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戦いの終わり

激しい戦いの末に市長を打ち破ったにゅうめんマンは、女を迎えに家の玄関へ向かった。すると、にゅうめんマンが玄関に到着する前に、女が自分から外へ出て来た。


「家の窓からすべて見ていました。市長をやっつけてくれてありがとう!」

「どういたしまして」

「すごい戦いでしたね。見ていた私も久々に血が騒ぎましたよ」

「ワイルドな性格ですね……」

「それにしても、あなた、ものすごく強いですね。だてに覆面をかぶっていませんね」

「そう言われると照れますね」


いつも覆面の変人扱いされているにゅうめんマンは、それを聞いて満足した。


「それじゃあ帰りましょうか」

「はい」


2人は地下鉄の駅へ向かって歩き始めた。家の前の芝生には、数十人の市民ボランティアと監視者が、岸に打ち上げられた魚の群れみたいにバタバタ倒れていて、群衆の真ん中に爆弾でも落ちたかのような惨状だった。



にゅうめんマンたちは、それに混じってあおむけに倒れている市長の脇を通りかかった。激しい戦いをした相手が伸びて倒れているのを見て、にゅうめんマンは何となく感慨かんがい深くなり、立ち止まった。女は軽蔑のこもった目で市長を見やると、1人で先へ進んだ。


「この街を1人で歩き回るのは危ないですよ。僕はここへ来る途中で賊の襲撃にあいました。星鬼松市を脱出するまで送って行きますから、待ってください」


にゅうめんマンは女に呼びかけた。


「ありがとう。市長に何か話があるのなら、私はこの辺りで待っています」


それから、にゅうめんマンは芝生に横たわっている市長の巨体を再び見下ろした。すると市長が言った。


「タンタンメン君」

「何だ」

「わしは毎日市民のために働いているが、その市民たちには裏切られ、部下たちにまで光の速さで裏切られ、しまいにはガールフレンドにも逃げられる始末だ。なぜ、こんな事になったのだろう」

「言うほど市民たちのために働いてないし、ガールフレンドなんか元からいないだろ」

「……人生って何だろうな」


市長はつぶやいた。そう言われて、にゅうめんマンも少し考えたが、うまい答えは見つからなかった。


「それが分かれば苦労しないさ」

「わしは、このままずっと孤独に暮らし、年をとって死ぬのだろうか」

「……よかったら今週末にでも、一緒ににゅうめんを引っかけに行こうじゃないか。いい店を紹介するよ」

「おう」


「ところで、今日の昼星鬼松市のうどん屋に寄ったら、にゅうめんがメニューになかったぞ。市長として監督不行き届きじゃないか。市内のすべての飲食店がにゅうめんを提供するように、条例で義務付けるとか何とかしておいてくれ」

「そんな事をしたら職権乱用で余計嫌われるだろ」

「正義のためだ。みんなも分かってくれるさ」


(終わり)

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