第4章 1
翌朝目が覚めて、僕はベッドに半身を起こしたままぼんやりとあたりを見回した。
勉強机、本棚、クローゼット。カーテンの濃紺も、カーペットのコーヒーの染みも。
何一つ昨日と変わらないはずなのに、なんだかやけに色彩がはっきりして。
よそよそしかった昨日までの世界が一変していた。
呼吸まで軽い気がする。
涼乃が昨日言ってたように。
本当に僕は生まれ変わったみたいだった。
✴︎
家を出ると、僕の足は自然とあの場所へと向かっていた。
通学路から少しはずれた、誰からも忘れられた公園――涼乃と僕が初めて出会った場所だ。
新緑に覆われた公園の定位置に、今日も涼乃がいる。東家風のベンチに腰掛け、メロンパンを膝に乗せて。セーラー服の凛とした背すじで。
僕がここに通わなくなってもう半年が経っていた。
涼乃はここで、かじかむ冬を一人で越したんだろうか?
来るとも分からない僕を待って。
そのことを思うとまた胸が痛んだ。けれど、勇気を持って踏み出せば、彼女は僕の姿を見つけてくれた。
「優磨、おはよう。昨日はありがとう」
光があふれるような笑顔だった。
「ここで会うのは久しぶりだね」
「うん……ずいぶん待たせちゃったな。ごめんね」
謝らないで、と首を振る涼乃の表情は大人びて、初めて話しかけたあの春の日のように鼓動が高まる。
こうやって、きっと僕は君に何度でも恋をするんだろうな。




