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「山丘君て……成績はいいのにどうしてそんなにおバカさんなのよ……」
「えぇ?」
どこがバカなんだ? 僕は涼乃を守りたいだけなのに。
「あとさ、私の進学先が知りたいなら私に聞いてよ。こそこそ調べられるとびっくりする」
「え、ごめん」
「山丘君に聞かれたら、なんでも答えるよ。そのくらい分かってくれてると思ってたのに」
そっか。ついまたストーカーやっちゃったけど、遠慮せず本人に聞けばよかったのか。
不意に強い風が僕たちの間をすり抜けていく。編み上げた彼女の髪が少し乱れた。
「ねぇ、山丘くん?」
彼女はこわばった顔で僕を見る。
その表情に僕は思わず居住まいをただした。
「君は、私のこと、どう思ってるの?」
「え?」
風に巻き上げられた紅の葉が、僕と涼乃の間をはらりはらりと舞いおちていった。
「……涼乃の、こと?」
葉がこぼれ落ちる緩やかさで、僕は慎重に問い返す。
「そう。こんな私のそばにいつもいてくれて、いつだって私のこと肯定してくれて、大事にしてくれて……誕生日までお祝いしてくれて……それでも私たちは友だちでしかないのかな?」
彼女は胸の前で指を組んだ。
その指先が震えている。
「もちろん友だちでもいいの。それ以上の贅沢なんて望んじゃいけないのかもしれない」
でも、期待しちゃうのよ、と彼女は僕を見上げるように言った。
「山丘君、思わせぶりなんだもん。一緒の高校に行きたいとか。それに“運命”とか大げさなこと言うし」
「だってそれは事実だから……」
ずっと君を探していて。
ひと目見て恋をして。
その気持ちが揺らいだことなんて一度もない。
どうしよう。
胸が苦しい。隠さなきゃいけない、気づかれちゃいけない熱い気持ちが今にもあふれだしそうで。
「……僕だけが勝手に君を追いかけてるつもりだったんだけど」
「それはひどいよ。私の気持ちを考えたことないわけ?」
――涼乃の気持ち。
鼓動がはやまる。もう――耐えられそうにない。
手の届かないところに大切に飾って眺めて満足してるだけのつもりだった。壊れそうになった時だけ手を伸ばして、守ってあげるはずの、美しくて脆い宝石。
そんな君が、指先を震わせて僕を見つめている。
しっかりと視線がぶつかった。
普段と違う、おとなびたドレスに包まれたその内側に、心細く震える少女の涼乃がいる。
一歩だけ、彼女に近づく。
――もうだめだ、後戻りはできない。
二人の間はほんの三歩。手を伸ばせば指先が届いてしまうような、そんな距離に君がいる。
「正直に言うと、君の気持ちは、僕にははかり知れないんだけど」
彼女の瞳を真っ直ぐのぞきこむ。
「僕の気持ちは最初から決まってる」
涼乃が息をのむのが分かった。
僕は呼吸をととのえる。
「夏原涼乃さん、大好きです。僕の恋人になってくれませんか?」
彼女はぐっと唇を結んだ。瞳が涙で揺れて、それを隠してしまうように、両手に顔をうずめてしまう。
そして、晴れやかに顔をあげた。
「嬉しいです……ありがとう」
涙とともに、彼女がこぼす。
「私も、山丘君のことが大好きです」




