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梅雨に打ちひしがれ背を丸める涼乃を見ているのはつらかった。
隣の教室をのぞくと、彼女はほとんどいつも机に突っ伏していた。剣道の練習にも身が入っていないようで、顧問の荒坂先生に呼び出されているところも目撃した。
朝食を公園で食べるのは変わらず、僕が隣に座っても嫌がらないから、とりあえずいつも通りそばにいることにしたんだけど、彼女の口数はひどく少なかった。
僕は無力だ。
涼乃を救うためによみがえったはずなのに、してあげられることがなにもない。
それにしても、どうして涼乃は六月が苦手なんだろう?
どんよりと黒い雨雲が、天の晴れ間とともに彼女の心もふさいでしまうから? それとも他に何か理由があるんだろうか――?
六月、六月、六月。
雨の季節だ。春でもない、夏でもない、中途半端な――。
そう心の中で思い浮かべて、僕は大事なことを思い出した。
――もうすぐ夏原さんの誕生日だからな。
そうだった、本山が体育祭の時にそう言っていた。夏原なのに誕生日が六月なんて、ってすっとぼけたことを。
六月は、涼乃の誕生日なんだ。