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第37話 それぞれの旅立ち

 ピンク色の光が収まると、彼の身体が露になる。


「なっ、お、お嬢様?!」

「えっ?! お、お嬢様?」


 スケイリアとカークライトは驚いたように声を上げる。そう、前国王は私の持つ『性転剣』によって女性になっていたのである。しかも、私と瓜二つの。


「エドガーお兄様、国王就任おめでとうございます!」


 そう言って入ってきたのはルイス殿下であった。タイミングよく入ってきた彼は、ちょうど出来立てほやほやの私を目敏く見つけると、駆け寄って抱きしめた。


「お兄様がリリアナ殿とご結婚されるそうなので、私はフローレス嬢を妻として迎えさせていただきます」

「おい、俺はお前の父親だぞ。放せ! 放せよ!」


 彼の手の中で暴れ回る前国王陛下だが、その直後、彼は前国王を熱く抱擁すると、強引に唇を重ねた。


「ぷはぁ、ふふふ。父親だなんて苦しい言い訳しちゃって。大丈夫だよ。もう絶対に離さないから。一緒に辺境に立てた城で幸せに暮らそう?」

「ぷふぁあ。いや、いやああああ。放して、放してよぉぉ」


 どうやら、前国王は早くも偽フローレスとして順応してきているようだった。


「ルイス様、フローレス様。ご結婚おめでとうございます」

「ふふっ、ありがとう。それじゃあ、僕はさっそく彼女を愛するために城へと向かうことにするよ」


 そう言って、偽フローレスを抱えたまま、ルイス殿下は嵐のように去っていった。


「二人とも、お幸せに……」


 私は二人の未来に幸せであることを素直に祈るのであった。


 ◇◇◇


 エドガーとリリアナは新国王夫妻として、ルイスと偽フローレスは辺境の公爵夫妻として新たなる旅立ちをした翌日、私たちもまた新しい旅立ちの支度をしていた。


「お嬢様、馬車の準備ができましたよ」

「おっしゃあ、今度はどこに行く?」

「そうですわね。とりあえずはゴールドポットでカジノを楽しむと言うのはいかがですか?」

「お、いいね」

「悪くありませんね。王国も落ち着いてきましたし」


 二人とも私の提案に乗り気な様子で頷く。私たちは宿屋を出ると馬車に乗り込んだ。今回の依頼の達成により大金を得たことにより、軍資金は十分であった。


「それじゃあ、さっそくゴールドポットで遊び倒しますわ!」

「「おお!」」


 馬車が出発しようとしていたその時、馬車の壁に一枚のカードが刺さった。そこには風車の絵が描かれていた。


「ウィンドからの連絡ですわ」


 私はカードを壁から引っこ抜くと内容を確認する。そして、手足に震えが走った。


「な、なんですって!? ロックフェスでロックワームが大量発生? ど、どういうことですの?」


 私の悲鳴に近い叫びを聞いて、ウィンドが馬車に乗り込んできた。口頭で説明するなら、最初からそうすればいいのにと思うが、あえてツッコまないことにして、話すように促した。


「へい、どうやら、お嬢様の報告を受けて、マザー討伐隊を編成したようなんですわ。それで危険を察知したマザーが卵を拡散。卵を受けた人間は気付かずロックワームに内側から食い破られたらしいですぜ。それから地面に埋まった卵も全て孵ったらしくて……。おかげで鉱山だけじゃなくて街中にロックワームが闊歩するようになっているそうで、領主から救援依頼がきとりますわ」

「これはスルーしてもいいですか? すぐに酷いことにはならないと思いますけど……」

「スルーされますと、御父上が討伐に向かうと言っておりますわ。その結果は、ご想像の通りかと……」


 要するに、すぐに解決に向かうか、それともカジノを楽しんで街を更地にするかの究極の選択を突き付けられているのである。


「もぅ、もぅ。わかりました。行きます、行きますわよ! スケイ、カーク。参りますわよ!」

「「お嬢様、かしこまりました」」


 こうして、私たちはやむなくゴールドポットでのカジノ三昧からロックフェスでの芋虫三昧へと変更になるのであった。


「もぅ、これはお父様は終わったら成敗ですわ! お母様の件で少し見直してあげたというのに……」


 こうして、彼女たちの世直しの旅は続いていくのであった。



この作品を読んでいただきありがとうございます。

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