表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蹴撃の黒メイデン  作者: 雪銀かいと@「演/媛もたけなわ!」電子コミックサイトで商業連載中
第三章 連戦〈restless battle〉

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/48

第三章-1

 第三章 連戦〈restless battle〉


       1


 自首勧告の期限である十一月十八日になった。だが護国輔翼会からは何の通告もなかった。

 十時になり、クウガ、アキナ、蓮の三人は、蓮の家から外に出た。家ではもう一人の神人が護衛役として、雪枝とともに残っていた。

「ついにこの日が来ちゃったね。降参してくれりゃあ、だーれも傷つかずに済んだけど、もう賽は投げられた。蓮くんのお父さんの敵の悪党どもだ。遠慮はなしでぼこぼこにぶっ潰しちゃうだけだね」

 軽快な動きで屈伸をしつつ、アキナは平静な様子で呟いた。落ち着いた視線を向ける方向は、平安神宮。護国輔翼会の拠点があるあたりである。

 瞑想するかのように目を閉じていたクウガは、アキナの言を受けて瞼を開いた。迂闊には近づけないような、抜身の刀のような鋭い佇まいを見せている。

「目標は一つ。首魁、水無瀬秀雄を初めとした護国輔翼会の外道どもを倒し、安寧を取り戻す。それを妨げるものは皆即刻排除! 問題ないな! 蓮、アキナ!」

 有無を言わさぬ調子で宣言したクウガに、「もちろんだよ!」とアキナは声高に即答した。

「蓮」という初めての呼称に狼狽えるも、蓮は「了解!」と気持ちを切り替えた。

「あらあら、『即刻排除』と来はりましたか。血気盛んなことで。怖うおすなぁ」

 おっとりとした京言葉が頭上から聞こえ、蓮は声の方向に顔を向けた。

 道の少し先、十メートルはあろうかという木製の電柱の頂点に女の姿があった。朱色と白の銘仙(絹織物)と、胸の下にまで至る小豆色の女袴を纏っており、靴は黒色のブーツである。肩甲骨まで伸びた黒髪をお下げにしており、後頭部の朱色のリボンで締めていた。典型的な女学生といった出で立ちである。

 薄化粧の上にわずかに頬紅を用いているようで、眉には眉墨、唇には紅を上品に付けていた。ぱっちりとした目鼻立ちの別嬪で、歳は二十歳頃かと思われる。

「何者だ」と、剣呑な調子でクウガが応じる。

「名乗るほどのものでもあらしまへんがなぁ。まあせっかくのご縁どすし、名前ぐらい教えるのも一興やろか。水無瀬葵依(みなせあおい)。護国輔翼会の長の一人娘や。よろしゅうおたのもうします」

 場違いに緩慢な挨拶の後、葵依は雅に一礼をした。

「護国輔翼会の……。あんたが父さんを殺したのか!」蓮は強く詰問した。

「うふふ。そうとも言えるし、そうでないとも言えますなぁ。まあどちらでもそう変わらしませんやろ。肝心なのは、あんたはんの父親は既に失われてるゆうことと、あんたもすぐに同じ道を辿る運命やゆうことやさかいに」

 蓮の怒りもどこ吹く風、嫋やかな微笑の葵依は他人事のような調子だった。

「先手必勝だ!」アキナは叫んで腕を振り、その場で一回転。遠心力を付けて、上方へとびしりとシャーパジラトーリオ(回転足刀蹴り)を繰り出した。

 瞬時にアキナの頭ほどの大きさの、黒く燃え盛る火球が発生。唸るような音とともに葵依の頭部へと飛んでいく。

「あらあら、あきまへんな。嫁入り前の娘が、左様に血の気が多くてどうするん。折角の別嬪さんやのに、殿方に愛想尽かされてしまうえ」

 葵依は驚いたような顔になったかと思うと、火球の衝突の直前にふうっと消え去った。

「逃げるのか、弱虫!」

 アキナの子供っぽくも凛々しい挑発には、誰も応答する者はいなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ