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死神が僕にくれた幸福な運命  作者: 風乃あむり
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 その晩、僕は金縛りにあった。


 夜中に突然目が覚めて、意識は覚醒しているのに体が動かない。これが金縛りかとぴんときた時、視線のはじっこに人の陰が見えた。


 幽霊だ。


 はっきりとしない輪郭。ぼんやりとした気配。間違いなく幽霊だと思った。


 怖くはない。

 だって懐かしい気がして。


 ――お母さんがついに迎えに来てくれたんだ。

 

 僕と一緒に死にたかったお母さん。一人ぼっちで川に沈んでいったお母さん。


 一度思い出すと、お母さんのことしか考えられなくなってしまった。


 ――寂しかったよね。ごめんね一人にして。僕も一緒に……。


「やぁ、久しぶりですね、優磨くん」


 ところが、その気配は男の声を発した。

 幽霊にしては鮮明な声で僕に呼びかける。ずいっと僕の顔をのぞきこんできたのは、あのアフロ頭の死神だった。


「ついに運命の女の子に会えたんですねぇ、おめでとうございます」


 へらへらと笑いながら手を叩いている。拍手のつもりなんだろう。


「可愛い女の子ですね、夏原さん。あんな少女が短命だなんて、本当に信じられませんねぇ」


 にたり、と死神は意地悪く笑った。

 陰湿で暗い笑みだ。自分の顔を覗き込んでいるこの男は、まさに“死”そのものだった。人の死を待ち望み、喜ぶ、死の世界の神様。


 まだ体が動かない。僕はぱくぱくと口を動かした。


(大丈夫だよ。僕が彼女を守ってみせるから)


 声は出なかったのに、死神には僕の言葉が届いたようだった。


「そうですね、そのためにあなたを蘇らせたんですから。約束は守ってもらいますよ」


(うん、もちろんだ)


 いちいち念を押しにこなくても分かってるよ。

 僕のこの命は、彼女に捧げるためのものだ。


「約束を忘れていなくて安心しました」


 アフロを揺らしながら、死神は楽しげに僕の耳もとに口を寄せた。


「まずは彼女とお友だちになりなさい。そばにいないと守れないんですから。なんでもいいから接点を作るんです」


(うん)


「仲良くなって、いつでも近くにいてあげなさい。私との約束を果たすために、ね」


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