市民の衝動
市長は、今度はボランティアを監視していた部下の1人からエネルギーを吸い取り、にゅうめんマンに向かって、次なる市長フラッシュを放った。狙いは正確だったが、またしても、にゅうめんマンの周りにいた運の悪い市民たちが被弾し、にゅうめんマン本人にはほとんど影響がなかった。
だが、にゅうめんマンは、市長フラッシュを含む度重なる攻撃を受けて、すでにふらふらだった。辺りはだだっぴろい芝生で、市長の家の他に光線から身を隠す障害物もない。気が付けば、にゅうめんマンは危ない状況に追い込まれていた。
ところが、ここでありがたいことに、市長とその周りにいる市民たち&監視者たちが仲間割れ (?) を始めた。市長が容赦なくエネルギーを吸い取ることに市民たちが抗議しているようだ。市長はむちゃくちゃな男だが、一応人の話を聞く心があるようで、その抗議を無視はしなかった。
そのすきに、にゅうめんマンは市長の家の裏に回って身を隠し、一息ついた。にゅうめんマンをサポートする市民たちもついて来た。
「それにしても、市長の周りにいる監視者や市民たちは、なんで市長のそばにとどまるんだろう。しわしわになるまでエネルギーを吸い取られる危険があるんだから、さっさと逃げればいいのに。そうすれば市長フラッシュも撃てなくなるし助かるんだけどな」
にゅうめんマンは市民たちに向かって疑問を口にした。すると市民の1人が答えた。
「あいつらは市長が勝つ方に賭けたから、市長をサポートしてるんだ」
「は?賭けただと。お前たち、俺と市長とどっちが勝つか賭けたのか」
「そうだ」
「必死で戦ってる人間をギャンブルのネタにするなよ。そもそも、今ここへ来たばっかりなのに、いつの間に賭けたんだ」
「お前と市長が戦っているのに気づいた瞬間、賭けを始めたんだ。ここに到着する直前にな」
そんな短時間で賭博が成立するのは驚きだ。多分、普段から何でも賭けのネタにしていて、こういう事に慣れているのだろう。
「それにしたって、エネルギーを吸われて干からびた沢庵みたいにされる危険をおかしてまで、市長をサポートする価値があるか?賭けより自分の体の方が大事だろ」
「負けられない賭けなのさ」
「なぜ」
「1人あたり500万円くらいかけたからな」
「こんな戦いに500万円も賭けたのか!?バカじゃないのか!」
星鬼松市民がバカであることは今さら言うまでもない。
「金額が大きいだけに、この賭けに負けたら大変なことになる……」
「どうなるんだ」
「借金を返すために自由を奪われ、強制的に働かされるんだ」
「むちで打たれて強制的に穴を掘らされる今の状況と何が違うんだ」
「ともかく、みんな賭けに負けることを恐れて必死なんだよ」
「そんな恐いなら賭けなんかするなよ……」
「衝動賭けってやつだ」
「そんな言葉聞いたことないぞ」




