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死神とやりあった翌朝、僕はぐったりと疲れ果てていた。始業式だっていうのに、最悪だ。
その疲労感が、校舎の入り口に立ってより重たくのしかかった。
どうしてこううまくいかないんだろう。
これまでは望んでも叶わなくて、それなのに涼乃を避けている今になって――、
僕たちは、同じクラスになってしまった。
掲示板に貼り出された名簿を見ながら僕は唖然としていた。
「優磨ー! 俺たちまた同じクラスだなっ!!」
背後から飛びついてきたのは本山だった。
「え、そうなの? 気づかなかった」
「冷てー! 三年間同じクラスの親友なのに!!」
「僕たち親友だったっけ?」
「満場一致で親友だろ!!」
本山は無理やり僕の手を挙げさせる。こいつのメンタルの強さ、すごいよなぁ。感動する。
「どーせ優磨は夏原さんのことしか気にしてないんだろ? あーやだやだ、リア充め」
「別に……ていうかお前にだけはリア充とか言われたくない。お前より中学生活を楽しんでる奴、僕知らないよ」
「ふざけんな、カノジョがいる奴は黙ってろ」
本山と冗談を言い合いながら教室に入ると、涼乃はすでに席についていた。
彼女の席は二列離れた斜め前。セーラー服の後ろ姿は今日も凛々しい。
僕と同じクラスだと知って、涼乃はどう思ったんだろう? 振り返って僕にどんな表情を向けるんだろう?
気まずくって眉をひそめる、そっけなく視線を逸らす。そんな想像が胸に痛かった。
でも、涼乃を避けているのは僕なんだから――。
その時涼乃が振り返った。長い髪がひるがえって宙を踊る。
「おはよう」
笑顔だった。ちょっと控えめだけど、ふわりとまあるい笑顔で彼女は僕に声をかけてくれた。
僕はぽかんと口を開けて、一拍遅れて返事をかえした。「おはよう」って、ただ一言。それを確認して、涼乃は前を向いてしまった。
「おぉ……!」
僕たちのやり取りを見ていた本山が、小さく感嘆の声をあげた。
「すげぇ。夏原さんが笑ってるの、俺はじめて見た!」
「……別に、いつも笑ってるし……」
なんだ? すっごく腹の底がむかむかする。
「そりゃあ優磨と一緒にいる時は笑うのかもしれないけどさ、俺にとってはレアだよ、レア!」
本山以外にも周りの男子がざわついている。
「やっば、ちょー可愛い」
「全然怖くねーじゃん、夏原さん」
「去年まではマジで怖かったって!」
なんだよみんな。あんなちょっとした笑顔で喜びやがって。
僕なんて涼乃を大笑いさせたことだってあるんだぞ。
それに、涼乃の可愛さはこんなもんじゃない。
拗ねたり、照れたり、甘いものに興奮したり。怒ってる時だって、涼乃は可愛いんだ――お前らなんかに分かってたまるか。




