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保健室に運ばれベッドの上に寝かされた。担任の荒坂先生が「大丈夫か?」なんて言いながらうちわをあおいで、保健室の先生がコップを差し出してくれる。
「しんどいと思うけど、起き上がれるならこれを飲んで。ダメなら救急車呼ぶよ」
保健室の主はベテランの女の先生で、きびきびと僕に指示を出す。
救急車で運ばれるなんて絶対に嫌だ。
「飲みます」
ゆっくりと上半身を起こしてコップを受け取り、中身を飲み干した。
「美味しい?」
僕はうなずく。どうも普通の水じゃないらしい。
「これは経口補水液。やっぱり熱中症だね。普段ならこんなしょっぱい水、まずくて飲めないから」
保健室のドアが開いた。知らない先生に案内されて現れたのは、山丘のおじさんとおばさんだった。
心配そうに近づいてくる姿を見て、消えてしまいたくなる。
また迷惑をかけてしまった。僕のことで手をわずらわせたくないのに。
「優磨は大丈夫でしょうか?」
おじさんに尋ねられて、保健の先生がからりと笑う。
「熱中症ですね。意識もあるし、そこまで症状は重くないかな。しっかり水分と栄養をとって、よく眠れば大丈夫でしょう」
ホッとする二人に、荒坂先生も挨拶をする。
「担任の荒坂です。ご心配をおかけするようなことになって大変申し訳ない。優磨くん、学級委員長としてずいぶん頑張ってくれたんですけど――ちょっと頑張らせすぎましたね」
頭を下げる先生に、おばさんとおじさんは目を丸くした。
「え、この子が委員長なんですか?」
「あれ? ご存知なかったんですか。良い委員長ですよ、もうクラスメイトに信頼されてる」
大人たちの視線を避けて僕はうつむいた。それからしばらく僕についてあれこれと交わされる大人たちの会話を、いたたまれない気持ちで聞いていた。




