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十二月、季節は冬へと転がり落ちていく。
受験生に風邪をひかせるわけにはいかないと涼乃が主張して、朝の日課は暖かくなるまで中断することにした。
その代わり、放課後僕らは学校の図書室で向かい合って勉強した。涼乃は剣道の練習以外の日は必ずやってきて、必要もないのに受験用の参考書を開いている。
「勉強しないと山丘君と成績がどんどん開いちゃう。君に釣り合う女の子になるために、多少頭も鍛えておかないと」
涼乃はそんなことを真顔で言う。僕こそ涼乃に捨てられないように頑張らなきゃいけないのになぁ。
窓の外では冬枯れの並木が鋭い枝を曇天に向けていた。北風が校舎を静かに軋ませる。外はずいぶん寒そうだ。夜にはみぞれが降るかもしれないと、天気予報でも言っていた。
「涼乃、今日は少し早めに帰ろうか?」
彼女は小首をかしげる。
「さっき今日のノルマはたくさんあるって言ってなかったっけ?」
「でも天気が荒れそうだから」
涼乃は笑った。
「大丈夫だよ。傘も持ってきてるし、台風が来るわけじゃないんだから」
「……それもそうかぁ」
この頃、僕たちは油断し始めていた。
学校の中でも外でも、この一年間恐ろしいことはなにも起こらなかった。死神も現れない。
中学三年生になって涼乃ともう一度手を取り合ってからの日々は人生で一番ハッピーで――。
僕は、本当に死神の呪いから逃れられるんだって、思いこんでしまっていた。
でも、死神の鎌は確実に僕たちの首をとらえていた。
――涼乃。君は、僕の運命の女の子。死神が導いて出会わせてくれた、僕の全て。
――運命の力で君を見つけ出した僕が、その運命から逃れられるなんて……。
そんなこと、やっぱりなかったんだよ。




