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死神が僕にくれた幸福な運命  作者: 風乃あむり
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7


「優磨」


 放課後、学校の図書室で勉強していると涼乃が顔を見せた。小声で僕をよび、手招きしている。


「……どうしたの?」


 彼女と話をするのは一週間ぶりだった。

 僕はずっと彼女から逃げていて、そんなことをしているうちに、冬は一番寒さの厳しい季節を迎えていた。


 久々に向き合うのはひどく気まずくて。

 そして、その感情をたやすくこえるほどの強さで、君と会えるのが嬉しかった。


「はい、どうぞ」


 図書室の外に出ると、彼女は小さな包みを差し出した。

 透明なビニールの包装に、赤いリボン。


 その中に入っていたのは、チョコレートだった。


「バレンタインのプレゼント」


 涼乃はひかえめに微笑む。自分で作ったの、だから見た目が悪いのは大目に見てね、と言い添えて。


「……ありがとう」


 その小さな包みを両手で受け取って、僕は胸がいっぱいだった。


「大事に食べるよ」


「大したもんじゃないから」


 涼乃はそれだけ言うと、邪魔してごめんね、と笑った。そして身をひるがえして帰ってしまう。


 僕に避けられているのを涼乃は分かってる。それでも、こうやって僕のためにチョコを作ってくれたんだ。


 それなのに。

 身がすくんでしまって、僕は君の背を追うことができない。


 ――あのね、涼乃。


 僕は今、君の隣にいるのが怖いんだ。

 だってきっとそこは僕の死に場所だから。そこにいたら、死神の鎌が僕の首を摘み取ってしまうから。


 そして言い訳をしてるんだ。

 僕の死が君の死と結びついているのなら、君と離れてさえいれば二人とも死なずにすむんじゃないかって。


 ほんの少し前まで、君のために死ぬことはちっとも怖くなかった。生きる目的だった。


 なんで僕はこんなに変わってしまったんだろう。今は足がすくんでしまって、君のそばにいることさえ怖くて。


 手のひらにおさまった、小さなチョコレートの包みを見つめる。ころころと丸いトリュフたち。


 作るの大変だったろうな。ちゃんとココアパウダーもまとってて、形もきれいだ。ラッピングも丁寧で、几帳面な涼乃らしい。


 僕のために頑張ってくれたんだと思うと、胸にうずまく汚らしい感情がほんの一瞬かききえて、心の底の一番暗いところに陽が当たる。


 僕はこんなにも君が好きだ。

 それはちっとも変わってない。


 なのに、それなのに――。

 君のために死ぬのが、なんでこんなに怖くなってしまったんだろう。

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