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そのあと、僕たちはひとしきり泣いた。
やっと落ち着いた頃にはもちろん紅茶は冷めていた。そんなことですらおかしくて笑いながら、温め直した紅茶とチーズケーキで、おだやかな昼下がりを過ごした。
やがて、お父さんが自分の部屋からアルバムを持ち出した。
初めて見る、古い表紙。くすんだスカイブルーは、かつてはもっとあざやかだったんだろう。
「これは希美の遺品だ」
お父さんは懐かしむようにその表紙を撫でる。
「優磨、見てみるか? 君の実のお父さんの写真もある」
心臓が跳ねた。
ずっと、顔も知らなかった実の父親が、ここにいるんだ。
決定を僕に委ね、アルバムがテーブルに置かれる。
僕は緊張しながらそのページをめくる。
「君の実の父親は……なんというか、少し個性的な男だったよ」
その写真にたどりついて、僕は大きく天を仰いだ。のぞきこんだ涼乃も「あっ」と声をあげる。
――あぁ、やっぱり。
鼻の奥がつんとした。枯れたはずの涙が、また瞳からあふれ出す。
あの声が聞こえてくる。自分の胸の中から、そして、写真の中の父親から。
――さようなら、優磨くん。私ね、あなたのことを心から愛していましたよ。
写真の中の父親は、変な髪型をしていた。
まん丸で、もじゃもじゃで、鳥の巣みたいで。
アフロだった。冴えない顔に全然似合わない、奇抜な髪型。
僕はアルバムを閉じた。それを抱きしめる。ぎゅっと、力強く。この中に閉じ込められた、今は亡き人たちに僕の体温が届くように。
――変だと思ったんだ。「ずっと見守ってた」とか、「愛してる」とか言うから。
最後に空色電車の中であいつの顔を見た時に、どこかで見た顔だと思った。その理由がやっと分かった。
僕だ。あいつの顔、僕にそっくりなんだ。
涙をぬぐう。
なんだよ、死神じゃないじゃん、と文句を言ってやりたかった。父親なら、最初からそう言えよ。死神のフリなんかしやがって――。




