やかに微笑んで、思いっきり優しくして、愛の言葉を囁くのだろうか。




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