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――あのさ、涼乃。
僕はきっと、今まで山丘の父さんと母さんの愛情をどこかで疑っていたんだ。
だって僕にどんな価値がある?
実の親にさえ殺されかけた子ども。死神に呪いをかけられて、やがてすぐ死ぬ未来もない無価値な僕。
そんな僕が誰かに大切にしてもらえるなんて、どうしても信じられなくて。
でも、今ならその壁をこえて、新しい世界にたどりつけそうな気がするんだ。
それは君のおかげなんだよ、涼乃。
僕は君を想うことで、人間らしい感情を取り戻したんだ。だから、今なら山丘の両親の愛情が理解できる。
君に出会う前のロボットみたいな僕じゃ、絶対ここにはたどり着けなかった。
ねぇ、なんだかすごく不思議な気がするんだよ、涼乃。
君と出会う、そのたったひとつの光に導かれてここまできたのに。君と出会って君のために死ぬことだけが、僕の望みだったのに。
君と出会ってしまったら、思いもよらぬ扉がいくつもいくつも見つかって、ゆっくりと開いたその隙間から視界に光が満ちていくんだ。
なんだか世界が眩しくて。今まで目も向けなかったところに、いろんな道や景色が広がって。
ねぇ、涼乃。
僕はそれが怖いんだ。
あんまりに世界がまばゆくて。
そのせいで僕の中で確かだったはずのものが、ぐらぐらと揺らぎ始めている気がするんだよ。