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死神が僕にくれた幸福な運命  作者: 風乃あむり
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2

「ねぇ、優磨」


 付き合い始めたその日から、涼乃は僕を名前で呼ぶようになった。


 その響きがやわらかくて、くすぐったい。


 毎日彼女の部活が終わるのを待って、並びあって帰宅した。


 冬になると、世田谷の住宅街は光の化粧で華やいでいく。クリスマスのイルミネーションだ。木々がきらめき、星がまたたき、サンタやトナカイが道いく人に微笑みかける。


 踏みしめるアスファルトさえ、ふわふわとやわらかい気がした。

 世界は底抜けに明るかった。現実感がないほどに。


 まるでここは夢の中みたいだな。涼乃が僕を好きで、もちろん僕も涼乃が大好きで。


 いっそこれが永遠に続く夢だったらいいのに。

 死神の呪いの届かない――完全無欠の夢の中。


 彼女は自転車を転がしながら僕の隣を歩いている。


「浮世離れした仙人系男子の君は知らないかもしれないけど、普通、お付き合いを始めたら休日にデートをするものなんだよ」


「仙人系? なにそれ?」


「悟り切ったおじいちゃんみたいな男の子のこと。私がつくった言葉」


「じゃあ君はおじいちゃんのカノジョってことになるけど、いいの?」


「ようするにおばあちゃんね。まぁ、いいよ」


 涼乃はくすくす笑う。


「じゃあ最初のデートは縁側で緑茶かな?」


「巣鴨でもいいんじゃない? おばあちゃんの原宿らしいし」


 でもね、と彼女は少しうつむいた。


「私、優磨と一緒なら、どこだって楽しいと思うのよ」


 紺のピーコートに白いマフラー。そこにうずめた彼女の顔は、くすぐったそうな、照れくさそうな。


 ――くそっ。


 僕は内心で悪態をついていた。


 本当にまずい。

 死神の言う通りなのに。

 涼乃の恋人なんてやめるべきだ。ちゃんとその他大勢でいるべきなんだ。


 それなのに。


 ――この女の子、なんでこんなに可愛いんだ? 


 君の隣で頬を緩めてる僕がいる。

 「絶対にこの子の隣を渡したくない」って思ってる。


 最低だ。

 本当に――僕は何をやってるんだ。


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