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格闘

にゅうめんマンが起き上がるのと同時に、市長は手刀を受けなかった方の手ですばやくジャブを放ち、にゅうめんマンの頭を殴った。にゅうめんマンは強力なパンチを受けて少しふらついたが、持ちこたえた。


《いたたた……ちくしょう。軽いジャブのくせにかなり痛いぞ》


市長はバカ力なので何を打っても強いのだ。


だが、やられっぱなしのにゅうめんマンではない。攻撃は最大の防御でもある。にゅうめんマンは一瞬ふらついた後で、すかさず反撃のボディーブローを相手にお見舞いした。市長はべらぼうに背が高いので顔などは狙いにくい。


このボディーブローはそこそこきいたようだが、敵もさるもので、すぐさま反撃し返して、さっきよりも激しいパンチをにゅうめんマンの頭にぶちかました。


そのげんこつの威力はものすごかった。人並外れて体な丈夫なにゅうめんマンも殴られた衝撃で一瞬目の前が真っ暗になった。だが、幸い今回も何とか持ちこたえて、ぶっ倒れたりすることはなかった。


これ以上攻撃をくらうと明らかに危ないので、頭がくらくらしたが、にゅうめんマンは全力でその場から逃げた。


市長は、北海道の飢えたヒグマみたいな迫力で、逃げるにゅうめんマンを追いかけた。鬼気迫る光景というのはこういうのを言うのだろう。むしろ鬼より市長の方が迫力がある。市長なら鬼も退治できるだろうし、何なら鬼を退治した桃太郎にも勝てる。


逃げている間に殴られた頭がはっきりしてきたので、にゅうめんマンは逃走をやめ、走り来る市長の方へ向き直った。すると、市長は疾走している勢いに任せて体当たりをしかけてきた。


よけることもできそうだが、にゅうめんマンは瞬時に、走る敵の勢いを自分の攻撃に利用することを考えた。そして、優れた動体視力を発揮して疾走する市長の動きを見切り、壮絶そうぜつなボディーブローをその体にぶち込んだ。


「ぐほぉっ!!」


鋼の肉体を持つ市長もこの一撃にはたえられず、腹を抱えて芝生の上にうずくまった。


《ちょっとやりすぎたかな》

 と、にゅうめんマンは思ったが、この市長相手にそんなことを心配する必要はなかった。やがて市長は立ち上がって再びにゅうめんマンに迫り、にゅうめんマンはそれを迎え撃った。


「ふんっ!」


市長はにゅうめんマンの頭に鋭いパンチを振り下ろした。だが、にゅうめんマンはそれをかわして、次は自分がパンチを打った。だが、市長もさっと身をひねってかわし、次の瞬間、高めのキックを繰り出した。長大なリーチを持つ市長の足はにゅうめんマンの頭をとらえた。


「ぐっ!」


このキックの威力もやはり相当のものだったが、市長がすでに消耗していることもあって決定打にはならなかった。


キックを耐えたにゅうめんマンは気を取り直して攻撃に転じ、高く跳び上がって市長の頭を蹴飛ばした。この攻撃はきれいにヒットし、頭に打撃を受けた市長はふらついた。


《チャンス!》


にゅうめんマンは続けて攻め立てようと拳をふるったが、この攻撃が相手に届くより前に、ふらついている市長が半ば闇雲に放った平手打ちがうまいこと敵に命中して、にゅうめんマンを張り倒した。


にゅうめんマンはすぐに起き上がろうとしたが、平手打ちの衝撃のせいで少しもたついた。にゅうめんマンが体勢を立て直すよりも早く、市長はにゅうめんマンを蹴飛ばした。


「ぐはあっ!」


本気のキックではなかったが、それでも、にゅうめんマンは少し後ろに吹っ飛ばされて、少なからぬダメージを受けた。

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