12
一面のスカイブルーが僕を迎えた。
かたんかたん。
あの音が聞こえる。幼い頃から耳にこびりついて離れなかったあの音が。
かたんかたん。
僕は座っていた。電車のシートに。
空色の車両の、空色の座席に。
「やぁ、またここで会いましたね、優磨くん」
聴き慣れてしまった不吉な声。声の主を探すと、隣の車両からゆったりと歩いてくる男を見つけた。
何度見ても奇妙な、特徴的な髪型――アフロの、サラリーマン風の――死神。
「僕は……」
思わず立ち上がった。あたりを見渡す。
車窓の外に広がるのは一面の花畑だ。そして花の彩りを縫って流れる大河――そう、あれは“三途の川”だ。
死神は満足そうに微笑んでいる。
「ふふ、よく頑張りましたね。約束どおり運命の女の子を守った。立派なことです」
「あ……」
唐突に記憶が押し寄せてくる。
そうだ、僕、あのトラックに押し潰されたんだ。
最期の瞬間の涼乃が思い出された。僕に投げ飛ばされ、しりをつき、こちらに目を見開いて絶望する彼女の姿が。
「……す、涼乃は?」
「無事ですよ。怖い思いをしてかわいそうでしたが、体に傷はありません」
そうか。
涼乃は助かったんだ。
「ちなみに、男たちのうち三人はあなたとともに死にました。車の男と、ナイフの男と、美大生風と」
ということは。
「やっぱり……僕も死んだ……?」
「そうですよ。涼乃さんを守って死にました」
そうか。
――僕の命で、涼乃を救う。
その使命を、僕はまっとうしたんだ。
「かっこよかったですよ。あなたの最期」
そうだ、これでよかったんだ。
僕は涼乃を救うことができた。幼い頃から彼女を守ることだけを考え、願い、生きてきた。それが成就されたんだ。
それなのに。
「ああああああ!!」
こみあげてきたのは、猛烈な悔しさだった。




